1.クリーンルームの清浄度
クリーン化にまつわるお話(その1)と(その2)に続いて、今回は、クリーンルームでの注意事項 -レイアウトなど-についてです。クリーンルームには色々な構造、タイプがあります。微細化、高集積化を追い求めて来た、いわゆるスーパークリーンルームなどは別にして、多くのものづくりの現場は、クラス1万とか10万と言うクリーンルームが多いと思います。あるいはそれよりも清浄度が低いところもあるでしょう。皆さんのところはどうでしょうか?
こういうクリーンルームは、はじめからそのクラスに合わせ設計された場合と、一般作業エリアをクリーンルームに格上げした場合とがあります。これらの現場では、清浄度や湿度を確保する、あるいは補助的に作業エリアの隅に、パッケージエアコンを設置しているところが多いですね。これまでに国内、海外でこういう工場も、沢山指導させていただきました。
2.パッケージエアコンの気流
ここで気になるのは、気流です。パッケージエアコンは、本体の上部から清浄な空気を室内に放出し、下部で汚れた空気を吸い込むタイプが圧倒的に多いと思います。風の流れは横になりますが、天井付近と床付近では、気流の方向は逆と言うことになります。このパッケージエアコンの下部の吸い込み口付近に、製品置き場や部品置き場、治具置き場を設置している場面にも時々遭遇します。吸い込みの直前ですから、最も汚れた空気が回収されて来るわけで、製品や部品、治具を汚していると言うことになります。
パーティクルカウンターで、室内の清浄度管理をされていたら、試しにパッケージエアコンの吹き出し口と吸い込み口のパーティクルを測定、比較してみると、その違いが良く分かると思います。私の現場確認の道具の一つに、気流の糸(絹糸が良い)がありますが、これはこのような時にも使います。つまり、気流を可視化して見せ、理解してもらうと言うことです。
3.気流を考慮したレイアウト設計
このような気流を考慮したレイアウト設計をしたいものです。 もちろん、生産効率等も含めてですが、稀には相反するレイアウト案が出てくる場合があります。この時は、ゴミの影響を受けないような工程改善や作業性などの生産性も考慮した折衷案の検討も必要になります。
またパッケージエアコンの気流に限らず、室内の最も清浄度の高いところ、つまり気流の上流に、管理・監督者の席を配置しますと、人や紙類等が多く集まり発塵源になります。ここで発生したゴミが下流に流れ、そこに清浄度を必要とする工程等があれば汚してしまいます。これらも含めたレイアウトを検討したいです。 このことは、クリーンルームに限らず、どのものづくりの現場でも共通に考慮が必要です。
4.クリーン化の目的と品質の作り込み
取引先からの要求で、作業エリアをクリーンルームにしたり、それに伴ってクリーンスーツを着用しても、思ったほど歩留まり、品質が改善されないと言う声も聞きますが、こんなところにも一因があるのかも知れません。クリーンルームにしたから、白い服を着たから安心するのではなく、投資効果が出るような改善をしたいものです。
もし作っている製品の品質が、ゴミ等に左右されないものであっても、汚れているものより綺麗な方が良いですね。 良く、“お客様の立場に立って、心を込めて品質を作り込む”などと言いますが、私達が購入する立場になったとしても、ゴミや埃が付着していないものを選ぶと思います。 例えば、雑誌やノートなどを買う時は、商品を選ぶ時に手にしたものではなく、下の方から、あるいは後ろの方から抜き出して、人が触れていない綺麗な物を買おうとする心理があります。
5.パッケージエアコンの不具合事例
余談ですが、ある工場を指導した時のことです。 その工場のクリーン環境を肌で感じながら、ここではパッケージエアコンの下部がかなり汚れているのではないかと疑問に思い、カ...