海外事情:現場診断 クリーン化について(その86)

更新日

投稿日

 

 

【この連載の前回へのリンク】

前回、海外の人財育成について紹介してきました。今回は、海外の現場診断について紹介します。

 

クリーン化

 

中国の工場診断の写真です。左の写真は、清浄度が低いクリーンルーム内ですが、治具管理をしているエリアです。私は中央下の方で、オレンジ色の懐中電灯を持って説明しています。このメンバーは、各職場のクリーン化担当です。正面のピンクの防塵衣を着用している人は、通訳さんです。

 

私を取り囲み、指摘箇所を食い入るように覗きます。私が話した内容を通訳すると、その場所と突き合わせながら、真剣にメモします。

 

国内で現場診断をすると、クリーン化担当他2、3人くらいは周りにいますが、かなり遠くで、腕組みをしている人が目立ちます。あれでは確認はできないだろう。とりあえず立ち会った、ということだろうと思ったりもします。つまり真剣さを感じないのです。

 

診断終了後の報告会などで、かなりズレた質問をされる場合があります。先ほど現場で説明したのを見ていれば、このような質問は出ないと思うのです。現場で確認したクリーン化担当の顔を見ると、渋いような苦いような顔をします。ところが、中国だけでなく、東南アジアでは、このように真剣なところが多いのです。ですから、行く度に成長を実感するのです。

 

写真の右は、カバー内部の診断風景です。

 

内部は製品を加工するところ、品質に影響するところです。こちらも、一生懸命な姿が目につきます。懐中電灯では、ゴミの確認、劣化などの部分の確認だけでなく、さし棒の代わりに、不具合箇所を指すこともできます。遠くの場所も示すことができるので、非常に便利です。そのゴミ、場所を示せるので、画像として残りやすいのです。

 

そんな風にしながら、現場診断の時間を多めに取ります。その場で不具合を確認し、納得、理解してもらいたいのです。その場は、勉強の場であり、質疑、応答の時間でもあります。疑問に思ったことや、確認したいことをそのままにしないことです。

 

通訳さんのことを記します。通訳さんも、一生懸命勉強をしています。

 

どうしてそんなに一生懸命勉強するのか聞いたところ、「私は、通訳にも使命があると考えています。単に日本語と中国語をひっくり返すのではなく、聞いている人に如何に伝えるかを考えています。それには、先生の思いや考えを感じ取り、自分なりにそしゃくする。またクリーン化の専門用語も正しく伝えたい。だって先生はわざわざ遠くから来てくれているのですから。この時間を大切にしたいのです」と言うのです。

 

これを聞いた時、通訳の仕事を真剣に考えていると思った。そして、その時々を大切にしているのだと理解した。このような人だから、自分でも、クリーン化の教育ができるほどの人だった。効果的な指導の場にするため、水面下で支えているんだなあとつくづく感じました。

 

*参考:この女性は、西安(昔の長安)の日本語学校で学んだとのことです。

 

日本でテレビを介して中国を見ると、その風景には首を傾げることが多いですね。

 

それも中国ですが、このように現場の人と接すると、また違うのです。テレビだけで判断してしまい、それを先入観を持ってしまう、つまり一面だけで判断してしまう...

 

 

【この連載の前回へのリンク】

前回、海外の人財育成について紹介してきました。今回は、海外の現場診断について紹介します。

 

クリーン化

 

中国の工場診断の写真です。左の写真は、清浄度が低いクリーンルーム内ですが、治具管理をしているエリアです。私は中央下の方で、オレンジ色の懐中電灯を持って説明しています。このメンバーは、各職場のクリーン化担当です。正面のピンクの防塵衣を着用している人は、通訳さんです。

 

私を取り囲み、指摘箇所を食い入るように覗きます。私が話した内容を通訳すると、その場所と突き合わせながら、真剣にメモします。

 

国内で現場診断をすると、クリーン化担当他2、3人くらいは周りにいますが、かなり遠くで、腕組みをしている人が目立ちます。あれでは確認はできないだろう。とりあえず立ち会った、ということだろうと思ったりもします。つまり真剣さを感じないのです。

 

診断終了後の報告会などで、かなりズレた質問をされる場合があります。先ほど現場で説明したのを見ていれば、このような質問は出ないと思うのです。現場で確認したクリーン化担当の顔を見ると、渋いような苦いような顔をします。ところが、中国だけでなく、東南アジアでは、このように真剣なところが多いのです。ですから、行く度に成長を実感するのです。

