♦ 適正在庫の考え方を昔の洗濯機に例えると…
クリーン化活動を進めるうえで、クリーン化の成果、効果が欲しいものです。それが具体的に数字などで見えると、活動が継続していきます。今回は、クリーン化で得られた効果について事例を交え解説します。
会社が社員を集めて、或(ある)いは上司が部下に対し「品質向上に努めましょう。すると利益が増えます」と言うだけでは、社員は“聞いただけ、人ごと、よそ事”で終わってしまうかも知れません。
クリーン化の成果、効果で得られた利益をどのように使うか考えてみると良いと思います。つまり、自社あるいは自分の問題として捉えてみることです。
6. 注文に変化がなければ、原料投入が減らせ、在庫の減少や納期短縮ができる
注文数が一定なら、歩留まり向上分の原料投入が減らせます。すると流動在庫が減り、製品の流動スピードが速くなります。高速道路の渋滞と同じで、納期短縮に繋がります。
私はこの考えを、昔の洗濯機に例えて説明しています。
昔の洗濯機は、同じ方向にグルグル回っていて、上から覗(のぞ)くとその様子がよく見えるものがありました。そこに少し貯めすぎた洗濯物をドンと入れると、たちまち回転が遅くなります。もしかすると止まってしまうかもしれません。これでは洗濯物を入れ過ぎたと、少し洗濯物を間引くと、また元の速さに戻って回転するようになります。これは理論理屈をつけなくても、直感で分かることです。それをあえて理論、理屈で考えてみます。
沢山洗濯物を入れたら回転が遅くなった。これは、洗濯物という製品同士がお互いに足を引っ張り、回転が遅くなるのです。逆にある程度間引くと回転が元の速さに戻るわけです。これは、在庫が少ないと製品が早く流れる、在庫回転率の考え方に繋がります。
現場責任者は、自分の職場にこれ以上在庫があると、製品の流れが悪くなるということを感覚で把握しています。あるいは数字やデータで把握している方も多いでしょう。つまり、適正在庫の考え方です。
私の経験を紹介します。私は長野県の工場から、山形県の工場に2回単身赴任しました。定期的に山梨県の自宅に帰宅していましたが、仕事を終えて自家用車で移動すると、6~7時間かかります。終業後の運転では安全を確保できないと思い、航空便を使っていました。
近くの空港から羽田に移動、さらに何回か電車を乗り換え、新宿駅で特急に乗るわけです。羽田に到着後、機内から大勢の人に行く手を遮(さえぎ)られ、なかなかロビーに出られないことで焦り、ロビーに出たら重い鞄を抱えて走り、さらに何回か電車に乗り換えるのですが、ちょうど“花の金曜日の夜”ですから駅のホームも人でいっぱいです。この人たちをかき分けやっと新宿駅にたどり着きます。
ところが新宿駅への到着遅れが原因で、特急列車の発車時刻に間に合わないことが度々ありました。目的の列車に乗り遅れると、自宅に着くころには日付が変わってしまっています。
このことを冷静に考えてみると、私は早く行きたいのに、人が邪魔になってなかなか進まない。これが平日の日中だったらスムーズに移動できます。つまり在庫回転率と同じ考え方だとつくづく思います。
このように人ごとではなく、自分の問題として引き寄せる、捉えることが大切です。そして自分たちの努力を数字に置き換えてみましょう。それが次の行動に繋がります。
7. 初期対応の失敗は大きな費用と犠牲招く
ところで、ゴミ(パーティクル含む)退治の仕方(手順)は、今後の記事として、ゴミの見方のところで触れますが、ここではこれを簡単に触れます。
ゴミ退治の基本手順は① 発生源対策、② 飛散防止、③ 清掃という順になります。
- 発生源対策:元を絶つことです。発生しなければゴミによる品質問題はないわけです
- 飛散防止:発生してしまっても、そのゴミが飛散、拡散しないように小さな範囲で処理しようという考え方です
- 清掃:それでも上手く処理ができず広がってしまったら、清掃で対応しましょうという考え方です
クリーン化のゴミ退治の仕方、手順はできるだけお金をかけない手順でもあります。火災の消火もそうです。① 発生させない努力 → それでも発生してしまったら広がらないように、② 初期消火(飛散、拡散防止)→ ③ それでも広がってしまったら消防対応になります。
設備の予防保全も同じです。つまり初期の対応を誤れば、費用も犠牲も大きくなるということです。
ひるがえって、2020年の新コロナウイルス対策はどうでしょうか...