クリーン化4原則-3 クリーン化について(その28)

 

 連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べましたが、前回からクリーン化4原則について個別に解説しています。今回は、クリーン化4原則「持ち込まない」の続きとなります。

 

図1. クリーン化4原則 

 

1. ゴミを持ち込まない

 【クリーンルームに私物を持ち込まない】

 半導体などの前工程では厳しいルールがありますが、その他のところでは私物の持ち込みを散見します。例えば、筆入れ、筆記具など個人のもの。発塵(はつじん)しやすいものがあります。

 技術や品質部門の方でも、理解されていないと自分の手帳やノック式のボールペン、シャープペンシルなどの持ち込みがあります。これらは日常的にクリーンルームの外で使うので、様々な汚れがついています。ものによっては自宅に持ち帰るものもあるでしょう。素手は色々なところに触れるので非常に汚れています。素手で扱うと塩分や皮膚の剥(は)がれも付着します。それらがドアの取手や作業中の製品、作業用の手袋などにも付着するので、治工具への転写や他の人にも影響します。さらに製品にも影響します。

 人から出る汚れとしてナトリウムやカリウム、カルシウム、塩素、硫黄などがあります。微細な製品製造では、品質に影響するので、前工程(クリーンルーム)では特に管理が厳しいのです。

 個人の携帯電話などは持ち込み禁止になっているところが多いと思います。携帯電話は設備の誤動作の原因になるともいわれています。飛行機の機内で携帯電話の電源を切ることと同じです。やむを得ず持ち込むものは、持ち込み前にアルコールなどでクリーニングします。

 

 【喫煙後はうがいをする】

 タバコを吸った後は、呼気に含まれた煙の粒子が吐き出されます。タバコの煙の粒子密度が高いと白、あるいは紫色に見えます。これは紫煙といいます。これが体に良くないのです。これを周囲の人が吸ってしまうことを受動喫煙といい、クリーンルームに入ってもその粒子が長時間吐き出されます。その多くは製品側に向かって出てくるので、製品品質に影響しないかとの心配があります。

 前工程で使用しているマスク付きフードは、細かな粒子も捕集するよう作られているので、基本的には問題ないと思いますが、フードと顔面とに隙間があるなど着用方法が悪いと漏れ出る心配があります。そこでタバコを吸ったらうがいをして、クリーンルーム内に吐き出す量を少しでも減らすという考え方が必要になります。“タバコを吸ったらうがいをする”がルールになっているところもあります。

 喫煙所の近くにうがいができる場所を設けているところがあります。ルールがあっても、実施しやすいかどうかを考えましょう。管理職の方が現場に入る時「一服してから現場に入ろう」ではなく「現場巡回後、クリーンルームから出てきたら喫煙しよう」としたいものです。喫煙室と一般の休憩室は仕切っておくことも必要です。

 

 こんな事例があります。

 クリーン化教育の受講者の話です。「私は他社の半導体製造の会社から移ってきました。その会社の面接試験であなたはタバコを吸いますか?」と聞かれたそうです。それが採用の条件かどうかは分かりませんが、その企業も意識はされていると感じました。

 また、九州のある会社に行った際、数人が丸くなりタバコを吸っている様子を見掛けました。タバコを吸う場合は喫煙室を設置するか、外で吸うようにとアドバイスしました。暫(しばら)くしてその会社を訪問したところ、廊下に構内履きが2足ありました。そのことを役員に聞いたところ「あれ以来、外でタバコを吸うように変更したんです。今二人が喫煙しています」といわれました。

 こんな例もあります。

 会社の健康管理室の方から聞いた話ですが、社員の喫煙者を減らそうと考えていて、他社はどうか色々調べたそうです。その中の1社を訪問したところ...

、タバコを吸うのは屋外、しかも建物から少し離れたところに喫煙所を設置してありました。たとえ社長であっても、喫煙所でタバコを吸っているというのです。大雨でも、猛吹雪でも、寒くてもそこに行かないとタバコが吸えないのです。おのずと喫煙の回数が減り、タバコを止める人も増えたそうです。すると、家族から社長に「ありがとうございました。おかげでうちの主人もタバコを止めました」という手紙が複数届いたということです。これはクリーン化と健康面へのプラス効果です。屋外で喫煙するところはよく見掛けます。室内の喫煙所は、壁が黄色くなり、クリーニングも大変です。

 クリーンルームに限らず、汚れの最大の発生源は人であることを忘れないで下さい。

 

 次回は、クリーン化4原則の“発生させない”です。

◆関連解説『環境マネジメント』

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