5Sと6Sとそのメリットとは

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 5Sとは、皆さんご存じの通り、整理・整頓・清掃・清潔・躾です。この5Sや改善などの表現は、東南アジアの工場に行っても、ローマ字表記ですが、日本語のまま通じるところが多くなりました。今回は6Sについての話題です。

 

1.もう一つのSは習慣化

 国内のある会社を訪問した時、応接室で「6S・・」と言う掲示が目に入りました。その時私は、5S+安全(Safety)ではないかと思いました。しかし勝手な推測は良くないと思い、対応してくれた方に「5Sは知っていますが、6Sは知りません。6Sって何ですか」と聞いてみました。すると、「5S の中で躾が最も難しい。その躾を定着させるには習慣化が必要だと考え、もう一つSを追加した」と言うのです。躾の難しさは自分でも体験、経験をしてきたので、なるほどと思いました。

 中国のある工場にクリーン化指導で訪問した時のことです。廊下の掲示がそれは綺麗でした。紙の大きさと貼り方は全て統一され、縦、横きちんと揃えて貼ってありました。食堂に繋がる廊下やお客様が通る廊下には、会社の経営方針や環境方針、その他各種活動内容など全社員共通の内容が貼られていました。また各工場の入り口付近の廊下には、生産状況や品質状況、工数、作業ミス等が同様に綺麗に掲示され、さらに掲示内容の更新日と担当が表示されていました。

 前述の廊下は会社の指標ですが、工場の方はその工場の実力値の掲示です。そして半月毎にデータが更新されています。つまり責任を持って、最新データに貼り換えるということです。常に新しい情報ですから、足を止めて良く見ている社員の姿も多かったです。ただ貼るだけではなく、情報が伝わりやすい掲示だったのです。

 日本の場合は、古いデータや資料等も貼りっ放し、破れているものがあったりします。貼ることが目的になってしまい、メンテナンスされていないんですね。こうなると、もうどうでも良くなってしまいます。それが中国のその工場には一切有りませんでした。

 どうしてこんなに綺麗に掲示が出来るのかを、当時の社長(中国では総経理)に聞いたところ、複数の指導は避け、ただひとつ、「縦は縦、横は横にきちんと揃える。つまり水平、垂直、直角に」と言うことを1年近く言い続けたとのことです。そうしたら、このように綺麗に掲示が出来るようになったそうです。これを聞いて、「躾とはこういうことか」と思った次第です。

 私も工場在籍時、120名の部下を担当している時がありました。次から次へと様々な問題が起き、上司に報告するたびに、「徹底しなさい」と良く言われました。部下には、二度、三度話をする程度で、上司には徹底したと報告。ところがまた、同様の問題が起きてしまいます。もちろん話だけでなく仕組みも改善するのですが、問題はなかなかゼロにはなりませんでした。

 
 その経験があったので、この社長の話を聞いて、徹底とはこういうことかと思いました。ただ、日本ではあまり何度も言うと、「くどいとか、しつこい」と言われそうで、少し言っただけでやめてしまうのです。部下に嫌われたくないとの思いもあり、躾は難しいテーマです。

 

2.掲示の徹底から得られたメリット

 掲示の仕方を徹底的に指導した結果、水平、垂直、直角のイメージが一人一人にインプットされ、工場に入るとこのイメージから外れたものは異常と認識し、報告されるようになったと言うのです。

 例えば、今まで水平だった電気のコードが垂れ下がっている、設備のカバーが斜めになっている、設備の位置がずれているなどを、感覚的に異常と判断するそうです。カバーの傾きは、擦れが生じ金属や塗料の粉が発生したり、強引な取り扱いで変形したりします。また設備の位置がずれると、設備の各種配管の接続部が緩む、外れる原因になるので、事故、災害の未然防止にも繋がると言っていました。


 
3.5Sを通じた人財育成

 この社長の話には続きがあり...

