ゴミの見方 クリーン化について(その59)

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クリーン化

 

前回のクリーン化について(その58)ゴミの見方に続いて解説します。

 

クリーン化

写真:ゴミの見方-手洗い(手袋)

 

この写真は、半導体製造のクリーンルームで作業に使っている手袋に付着したゴミの例です。インナー手袋、その上にアウター手袋と重ねて着用しています。そのアウター手袋に付着したものです。

 

今の先進の工場では自動化が進み、手作業はあまりないでしょう。しかし、クリーンルームであっても古くから稼働している工場や、半導体の後工程、さらに半導体以外の製品製造現場では、まだまだこのような例は多いでしょう。

 

あるところではクリーン化のルールの中に、“手袋で皮膚や髪の毛に触らない”という項目があった。そこで、実際にどのような問題が起きるのか、確認してみたのがこの写真です。まずこの手袋の表面観察を実施。表面に滑り止めの皺が確認できる(上段)。皺のないタイプのものも取り寄せ、実際に作業してみたが、滑りすぎて、治具、製品容器などを落としてしまった。これでは作業には向きません。

 

皺のあるものは確実に掴むことができます。そして、“皮膚や髪の毛に触れないこと”という記述に対し、触れたらどうなるのか実際にやってみて顕微鏡観察したものが写真の下段です。

 

これは私の顔の皮膚です。皮膚の角質が確認できます。また良く観察すると、油のようなもの(皮脂)も付着していました。その汚れが付着したまま真空ピンセットやウエハー入りの容器(カセット)に触れると、転写してしまうおそれがあります。さらに製品にも付着することも考えられます。

 

真空ピンセットの先端を手袋で掴むという動作もたまに見ますが、これでは人為的にウエハーに人の汚れを付着させているようなものです。その皮脂は水(純水)洗いでは奇麗に除去できません。特に皺の溝に入り込んだものは確実な除去ができません。現場によっては、純水にエチルアルコールを混ぜたものを用意し、そこで手洗いをしているところもありました。これは汚れの除去以外にもう一つの目的があります。半導体製造では人体に有害な薬品も取り扱うので、安全面での活用です。

 

手袋に破れ、穴あきがあっても気づかない場合があります。そこでクリーンルーム入室時、アルコールを含んだ水で手洗いをすることで、このような不具合があれば、手袋内に浸み込んだ時、水で濡れる感じだけではなく、アルコールによってスーとした感じを皮膚が検知するので、より気が付きやすいという理由です。

ルールは、やらなければいけないこと、やってはいけないことを端的に記したものです。それには理由があるので、それを理解すること、あるいは教育に含めることが必要。なぜ?がわからないと、ルールを無視することが起きます。

 

ある外資系の半導体の会社では、“工場長が現場のルールを作る”ということを聞いたことがあります。

 

良く現場に入り、作業の仕方(動作、行動)、品質、安全、クリーン化等多面的に観察し、それをルールに反映する。また、定期的にチェックして、問題点等が確認できれば、そのルールを更新するのだそうです。そのためには責任者自ら現場に良く入る。

 

安全、品質(クリーン化を含む)の確保、作業ミスの発生防止など様々な管理内容は、現場に入って初めてわかることが多い。その改善、対策は机上で考えるのではなく、現場を見ることから始めないと、遊離してしまう。そのために責任者自ら現場に良く入るわけです。

 

現場で原因、対策を考えるのは、特性要因図も同じである。机上で考えるのではなく、現場で観察しながらやらないと、真...

クリーン化

 

前回のクリーン化について(その58)ゴミの見方に続いて解説します。

 

クリーン化

写真:ゴミの見方-手洗い(手袋)

 

この写真は、半導体製造のクリーンルームで作業に使っている手袋に付着したゴミの例です。インナー手袋、その上にアウター手袋と重ねて着用しています。そのアウター手袋に付着したものです。

 

今の先進の工場では自動化が進み、手作業はあまりないでしょう。しかし、クリーンルームであっても古くから稼働している工場や、半導体の後工程、さらに半導体以外の製品製造現場では、まだまだこのような例は多いでしょう。

 

あるところではクリーン化のルールの中に、“手袋で皮膚や髪の毛に触らない”という項目があった。そこで、実際にどのような問題が起きるのか、確認してみたのがこの写真です。まずこの手袋の表面観察を実施。表面に滑り止めの皺が確認できる(上段)。皺のないタイプのものも取り寄せ、実際に作業してみたが、滑りすぎて、治具、製品容器などを落としてしまった。これでは作業には向きません。

 

皺のあるものは確実に掴むことができます。そして、“皮膚や髪の毛に触れないこと”という記述に対し、触れたらどうなるのか実際にやってみて顕微鏡観察したものが写真の下段です。

 

これは私の顔の皮膚です。皮膚の角質が確認できます。また良く観察すると、油のようなもの(皮脂)も付着していました。その汚れが付着したまま真空ピンセットやウエハー入りの容器(カセット)に触れると、転写してしまうおそれがあります。さらに製品にも付着することも考えられます。

 

真空ピンセットの先端を手袋で掴むという動作もたまに見ますが、これでは人為的にウエハーに人の汚れを付着させているようなものです。その皮脂は水(純水)洗いでは奇麗に除去できません。特に皺の溝に入り込んだものは確実な除去ができません。現場によっては、純水にエチルアルコールを混ぜたものを用意し、そこで手洗いをしているところもありました。これは汚れの除去以外にもう一つの目的があります。半導体製造では人体に有害な薬品も取り扱うので、安全面での活用です。

 

手袋に破れ、穴あきがあっても気づかない場合があります。そこでクリーンルーム入室時、アルコールを含んだ水で手洗いをすることで、このような不具合があれば、手袋内に浸み込んだ時、水で濡れる感じだけではなく、アルコールによってスーとした感じを皮膚が検知するので、より気が付きやすいという理由です。

ルールは、やらなければいけないこと、やってはいけないことを端的に記したものです。それには理由があるので、それを理解すること、あるいは教育に含めることが必要。なぜ?がわからないと、ルールを無視することが起きます。

 

ある外資系の半導体の会社では、“工場長が現場のルールを作る”ということを聞いたことがあります。

 

良く現場に入り、作業の仕方(動作、行動)、品質、安全、クリーン化等多面的に観察し、それをルールに反映する。また、定期的にチェックして、問題点等が確認できれば、そのルールを更新するのだそうです。そのためには責任者自ら現場に良く入る。

 

安全、品質(クリーン化を含む)の確保、作業ミスの発生防止など様々な管理内容は、現場に入って初めてわかることが多い。その改善、対策は机上で考えるのではなく、現場を見ることから始めないと、遊離してしまう。そのために責任者自ら現場に良く入るわけです。

 

現場で原因、対策を考えるのは、特性要因図も同じである。机上で考えるのではなく、現場で観察しながらやらないと、真因にたどり着かないのと同じである。その現場責任者がそれだけのエネルギーを絞り出すのも、日々大変な努力が必要だと感じる。そこにものづくりへの真剣さを感じる。

 

私は長い間現場を這いずり回ってきました。毎日同じ現場を見ても変化を感じることがあります。突然大きな問題に遭遇することもあります。この現場という文字は、その場に現れると書きます。その現れたことに気づく力、見逃さない努力も必要だと感じています。ゴミの観察からはじめ、現場を良く観察してみましょう。

 

次回に続きます。

 

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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