クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その14)

 

◆ 活動目標を明確にし、意思統一と情報を共有

 下図はクリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を元に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいてほしいことです。クリーン化を成功させる条件について、前回に続き解説します。

 

 

2. 目標があること

 活動には多くの人が関わります。「何でもよいから、とにかく現場を綺麗(きれい)にしなさい」では動きようがありません。ところが稀(まれ)に、このようなケースもありました。活動するには目標が必要です。『何に向かってやるのか』を明確にすることです。それによって社員、従業員のベクトルも合い、成果も出やすくなります。

【目標】

 例えば歩留まり向上や不良率減少、浮遊塵減少、落下塵減少、返品率、または返品数減少など具体的な目標を設定します。

【浮遊塵と落下塵について】

 浮遊塵(ふゆうじん)は、クリーンルーム内で浮遊している微粒子(パーティクル)のことです。

 現場をパーティクルカウンターで測定し、継続的に推移を確認します。客先監査(Audit)があるところでは、客先からデータの提示を要求されることもあります。パーティクルは広範囲に浮遊するため、その現場全体の清浄度が低下しますので、広範囲の製品品質に影響します。

 落下塵は浮遊せず落下する微粒子です。

 こちらは、現場の所々にサンプル捕集場所を設置します。場所によってデータにばらつきが生じるため、ばらつきが大きい場合は、その付近に発生源があるケースが多いようです。

 浮遊塵と落下塵は異なるものとの考えがありますが、境界の線引きはしにくいでしょう。環境改善としては、攻める方法が違います。半導体製造や水晶、表示体など高い清浄度管理が必要な分野では、この2つの物差しで現場環境を管理しているところが多いようです。

 落下塵の把握方法は様々ありますが、半導体製造の前工程(クリーンルーム)では、綺麗なWF(ウエハー)を必要な箇所に24時間放置する方法をとります。WFを回収し、そのまま専用の測定機を使い、微粒子数や大きさが測定や分析もできます。WFの管理や費用が発生するので、後工程や清浄度のあまり高くない現場ではWFに変わるもの、例えばクリーンマット(粘着マット)などを活用するなど、様々な工夫を行い、評価している企業があります。

 目標設定は優先順位をつけ、改善効果の大きいものから取り組みます。成果も見えるようにしましょう。途中の工程で不良、廃棄品が発生したり、やり直し、手直しが必要になるとその分、追加補填はじめ、加工の人工数、電気、ガス、薬品など多くの項目が二重に発生します。これによって利益の減少、納期遅れにも繋がります。これらは利益の減少、客先への納期確保ができない信頼性の問題など経営面にも繋がり、取り引きが減ってしまうかも知れません。

【フィードバックの効果】

 これらのクリーン化活動で得られた効果や成果は、従業員にきちんとフィードバックすることが重要です。

 フィードバックは、それまでの活動のまとめ、お礼と感謝、次の目標へのスムーズな橋渡しのほか、褒めることでの士気を継続させる機会でもあります。単にトップダウンの場ではないのです。成果、効果を管理職だけが共有していても、活動した現場や社員にフィードバックしないまま次の目標を提示してしまっては、現場にしてみると今期の目標、半期の目標、四半期ごとの目標と次から次へと降ってきたらどうでしょう。「今までやってきたことはどうなったの?成果があったの?」とい...

う疑問が出てきます。そして士気が低下します。「活動の成果がこのように出ました。ありがとうございます。ついては次の目標はこのようにしたい」とお願いすれば、成果を納得して、次のテーマにも快く取り組んでくれるでしょう。つまり、褒めることと同じです。そして感謝の気持ちを表すことです。そうすることで、ますます社内がまとまり、目標に向かってベクトルも合ってきます。小さなこと、ちょっとしたことですが、情報共有が重要です。

 経営者や管理監督者は社員、部下に指示、命令することは得意ですが、褒めること、頭を下げることは苦手です。この小さなことの積み重ねが、相互の意思疎通の一歩かも知れません。会社と社員の血の通った・・・・などという表現もありますが、案外こんなことを指しているのかも知れません。

 次回に続きます。

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