クリーン化活動は、ゴミを減らし、歩留まりや製品品質を向上させる活動です。今回は、その対象であるゴミを観察してみた例です。
写真:大半が繊維のゴミ
これは、25年ぐらい前の写真です。長野県の半導体工場在籍中のこと、ある二次更衣室前に設置されたクリーンマット(除塵マット)の汚れに気づき、調査をしたことがありました。最初は土のような汚れに見えたが、事実を知りたいと思い、そのゴミを採取し、顕微鏡で観察したところ、ほとんど繊維のゴミでした。
このころは私もいろいろなゴミを直接見たいという思いがありました。クリーンマットを小さく切りいつも持っていました。もちろんクリーンルーム用と構内用は区分けしていました。その構内用でこのクリーンマットから更衣室へと順次遡って採取してみました。その時は、12月で非常に寒い時期でした。遡っていくと徐々に繊維ゴミの量は増えて行き、一般社員が使う更衣室まで延々と続いていました。
人の行動を観察していると、出勤時更衣室を通りますが、社服を着用せず、分厚いセーターで自職場に向かう人もいます。その人たちに聞いてみると、私たちはクリーンルームへ入らないのだから服装は気にしていないというのです。
ところが、ゴミを観察してわかったものは色取り取りのセーターの繊維でした。これを歩きながら落とし、それが多くの人の歩行時の風でクリーンルームの方にも、一般事務室の方にも運ばれていることが分かったのです。今度は二次更衣室、エアシャワー、そしてクリーン廊下、クリーンルームへと作業者が入る経路を追っていくと、段々少なくはなっていくのですが、中に持ち込まれているのです。
多くの人が落としたゴミを、大勢が通行しながらそれぞれの職場に運び、クリーンルームの方へも運んでしまうわけです。その押し寄せる大波を二次更衣室の前に設置したクリーンマットで食い止めようとしても、完全には食い止められないのです。海外から来てしまった感染者を玄関である空港だけでは食い止められなかった、新型コロナウイルスの水際対策のような感じです。
先に記した、「私たちはクリーンルームに入らないから関係ないでしょ」という人たちが一番汚していた例です。クリーンルームに入る人たちは、社内の服装ルールは厳しく守っていても、その他の人たちの人数も非常に多いので、防ぎきれないのです。
まず発生源、汚染源に対策を講じる、つまり上流からの対応が必要です。上流から少しずつ減らし、最後に二次更衣室前のクリーンマットで食い止めることです。二次更衣室は、クリーンルームの玄関です。ゴミがそこに辿り着く前に可能な限り減らす工夫をしましょう。
社員全員が製品品質に関わっています。クリーンルームの関係者...