クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その15)

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◆ クリーン化活動の組織と現場の重要性

 下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいてほしいことです。クリーン化を成功させる条件について、前回に続き解説します。

 

クリーン化

図. クリーン化活動の重要ポイント

 

3. 全体活動であること

 クリーン化は職制・作業者・スタッフなど、全員のクリーン化に対する意識とモラルの向上が重要だということを「クリーン化について(その7)クリーン化の4つの目的」で説明しました。

 クリーン化意識とモラル向上に向けた活動をするためには、会社や事業所、事業部など、部門の括(くく)りでは方針を明確にして、現場レベルではそれを受けた実行計画が必要です。方針を提示する側の方は、自社・現場をどのようにしたいかという思いも含め提示し、形だけの指示や伝達にはしないよう心掛けてください。

 各企業では経営方針・品質方針・環境方針などいくつかの方針が掲げられています。その中に、クリーン化の推進という目的が具体的に挙げられているところもあります。クリーン化は、企業の経営に直結します。現場のものづくり環境を向上させ、お客さまに安心、安全を提供し、信頼度を高めていきましょう。

 

 中小企業で方針の中に、クリーン化意識やモラルの向上などといったスローガンが掲げられている経営者の方と話をしてみると、その時の経営だけでなく「企業の永続」という使命や将来をイメージしながら、熱い思いを話してくれました。そういう場面は経営者の悩みや苦労を肌で感じ、私自身も多様な考えを学ぶ機会でした。そしてそこにはクリーン化推進部署があり、担当がきちんといて、生きた活動になっています。

 単に「ものづくり現場の環境を向上させ、高い品質の製品を提供する」という内容、表現では抽象的であり、社員の心には届かないでしょう。経営者の心、思い入れを届けましょう。

 また活動を進めるにあたり、決してクリーン化担当だけの活動にはしないよう気を付けてください。担当者らがやればよいのではなく、全員参加で成果が出るのです。その中で、活動には核になる組織がほしいのです。 

 

【活動の組織編成】

 上図の中段に記したように、その職場の職制・品質・技術・保全・クリーン化担当をメンバーとして活動しましょう。そうすることで、各職場の情報共有ができるからです。クリーン化パトロールの実施や、そこで拾われた不具合の改善・対策会議をする時などはこのメンバーが揃(そろ)って行います。その目的の一つは、現行犯逮捕をしたいということです。

 例えば、メンバーの誰かが大きな不具合を発見したとします。その時他のメンバーがその場に集まり、その凄(すご)さ、酷(ひど)さを確認するのです。「これは至急対応しないと設備が故障してしまう」という感じで、課題の共有ができます。また現場、設備の見方など着眼点のレベルも向上します。

 

【現場は生き物】

 現場という言葉に着目してみましょう。現場とはその場に現れると書きます。今、皆でパトロールをしていて不具合を見つけた、その場のことです。さらに、現場の状態は変化するということも知っておいてください。

 こんな事例があります。保全担当が不在だったが、予定通り現場のパトロールを実施したところ、先ほどのような情報共有ができたそうです。メンバーの誰かが保全メンバーに対し「今日こんなことがあった。後で見ておいてください」という情報の伝達があったのです。ところがその保全担当は、その場にいなかったため、内容の凄さまでは分かりません。また、やらなければいけない仕事もたくさんあるうえ、しかも後でと言われたため、対応の優先度は下がっていました。

 それでもと思い、かなり時間が経ってから見に行ったのですが、その前にそこを通った作業者が金属粉の堆積(たいせき)に気づき、雑巾(ぞうきん)で一拭きしてしまい、証拠がなくなってしまったのです。結局どこのことだか、何のことだか分からないまま、曖昧(あいまい)になってしまったという事例です。

 

 このような事例は沢山(たくさん)あります。意識したいのは「現場は生き物」ということです。そして状態はどんどん変化していきます。このパトロールで拾われた不具合は、そのままにしておいたらどうなるか、一つ先、二つ先を考えて、優先順位をつけて緊急性の高いものから対応することが重要です。

 上図の組織の中でクリーン化担当+女性と記しました。これはクリーン化担当が女性であっても(兼任でも)よいです。理由は、女性は第六感を持っているといわれるほど高い、あるいいは鋭い感性を持っています。また、地味にコツコツとやることにも優れていますので、このような特性を活用したいのです。

 

【三菱電機のCATS】

 上図で女性のところに、三菱電機のCATSと追記しました。かつて『三菱電機にはCATSがいる』という本が出版されています(1989年、ダイヤモンド社)。このCATSとは「Clean Analysis Team for Semiconductor(半導体におけるクリーン化の分析、解析をするチーム)」のことです。ちょうど、劇団四季のミュージカル「キャッツ」も始まったころで、同じ名前でもあったことから、ご存じの方もいると思います。注目すべきことは、メンバーが物理や化学など理系の大...

