クリーン化活動では、現場でゴミや劣化、不具合を発見した時に“ストーリー化して考える”ことが重要だと常々感じています。
例えば、現場でゴミや劣化、不具合が発見されたとします。大体の場合は、発見されたものが写真に撮られ、リストに記録、整理され、改善担当や納期等が決められると言ったパターンが一般的でしょうか。写真撮影された場合、多くの工場では、対策前と対策後の写真が帳票に掲載され、報告されていると思います。この、“ゴミや劣化、不具合を発見した”と言うところに着眼してみましょう。その部分だけにスポットが当たり、そしてその部分だけが改善され、それで終わっていないでしょうか。暫定対策=恒久対策(放置)になってしまい、そして再発すると言うことにはなっていませんか。これをストーリー化して考えて見ると、様々な物や事象が見えて来ます。私の場合は“その場”を中心にちょっとした小宇宙が広がります。
例えば、ここにゴミがある→どこから来るのだろう?→この上のカバーと搬送部が擦れているからだな→本来擦れていないはずなのになぜ擦れるの?→カバーが少し変形している→どうしてカバーが変形しているの?→先週までは良かったはずだが→と言うことはその後のメンテナンスが原因か→誰がやったの?→一人立ちしたばかりの新人?→するとカバーの開け方を知らない?→構造を理解していないので強引に開けようとした?
こうなると、新人にきちんと教育したのか。あるいは、メンテナンスの標準があるのか。品質問題は起きていないか。現場の管理監督者は気がつかないのか、と言う風にいろいろな疑問が次々に出て来ます。まだ気がつかないこと、落としていることはないかも考え、それらの疑問を一つずつ明確にして行きます。すると何が不足しているのか、問題なのかが見えて来るのです。
これは勝手に例を作りましたが、ゴミを着眼点にして「なぜ、なぜ」を繰り返しながら遡及しよう、真の発生源に辿り着こうと言うことです。いわゆる過去を辿り、真因を究明すると言うことです。そうすることで、その場限りの処置(カバーの変形を直した)だけでなく、再発も防げるかもしれません。
今度はこのゴミがそこに留まらずに、移動した場合はどうなるか考えて見ましょう。発見されたゴミは一部が残っていたが、それが風など外的要因で移動した場合は、その付近にある穴から更に設備内に落下しているかも知れない。あるいは、落下したものが、何かの駆動部に入り込むかも知れない。歯車のグリスに入り込むかもしれない。ゴミが金属だったらグリスに混じり、歯車にキズが付くかも知れない。落下したゴミが近くに置かれている製品に付着するかも知れない。ゴミが金属異物なら、他のゴミよりも重量があるはずなので、垂直に落下するかも知れない。すると設備内に落下し、運が悪いと電装部分に入り込み、電気的なトラブルになるかも知れない。
こういう場合は、懐中電灯を使って斜光でゴミを追跡観察すると、その経路が確認できることがあります。「ほらほら、あのゴミここまで来ているよ」とか、「こんなに広がっているよ」などと。こうなると設備停止や生産ロスなどに繋がる可能性も推測できます。
後半は、想像、推測の部分です。つまりゴミを起点に先を読む、将来を考えるということですね。これにより、製品品質の確保だけでなく、人的安全の確保(例えば発見したゴミが電気配線の被服剥がれなら感電など)や設備の安定稼動などに対しての予知、予防になります。こうなると、単にクリーン化担当に任せておけ、やらせておけではなく、管理監督者もパトロールに参加したり、日ごろから現場を良く見て欲しいものです。そうすることで、職場運営のあるべき姿が見えてきます。
先輩やリーダーの仕事の教え方、メンテナンスの仕方、考え方などの指導は良いのか。原因究明の仕方に問題はないか。同じことが繰り返されないよう、クリーン化でのトレーサビリティ(原因訴求容易性)の考え方は確立できないか(=ストーリー化して考える)。生産と原因究明や対策などとの優先順位づけ、差し立ては適正にされているか、などいろいろなものが見えてきます。まさしく“現場=その場に現れる”だと思います。
こんな風に、ゴミがあるとか劣化を発見をした時に、どれだけ過去に遡り、真因に迫れるストーリーを描けるか。これは、暫定対策ではなく、限りなく恒久対策に近づいての発生源対策ができるかということです。
また将来を推測するとどんな影響が考えられるかを想像しストーリー化してみると、クリーン化も、狭義の目的である“歩留まり改善、品質改善、成果は出...