ゴミの見方の最後に”合理的、効率的なゴミの分析”について解説します。
図.分析について
肉眼で観察し、それが何かを確実に判断できる場合は良いのですが、不明なもの、曖昧なものは顕微鏡などで確認しましょう。それでもまだ不明であれば、分析をしてきちんと特定することが重要です。そうしないと真因に迫ることができないばかりか、誤った情報により改善、対策が取られてしまうかも知れません。
誤った情報により改善、対策が取られてしまと発塵源を食い止めることができず、ゴミは出続けるかも知れません。その分析について下に示した二つの例を参考に、私が考える合理的効率的な方法を解説します。
長年現場を這いずり回り、その過程で現場、技術、品質部門の対応を見てきました。その対応の仕方は大別すると、この二つです。結果的には、ゴミの分析は現場に足を運ぶことから始めることが合理的、効率的だと考えています。
1.クリーン化:現場に事実がある。だから現場に足を運ぶ
私が赴任中に在籍していた品質保証部門には分析担当の女性がいました。学生時代から分析を学んでいたとのことですが、分析結果や原因の特定など様々なことにアドバイスをもらっていました。
この女性は、上図の①に記したように、現場からゴミの分析の依頼があると、必ず現場に出向き、「分析したいのはこれですね」と確認し、対象のゴミを採取しながらその周囲の環境も良く観察していました。その時、「このゴミは、金属のゴミです。分析するとSUSが出ますね。このスライダーが擦れて発塵しているので、発生源はここですね」と周囲の人に説明し、その部分も見てもらうわけです。
金属粉の場合、普通の微粒子と違い、同じ大きさでも重量があるので、その環境では飛散するより、ほぼ真下に落ちることも含んで判断しているわけです。あるいは、繊維の千切れたものの場合、その付近で使われているワイパーの繊維ではないか。設備の鋭角の部分にも千切れた繊維がある。それと同じではないか。そこからワイパーの使い方や、不織布や化学繊維の選択に問題があるのではないかという風に指摘するわけです。
このように長年の分析の経験に加え、現場もセットで見ているため、ライブラリが頭の中に入っています。そして蓄積されているのでしょう。
ただしこれだけでは説得力が弱いので、きちんと分析します。その結果「やっぱりSUSでした。SUS―XXXでしたよ」と言って、データを見せると納得するのです。つまり現場で推測ができ、分析でその裏付けが取れるわけです。しかも効率的に短時間でできるわけです。この過程で、現場を納得させるだけでなく、自らの推測にさらに自信を積み重ねることができるのです。この繰り返しから、推測したことは高い確率で当たっているわけです。
この女性は海外の工場、拠点からも現場診断の要請があり、出かけていました。現場診断をする時、分析装置を背負っているようなもので、不具合を指摘するだけでなく、その場でこのゴミは〇〇ですと言ってくれます。受け手である現場側も改善や対策に素早く対応できるわけです。状況によっては、現地に滞在中に、発生源の究明やその改善、対策結果の報告を受けることもできるわけです。
この連載の最初のところで、“三菱電機のCATS”のことを紹介しましたが、それを一人でやっているようなものです。
その女性の思いは、“現場に事実がある。だから現場に足を運ぶ”のだそうです。現場に行けば、設備の不具合だけでなく、治工具、作業条件、人の動き、製品の製造方法、管理者や作業者の考え方など、様々なこと見えるものがあるあるということです。
単に分析するだけでなく、技術、品質部門の課題を拾い、持ち帰ることもできるわけです。依頼されたゴミを淡々と分析し、得られたデータをそのまま提示するという事務的な作業ではなく、多面的に見たり、改善、対策に繋がる幅広い情報を提供するという、次の行動に繋がる分析活動だと思います。現場の不具合と、ゴミを対比させて(繋げて)説明してくれるのでわかり易いと評判でした。
2.クリーン化:現場との良好な関係で日常的な情報収集
現場からの分析依頼があった時の技術や品質の対応事例です。現場から分析依頼があった時、「分析をしてやるから、そのゴミを採取して持ってきなさい」という例です。
それを分析しようとすると、どんな環境で採取されたのか、いろいろ混じっているが、どれを分析すれば良いのかわからない。いざ分析を始めると、数十、あるいはそれ以上のものが出て来てしまいます。
分析装置は非常に高額で、たくさん用意するわ...