ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。クリーン化について(その141)クリーン化の基礎(その3)の続きです。
◆ クリーン化のイメージと私の思い
これまでの話だけでは、クリーン化のイメージが捉え切れない方もいるでしょう。私のイメージを絵にしたものを用い、合わせて私の思いも記す。下図で会社組織と米づくりを対比させて説明します。図中、下部の点線は水面と見てください。
以下、見出しの連番は、前回からの続きです。
(3)私の思い、水面下に日を当てたい
私はこの “日が当たらない部分” に日を当てたいと考えている。つまり現場の人の苦労、努力ですが、この見えない部分に日を当てたいのです。どんなに良い設計ができたとしても、それを具現化するのは現場だからです。その現場を大切にしたい。ここに日を当ててこそ、人が輝き、そしてクリーン化活動などが活発に行われ、継続し、ものづくり基盤の強化、ひいては企業経営に繋がるのだと考えています。
上の絵の水面下とは、縁の下の力持ちと言われる部分です。ここが貧弱では、頭でっかちになってしまい、水面よりも上の部分は支えきれない。クリーン化を通して、会社を構成するそれぞれの部門も機能しているかどうか、今一度見直したいです。クリーン化を通して、沢山のことが見えますね。多面的にものが見られれば、広範囲の分野の不具合、改善点に気がつくでしょう。会社の強み、弱みも見つけることができると考えます。
◆ クリーン化活動、3つのポイント
ものづくり企業にとって、現場を綺麗にし、それを維持、管理することは最も大切な基本要素です。これは稲作のところで説明した水面下の部分、現場にとってはベースの部分です。私のクリーン化における長年の現場経験から、活動の取り組みは以下の3つに整理できると考えています。
(1)できるだけお金をかけない
クリーン化活動は現場を綺麗にし、製造過程でのゴミ、異物の混入を防ぎ、良い品質の製品を作ること。つまり “品質を作り込む現場の環境を向上させること” です。この活動はできるだけお金をかけず、知恵と工夫で改善していくことが第1のポイントです。クリーン化指導の先生の中には、“お金をどんどんかけなさい”という指導もあるようです。その通りやったら、先生には褒められたが、経営的に厳しくなり、とても継続できない状況になった。そして途中で元に戻したという話も聞いています。
本来、“いかに利益を追求するか” という活動です。
活動の一方で水道の蛇口を開きっ放しでは、お金の垂れ流しになってしまいます。取引先から、現場をクリーンルームにするよう要請され、クリーンルームを設けたが、管理に必要なノウハウは得られず、お金をかけたけれど、結果的に歩留まりや品質が向上しなかった例もあります。このような例は多いのではないだろうか。活動は現場でやることです。
現場の一人ひとりが理解し、協力してこそ成果に繋がるのです。
お金をかけても、それだけで品質が向上するわけではありません。全員が理解し、ベクトルを合わせた活動にしなければ効果、成果には繋がらないのです。現場の一人ひとりが知恵を出し、工夫と改善を重ね、それらを結集していくことが、企業経営にとってプラスになっていきます。人の知恵は無限です。現場の人が生き生きしてくると連携が生まれ、工夫や改善レベルが向上し、現場が活性化して来るのです。
人はコミュニケーション力が向上すれば、作業ミスや事故、災害も減ってきます。
日々黙々と作業を繰り返し、それを延々と続けていくだけではもったいないです。お金をかける前にできることはたくさんあります。知恵を結集しましょう(人材から人財への転換)。
*人材から人財へ:人を材料扱いしているうちは人は育たない。人を財産として育てることでその企業、現場は成長するでしょう。しかし、一般的な財産も真剣に育てないと減ってしまうかも知れません。それと同じで、真剣に育てることが大切だと考えてこの字を使っています。
(2) 活動は仕事の一環
現場では様々な活動が展開されていると思います。逆に、そんな余計なことはしない、品物だけ作って売っていれば良い、と言うところにもたまに遭遇します。製造現場が忙しくなると、これらの活動も余裕がなくなってきます。そうなると現場から、「この忙しい中、余計な仕事はやっていられない」 という苦情や不満が出てきます。
その訴えに対し管理職の方が「そんなに忙しいなら、余計な仕事は一旦やめてもいい。また余裕が出てきたらやればいいんだから」 といった指示が出てしまう場合があります。きつい言い方をしたくないとの思いもあるでしょう。すると本当にやめてしまうこともあります。
これら “余計な仕事” に位置付けられてしまう活動とは、例えばQCサークル活動、TPM活動、その他の小集団活動、あるいはこのクリーン化活動などです。でも、良く考えると、これらの活動は、“会社の利益をどう追求するか” という活動なのです。つまり“仕事そのもの、あるいは仕事の一環”と考えることです。
確かに忙しい時にはやっていられないかも知れません。でも一旦やめてしまったものはなかなか動かない、動かせないのです。活動を再開するためには相当なエネルギーが必要です。面倒なことはやりたがらないのです。従って、忙しくても工夫し、活動を止めない、繋いでいくことが重要です。
私が若い頃、“時間はないのではなく作るものだ” と言われてきました。
それだけでは気持ちの中で反発心も起きてしまいます。でも、“人に仕事を頼むときは忙しい人に頼め” とも言われました。忙しい人ほど時間の使い方が上手く、工夫して時間を作ってやってくれるのです。暇そうに見える人に頼んでも、いつになったらやってくれるのだろうか。こんな経験をされた方もあるでしょう。
もう一つ、“忙しい理由は何か” をきちん...