 

◆ クリーン化活動の組織と現場の重要性

 下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいてほしいことです。クリーン化を成功させる条件について、前回に続き解説します。

 

クリーン化

図. クリーン化活動の重要ポイント

 

3. 全体活動であること

 クリーン化は職制・作業者・スタッフなど、全員のクリーン化に対する意識とモラルの向上が重要だということを「クリーン化について(その7)クリーン化の4つの目的」で説明しました。

 クリーン化意識とモラル向上に向けた活動をするためには、会社や事業所、事業部など、部門の括(くく)りでは方針を明確にして、現場レベルではそれを受けた実行計画が必要です。方針を提示する側の方は、自社・現場をどのようにしたいかという思いも含め提示し、形だけの指示や伝達にはしないよう心掛けてください。

 各企業では経営方針・品質方針・環境方針などいくつかの方針が掲げられています。その中に、クリーン化の推進という目的が具体的に挙げられているところもあります。クリーン化は、企業の経営に直結します。現場のものづくり環境を向上させ、お客さまに安心、安全を提供し、信頼度を高めていきましょう。

 

 中小企業で方針の中に、クリーン化意識やモラルの向上などといったスローガンが掲げられている経営者の方と話をしてみると、その時の経営だけでなく「企業の永続」という使命や将来をイメージしながら、熱い思いを話してくれました。そういう場面は経営者の悩みや苦労を肌で感じ、私自身も多様な考えを学ぶ機会でした。そしてそこにはクリーン化推進部署があり、担当がきちんといて、生きた活動になっています。

 単に「ものづくり現場の環境を向上させ、高い品質の製品を提供する」という内容、表現では抽象的であり、社員の心には届かないでしょう。経営者の心、思い入れを届けましょう。

 また活動を進めるにあたり、決してクリーン化担当だけの活動にはしないよう気を付けてください。担当者らがやればよいのではなく、全員参加で成果が出るのです。その中で、活動には核になる組織がほしいのです。 

 

【活動の組織編成】

 上図の中段に記したように、その職場の職制・品質・技術・保全・クリーン化担当をメンバーとして活動しましょう。そうすることで、各職場の情報共有ができるからです。クリーン化パトロールの実施や、そこで拾われた不具合の改善・対策会議をする時などはこのメンバーが揃(そろ)って行います。その目的の一つは、現行犯逮捕をしたいということです。

 例えば、メンバーの誰かが大きな不具合を発見したとします。その時他のメンバーがその場に集まり、その凄(すご)さ、酷(ひど)さを確認するのです。「これは至急対応しないと設備が故障してしまう」という感じで、課題の共有ができます。また現場、設備の見方など着眼点のレベルも向上します。

 

【現場は生き物】

 現場という言葉に着目してみましょう。現場とはその場に現れると書きます。今、皆でパトロールをしていて不具合を見つけた、その場のことです。さらに、現場の状態は変化するということも知っておいてください。

 こんな事例があります。保全担当が不在だったが、予定通り現場のパトロールを実施したところ、先ほどのような情報共有ができたそうです。メンバーの誰かが保全メンバーに対し「今日こんなことがあった。後で見ておいてください」という情報の伝達があったのです。ところがその保全担当は、その場にいなかったため、内容の凄さまでは分かりません。また、やらなければいけない仕事もたくさんあるうえ、しかも後でと言われたため、対応の優先度は下がっていました。

 それでもと思い、かなり時間が経ってから見に行ったのですが、その前にそこを通った作業者が金属粉の堆積(たいせき)に気づき、雑巾(ぞうきん)で一拭きしてしまい、証拠がなくなってしまったのです。結局どこのことだか、何のことだか分からないまま、曖昧(あいまい)になってしまったという事例です。

 

 このような事例は沢山(たくさん)あります。意識したいのは「現場は生き物」ということです。そして状態はどんどん変化していきます。このパトロールで拾われた不具合は、そのままにしておいたらどうなるか、一つ先、二つ先を考えて、優先順位をつけて緊急性の高いものから対応することが重要です。

 上図の組織の中でクリーン化担当+女性と記しました。これはクリーン化担当が女性であっても(兼任でも)よいです。理由は、女性は第六感を持っているといわれるほど高い、あるいいは鋭い感性を持っています。また、地味にコツコツとやることにも優れていますので、このような特性を活用したいのです。

 

【三菱電機のCATS】

 上図で女性のところに、三菱電機のCATSと追記しました。かつて『三菱電機にはCATSがいる』という本が出版されています(1989年、ダイヤモンド社)。このCATSとは「Clean Analysis Team for Semiconductor(半導体におけるクリーン化の分析、解析をするチーム)」のことです。ちょうど、劇団四季のミュージカル「キャッツ」も始まったころで、同じ名前でもあったことから、ご存じの方もいると思います。注目すべきことは、メンバーが物理や化学など理系の大卒者だったことです。

 この女性たちは日頃からよくクリーンルームに入っていたとのことです。「現場とはその場に現れる。そして状態は変化する」と書きましたが、その現場に頻繁に入り刻々と変化する現場の姿を観察しているのです。現場に入って、現実はどうか、現物はどうかという三現主義で見るわけです。その上で彼女たちの専門を使い原理、原則で考える、つまり、5ゲン主義が揃うわけです。彼女たちが考えた特許、論文などは大変な量に及ぶようです。

 私は、クリーン化活動への女性の参加は価値があるということを伝えたくて、これまでのセミナーでも紹介してきました。その時は、過去の話として紹介してきましたが、東京で実施したセミナーで、2回ほど三菱電機の方が受講されました。その内の一人の女性は、CATSのメンバーとのことでした。このような話は、兎角(とかく)美談で終わってしまうことがありがちですが、今でも水面下で脈々とDNAの継承がされていることに驚きました。

 各種活動は長い間続けていても、どこかで消えて行ってしまうことが多いのですが、数十年続いていることは凄いことす。この人たちが私のセミナーを受講してくれたことにも恐縮しました。

 次回に続きます。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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