クリーン化指導で通っていたある会社の現場監督者から聞いた事例です。私が訪問する少し前に技術発表会があり、その場で発表したある技術課長の話です。
1.技術課長の発言
品質問題をこのように改善して、これだけの成果が得られたという発表でしたが、その最後に、「この成果は私たちだけで得られたものではありません。工場の人たちが、日々クリーン化活動を通じて、現場を良い状態にし、そして維持向上させて来たお陰で得られた成果です。」と大勢の前で発表しました。それが技術課長の発言でしたので、現場の人たちは大変感動したとのことです。皆さんの地ならしのおかげで、不具合が明確になり、原因究明がしやすくなったという、現場に対しての感謝の意を現したのです。
クリーン化活動は、地味に地道にコツコツと取り組む活動です。その水面下の活動が如何に重要かを認識しての発言であり、現場の努力に光を当て苦労を労ったということです。それを聞いた現場の人は、自分たちがやっていることの需要さを認識し、手を抜くこともできなくなってしまったようです。それからますますクリーン化活動に熱心に取り組むようになりました。それが定着に繋がり、技術メンバーにとっても、品質改善がし易くなった事例です。
一般的にありがちなのは、まるで自分たちだけで得た成果だと言わんばかりに成果を強調し、協力者がいたり、それを支えていた人たちのことには触れないことです。この事例の技術課長の発言は、それとは、逆の事例です。
2.徹底清掃について
クリーン化活動で最初に取り組むことは、徹底清掃です。もちろん、いきなり清掃を始めると、事故、災害が起きる可能性がありますので、安全教育を実施してから始めます。この徹底清掃の目的には、次の2つがあります。
1)汚れているところを徹底的に綺麗にするには、相当な苦労があります。
従って、もう二度とあんな苦労をしたくないという心理。それを維持管理に活用しようということ。
つまり、汚れる前に清掃する、あるいはそれを標準化し、定期清掃に繋げること。
2)もう一つは、あれだけ苦労して清掃したのに、こことここはすぐに汚れる、ゴミが
出るということがわかる。
汚れる箇所が明確になるので発生源の特定ができる。従って対策が取りやすいということです。
例えば車のオイル漏れもそうです。私の車はオイルが漏れるみたいと言って、自動車修理工場の油だらけの場所に車を停めても良く分かりませんが、徹底的に清掃した綺麗な場所に移すとオイルの滴下がわかります。そこを辿れば、漏れの箇所が断定でき、修理がしやすいわけです。この例のように、徹底清掃で不具合が見えてきます。先の技術課長の発言はこれと同じです。現場の人が、きちんと現場を管理しているからこそ真因が究明しやすくなり品質改善に効果、成果を出すことが出来たということです。
3.クリーン化は、ものづくり企業の基本要素
現場が乱れ、汚れているとどこから手を打てば...