 5Sとは、皆さんご存じの通り、整理・整頓・清掃・清潔・躾です。この5Sや改善などの表現は、東南アジアの工場に行っても、ローマ字表記ですが、日本語のまま通じるところが多くなりました。今回は6Sについての話題です。

 

1.もう一つのSは習慣化

 国内のある会社を訪問した時、応接室で「6S・・」と言う掲示が目に入りました。その時私は、5S+安全(Safety)ではないかと思いました。しかし勝手な推測は良くないと思い、対応してくれた方に「5Sは知っていますが、6Sは知りません。6Sって何ですか」と聞いてみました。すると、「5S の中で躾が最も難しい。その躾を定着させるには習慣化が必要だと考え、もう一つSを追加した」と言うのです。躾の難しさは自分でも体験、経験をしてきたので、なるほどと思いました。

 中国のある工場にクリーン化指導で訪問した時のことです。廊下の掲示がそれは綺麗でした。紙の大きさと貼り方は全て統一され、縦、横きちんと揃えて貼ってありました。食堂に繋がる廊下やお客様が通る廊下には、会社の経営方針や環境方針、その他各種活動内容など全社員共通の内容が貼られていました。また各工場の入り口付近の廊下には、生産状況や品質状況、工数、作業ミス等が同様に綺麗に掲示され、さらに掲示内容の更新日と担当が表示されていました。

 前述の廊下は会社の指標ですが、工場の方はその工場の実力値の掲示です。そして半月毎にデータが更新されています。つまり責任を持って、最新データに貼り換えるということです。常に新しい情報ですから、足を止めて良く見ている社員の姿も多かったです。ただ貼るだけではなく、情報が伝わりやすい掲示だったのです。

 日本の場合は、古いデータや資料等も貼りっ放し、破れているものがあったりします。貼ることが目的になってしまい、メンテナンスされていないんですね。こうなると、もうどうでも良くなってしまいます。それが中国のその工場には一切有りませんでした。

 どうしてこんなに綺麗に掲示が出来るのかを、当時の社長(中国では総経理)に聞いたところ、複数の指導は避け、ただひとつ、「縦は縦、横は横にきちんと揃える。つまり水平、垂直、直角に」と言うことを1年近く言い続けたとのことです。そうしたら、このように綺麗に掲示が出来るようになったそうです。これを聞いて、「躾とはこういうことか」と思った次第です。

 私も工場在籍時、120名の部下を担当している時がありました。次から次へと様々な問題が起き、上司に報告するたびに、「徹底しなさい」と良く言われました。部下には、二度、三度話をする程度で、上司には徹底したと報告。ところがまた、同様の問題が起きてしまいます。もちろん話だけでなく仕組みも改善するのですが、問題はなかなかゼロにはなりませんでした。

 
 その経験があったので、この社長の話を聞いて、徹底とはこういうことかと思いました。ただ、日本ではあまり何度も言うと、「くどいとか、しつこい」と言われそうで、少し言っただけでやめてしまうのです。部下に嫌われたくないとの思いもあり、躾は難しいテーマです。

 

2.掲示の徹底から得られたメリット

 掲示の仕方を徹底的に指導した結果、水平、垂直、直角のイメージが一人一人にインプットされ、工場に入るとこのイメージから外れたものは異常と認識し、報告されるようになったと言うのです。

 例えば、今まで水平だった電気のコードが垂れ下がっている、設備のカバーが斜めになっている、設備の位置がずれているなどを、感覚的に異常と判断するそうです。カバーの傾きは、擦れが生じ金属や塗料の粉が発生したり、強引な取り扱いで変形したりします。また設備の位置がずれると、設備の各種配管の接続部が緩む、外れる原因になるので、事故、災害の未然防止にも繋がると言っていました。


 
3.5Sを通じた人財育成

 この社長の話には続きがあります。このような報告を受けた時、「あっ、そう」で済ますのではなく、大げさに誉めるのだそうです。一度誉められると、また誉められたいとの心理から、次から次へと報告をして来ると言うのです。誉められることがきっかけになり、それまでのやらされ感から脱皮し、自主的、自発的な行動への変化点になるようです。

 私が訪問していた当時のこの会社は、社員が1万人でした。この人達が、工場内でこんな風に異常に気付き、報告し、そして改善をして行くことで、事故、災害も少なくなり、綺麗な良い工場になって行きます。わずかな人数のクリーン化担当や職制が巡回して発見するより、はるかに沢山の不具合を見つけます。全員が工場を見張っていると言うことです。

 誉めることで、その会社で抱えている作業者が、単に作業をする工数だけにとどまらず、大きな働きとなります。経営への参加と見ることも出来るかもしれません。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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