 

写真の右は、カバー内部の診断風景です。

 

内部は製品を加工するところ、品質に影響するところです。こちらも、一生懸命な姿が目につきます。懐中電灯では、ゴミの確認、劣化などの部分の確認だけでなく、さし棒の代わりに、不具合箇所を指すこともできます。遠くの場所も示すことができるので、非常に便利です。そのゴミ、場所を示せるので、画像として残りやすいのです。

 

そんな風にしながら、現場診断の時間を多めに取ります。その場で不具合を確認し、納得、理解してもらいたいのです。その場は、勉強の場であり、質疑、応答の時間でもあります。疑問に思ったことや、確認したいことをそのままにしないことです。

 

通訳さんのことを記します。通訳さんも、一生懸命勉強をしています。

 

どうしてそんなに一生懸命勉強するのか聞いたところ、「私は、通訳にも使命があると考えています。単に日本語と中国語をひっくり返すのではなく、聞いている人に如何に伝えるかを考えています。それには、先生の思いや考えを感じ取り、自分なりにそしゃくする。またクリーン化の専門用語も正しく伝えたい。だって先生はわざわざ遠くから来てくれているのですから。この時間を大切にしたいのです」と言うのです。

 

これを聞いた時、通訳の仕事を真剣に考えていると思った。そして、その時々を大切にしているのだと理解した。このような人だから、自分でも、クリーン化の教育ができるほどの人だった。効果的な指導の場にするため、水面下で支えているんだなあとつくづく感じました。

 

*参考:この女性は、西安(昔の長安)の日本語学校で学んだとのことです。

 

日本でテレビを介して中国を見ると、その風景には首を傾げることが多いですね。

 

それも中国ですが、このように現場の人と接すると、また違うのです。テレビだけで判断してしまい、それを先入観を持ってしまう、つまり一面だけで判断してしまうと、誤った見方をしてしまうかも知れません。そして日本の方が・・と油断してしまいます。両方事実なのです。

 

指導している時に、既に日本の現場は追い越されているとの危機感があった。最近は、訪問しているわけではないので、実態はわかりませんが、恐らく、彼らは立ち止まらず、自社独自のクリーン化文化を構築しているのではないかと思います。そうなると、現場の基盤、体質は強くなっていきます。日々、見えない相手を想像し、危機感を持ったものづくりをしましょう。

 

次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め...


「クリーン化技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その18)

  ◆ クリーンルームの重要性を考える  下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現...

  ◆ クリーンルームの重要性を考える  下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現...


人財育成(その7) クリーン化について(その102)

  クリーン化について、人財育成に触れています。今回のその7も前回に引き続き、人を育てるにはです。 【この連載の前回:クリーン化について...

  クリーン化について、人財育成に触れています。今回のその7も前回に引き続き、人を育てるにはです。 【この連載の前回:クリーン化について...


クリーン化について(その130)人財育成(その31)クリーン化教育

  前回のクリーン化について(その129)に続き、クリーン化教育について続けます。   前回は教育の失敗事例や“...

  前回のクリーン化について(その129)に続き、クリーン化教育について続けます。   前回は教育の失敗事例や“...


「クリーン化技術」の活用事例

もっと見る
クリーンルームのレイアウトを考える

 クリーンルーム内には、設備、作業台など色々なものを設置するので、予めレイアウト設計をします。高い清浄度を必要としないクリーンルームは、物の流し方、つまり...

 クリーンルーム内には、設備、作業台など色々なものを設置するので、予めレイアウト設計をします。高い清浄度を必要としないクリーンルームは、物の流し方、つまり...


クリーン化による安全と作業ミスの関係事例

 今回は“安全と作業ミス”の関係について、“プラグの差し込み”を例に説明します。これは過去訪問した工場での、設備修理中に起きた事故事例です。  ある保全...

 今回は“安全と作業ミス”の関係について、“プラグの差し込み”を例に説明します。これは過去訪問した工場での、設備修理中に起きた事故事例です。  ある保全...


クリーン化:呼気からの吹き出し異物について

1. 呼気からの吹き出し異物の問題  清浄度があまり高くないクリーンルームでは、防塵衣は着用していてもマスクを着用せず作業しているところも多いようで...

1. 呼気からの吹き出し異物の問題  清浄度があまり高くないクリーンルームでは、防塵衣は着用していてもマスクを着用せず作業しているところも多いようで...