ものづくり現場の体質強化のためには、先ず現場の実態をきちんと把握する必要があります。これは、単に一度や二度現場を見ただけでは、事実を把握できません。現場は、日々変化するからです。
この現場の実態把握の仕方については、良く巡回している人とたまにしか現場に入らない人とで、おのずと違いが出て来ます。また、着眼点やポイントも持たず、ただぐるぐる回って見るだけでは、問題や課題は見つけられない場合も多いですね。そうなると、現場を歩く時間も無駄な気がしてしまいます。
最近では、国内のものづくり現場がどんどん東南アジアに出て行く、いわゆる国内空洞化する中で、国内に居る人達が、“現場を見る”と言う経験も経ず、海外拠点の管理職として赴任することも珍しくなくなりました。現場を見る機会のなかった人が、海外のものづくり拠点に赴任し、本当のものづくり現場の責任者になっても、実際には現場に入らない、入れないと言うことをしばしば耳にします。現場に入る価値が分からないからです。現場に入っても、何が問題なのか、誉めて良いのか、叱って良いのかわからないと言うことから現場に足が向かなくなります。そして、気持ちの中で、手が空いたら入ろう。1日くらい入らなくても、と言い訳けしているうちに段々入らなくなり、やがて全く入らなくなってしまいます。
最近では、情報の電子化が進んでいますので、赴任先の事務室で、歩留まり、品質や生産状況等がPCで瞬時に把握でき、また時差を考慮しないで日本との情報共有も簡単にできる時代になりました。現場に入らず、キーボードを叩いたり、パワーポイントで各種資料を作るだけで毎日が終わると言う話も聞きます。これで仕事が進んだ気になってしまうのでしょう。それでは国内でやっていることと変わりなく、もしかすると赴任しなくても良いかも知れませんね。
赴任前の人達に、「なぜ東南アジアに工場を作るんでしょうね?」と聞いてみると、「日本国内に比べ、コストメリットが格段に違うからです」と一様に言います。 私は、「その考えは、間違ってはいません。でも、東南アジアに出ても、その工業団地には、同じように日本から進出した企業や、海外からの企業も含めライバルが沢山いるはずです。日本と現地を比較するのではなく、その進出先で勝たなければいけないんです。そこでしのぎを削るんです。今、業績が良いのは、それまでに赴任した人達の長年の努力の積み重ねであって、そこに胡坐をかいていると、それまで良かった体質が音を立てて崩れます。そうなってからでは立て直しはできませんよ」とちょっと脅かしたり、厳しい指摘をします。その危機感が欲しいからです。
TOP、管理監督者が入らない現場はどうなるのでしょう。 端的に言いますと“現場は荒れ放題”になり、具体的には歩留まり、品質、安全など色々な面で問題が表面化してきたり、現場の士気が下がる、緩むと言うことになります。こういう工場をたくさん見て来ました。
品質問題が出始めると、その都度引き締めているはずなのに、次から次に発生します。事故・災害も...