単に現場の不具合を指摘することだけが現場診断、指導ではありません。現場の見方、考え方を伝え、品質や安全、生産、人の育成など様々な繋がりも考えてもらう機会にしたいのです。指導する側も、成長に繋げてもらいたいという思いを込めています。現地に着くと多くの場合は応接室、または会議室に案内されます。そこで会社の概要や品質向上に関するテーマなどの情報交換をします。もちろんクリーンの話題が中心です。
この場には、会社の規模にもよりますが、経営者、あるいは管理職など会社側の立場の方にも立ち会ってもらうことが重要です。診断、指導の依頼があった時は、そのことも事前にお願いしておきます。
この打ち合わせの場では、取り組み内容、困っていることなど先方から提示されるテーマ、相談などを聞きながら、雰囲気を把握します。本気度がどのくらいなのかです。その重要な時間に挨拶だけで席を外される方も多いようです。極端な場合は、残ったのはクリーン化担当だけという場合もあります。
あるいは、経営側の方が同席していても「あなたが掃除の仕方を教えに来たのか?」という場合もあります。まだまだ “クリーン化とは何か” ということが普及せず、単に “掃除のことだろう” という意識の方もいます。
中小企業の中で、このようなところも多いのが実情です。その原因はいくつかあります。
まず、クリーン化技術は企業の競争力であり、そのノウハウは門外不出である。という部分です。中小企業は大手企業から仕事が入ってくるケースが多く、しかも1社だけではなく、複数の企業との取引があると思います。大手企業は自社内でノウハウは保有、蓄積させていても、取引先へ技術公開すると、その企業から他社に流出することが考えられます。
また、そのノウハウを活用することで、他社が恩恵を受ける場合もあるので慎重なのです。もう一つ、たとえ大企業であっても、部門によっては指導できない場合もあります。指導できなくても「クリーンルームにすれば品質、歩留まりが向上する」という思い込みや、神話のようなことで、現場のクリーンルーム化を要求するわけです。そしてクリーンルームにしても、そのフォローがないと、クリーンルーム内で旧態依然のものづくりをしている場合です。
大企業、中堅企業の場合は、クリーン化は仕事の一部であり、ノウハウを保有、進化させています。
その場で、今説明した内容を話題にしても「今時そういうところはないだろう」という反応が多いようです。相互の狭間に見えない段差が存在するのです。そのことをまず理解してもらうことから始めますが、“ クリーン化 ”という言葉さえ広く普及しているわけではないので、この時間が最も重要だと考えています。
私たちのようにクリーン化を長い間やってきた、あるいはそのような環境にいた人たちは、クリーン化は普及している言葉だと錯覚してしまい、いきなりクリーン化の中身に入ってしまう場合があります。ここでもギャップが起きる原因になっています。
ここはどの入り口から入るのが適正なのかを考えることです。このことは私が在社中に経験したことが多いのですが、社内では、なかなか信じてもらえない場合もありました。この段差を如何にならすか、現場診断、指導の中での大きな役割だと考えています。
また、サプライチェーンを活用し、品質レベルを高めていくことも検討の余地があるのかも知れません。単にものの流れの繋がりだけでなく、品質も流動する、逆に川下からの品質問題等を、そのチェーンを使って遡上させる仕組みを持たせるということです。サプライチェーンの機能強化を考えましょう。
前述の、経営者、管理職の方が冒頭で挨拶しただけでいなくなってしまい、現場診断の場では担当者だけということも何回か経験しました。最後のまとめの時だけ顔を出して、...