類似-2 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その101)

 

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」について解説していますが今回は、前回に引き続き「類似」について考えてみたいと思います。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

 

1. 島精機会長・島氏の事例からみる2つの示唆

 前回、例として挙げた島精機製作所(和歌山県)会長・島正博氏が行った、2つのアナロジーによるイノベーション発想は、実はそれぞれ全く逆の方向から発想されたものです。

 印刷の3原色を利用した例は「コンピューターを利用して複雑な柄出しの方法を考えなければならない」と、悶々(もんもん)としていた時に、その解決策として思い付いたものです。すなわち『課題』が先にありきの例です。一方で、手袋の一体編みからセーターの一体編み機を思いついたのは、一体編み機で作られた手袋を見て、それがセーターと類似していたため、セーターの一体編み機を思い付くという『解決策』が先にあったものです。

 ここから、両者の「類似性」からイノベーションを発想する方法には、上記2つの方向性があることになります。今回は、これを解説します。

 

2. 『課題』先にありきのイノベーション発想

 まず一つ目の『課題』先にありきの発想ですが、今認識している課題の解決法や類似の課題が解決された事例を、世の中に広く求めるというものです。以下に示す3ステップで考えるのがよいと思います。

(1) 課題を明確にする

 最初にすべきことは、自分が直面している課題を明確にすることです。

 ここで課題は、現状で直面している問題(Pain)と実現できればいいもの(Gain)の2つを意味しています。Painの例では、漠然と不安に思っているようなことがあれば、またGainの例では「もっと」と思っているのであれば「何がどういう状態になっていたらよいか」を明らかにすることです。

(2) 課題を強く認識する

 次にその課題を強く認識することです。先に述べた島会長が色の三原色に着想を得た例では、同氏が「悶々」と悩んでいた事実が、イノベーションにつながりました。課題を強く認識するということは、心の作用ですので、なかなか直接的に自分でそうしようと思っても、できないものです。そのために「何かどのような状態になっていたらよいか」について思いを巡らせ、そのような状況をありありと想像し、それを反芻(はんすう)する場に、常に身を置くことではないかと思います。

(3) 問題の解決策を広く世の中に求める

 課題を明確にし、それを強く認識すると、どうしてもそれの解決策を深く考えるという...

方向に行ってしまいがちです。しかし、それも大事ですが、一見関係のない分野を含め、世の中を広く見渡すという活動を、日ごろから習慣付けるということが求められるように思えます。

 それにはまず、人間関係を多様にする必要があります。社内では通常、あまり付き合いのないような人とも接点を持ち、社外では、多数の顧客や仕入れ先など関係先とのコミュニケーションを増やしましょう。また、仕事以外でも多様なバックグラウンドや特徴を持つ人たちとも広く付き合うといった行動を意識し、実行する必要があると思います。

 

 次回に続きます。

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