【JIT(ジャストインタイム)連載目次】
- 1. リードタイムの短縮は、全体を見ることから
- 2. コストダウンはリードタイム短縮で
- 3. バッチではなく一つずつ取組む
- 4. 押すから引くことに変えて在庫削減
- 5. リードタイムを短縮して武器にする
- 6. 工程の流れを見えるようにする
- 7. 生産情報の整流化でムダ取り
- 8. 工程全体を魚の形で見えるようにする
- 9. リードタイム短縮はムダ取りから始める
1. JIT:問題解決の方程式を求めることが多い
工場内に問題が数多くあり、何とか一気に解決したいということで問い合わせがあります。しかもその問題を一発で解決するような手法や方程式はないか、と尋ねられることが増えてきました。経済が一気に変化して、その変化に追従できなくなったことからくる正直な反応なのでしょう。
お客様において問題が山積しており、すぐに何とかしたいという気持ちは理解できます。階段のステップのように、一段一段問題を解決する手法や方程式があれば本当に便利です。手順通りに進めていけば、非常に簡単に問題解決ができるようなものを手に入れたいのは人情です。今それがあればそのやり方は世界中から注目されているはずです。でもその様な記事やニュースはインターネットにも出てきませんし、噂にもなっていません。ということは、そのような上手い話はないということでしょう。
今まで色々とやってきた結果において、そのような魔法の手法や方程式はないというのが現在での結論になります。将来的にもそのような手法や方程式、ツールなどは出てこないような気がします。ほとんどの問題の根っ子は、目に見える問題ではなく、目に見えないことの方が断然多くあるからです。それよりも今できることを、確実に一つずつ改善を進めていった方が良いでしょう。
その方が結局は早く企業体質を変えていき、生き残ることができる可能性が高いと思います。カンフル注射のように、会社全体を良くするような特効薬は見当たりません。急がば回れのように、あえて時間が掛かるような地道な教育や訓練がやはり王道だと思います。富士山が高いのは、裾野が広いからというのと同じものです。
今は急激な市場環境の変化で追従できなくなって、今すぐにでも対策を取りたい気持ちは焦りとなってしまいがちです。それは絶対に避けなければなりません。一度このサイクルに落ち込むと、泥沼のように落ち込んでいくだけです。
2. JIT:玉ネギの皮を一枚一枚剥いでいくが如く
一体どのようにしていけば良いかですが、解決のヒントを出して見ましょう。問題を一石二鳥や三鳥のように、一気にバッチ作業のように片付けることは上手くいかないものです。何故ならば変化が速くなってきて、色々と問題が発生し、さらに解決しないままで複雑化した問題が増えてきているからだと思います。それには絡んだ糸を解すように、ゆっくりと気持ちを構えることが大事です。
最初から焦ってしまうと問題の本質さえ見逃してしまうことになりがちです。最初からバッチ作業でやるのではなく、手間隙が掛かるかもしれませんが1個1個片付けていくことです。つまり大きな問題も少しずつ表面から、いわば玉ネギの皮を一枚一枚剥していくような感じです。相手は玉ネギですから、時には目に沁みて涙が出ることもありますが、諦めてはなりません。ほぼ核心に迫る頃には、玉ネギも随分と小さくなり、ラッキョウのように小さくなってきます。ここまで来ると問題の根っ子は見えて来ます。
その段階になれば、あとは自分が問題の主の責任者(他責ではなく、自責にします)になり、前後工程の関係者の人たちと腹を割って話を進めていきます。問題の根っ子は、この人間関係のまずさによるものであり、ほぼ9割がこの種の問題に尽きるのがコンサルタントでの体験知です。人間関係がまずいから、はっきり本当のことが言えないので、嘘をついたり誤魔化してしまったりして、本質を確実に伝えることができなくなるようです。ですからなかなか問題解決ができなくなっているのだと思います。
逆に人間関係が良いと、本当のことが素直にしかもすぐに伝えることができるようになります。こうなれば問題解決の道もスムースになってきます。今ある問題も少しずつ解決しながら、その職場の人間関係も良くして風通しを良くしておくことです。風土を変えるというのは大げさですが、雰囲気を良くして行くというのは取組むことができると思います。まずは一人でもできることから始めましょう。始まりはいつも一人です。
3. JIT:問題解決のステップは自分の力でコツコツと!
先ほどまで述べてきたことを図式にしてみますと良く分かるかと思います。問題を確実に解決していくスタイルは、まるで階段を同じ間隔でステップアップするようなものです。理想的にはこのようにやりたいものですが、現実にはこのように上手く行くことはありません。またその手法や方程式もないのが普通です。それならばどうするかですが、自分で見つけることなのです。なんだ、そんなものかと思われるかも知れませんが、回りまわって見るとそんなものなのです。青い鳥はいつも身近にいます。
条件が全て揃ったら始めるという完璧主義では前に行くことはできません。なぜなら完璧なことはまずないからです。ですからその踏み出す条件は、大体6割の可能性があればよしとします。そして、やりながら軌道修正を何度も繰り返していく中で、自分なりのやり方を見つけていくのです。条件が全て揃わないと踏み出せないのは、言い訳か勇気がない、自信がないなどか...
お尋ねしますが、皆さんは車を運転する時に、ガソリンをいつも出発前に満タンにしていますか?誰もそんなことはしません。僅かでもガソリンがあればスタートさせているはずです。普段はそんなものですが、いざ問題解決の場面となると、そのような言い逃れの材料を見つけることに必死になっているだけのことです。深呼吸をして考え方を少し変えてみればよいのです。
まずやろうとする少しの勇気を持って、問題に正面から立ち向かうことです。そこから可能性が高いものから実施していきます。当然ダメなこともありますが、そこから逃げないで、また別な可能性を探って行きます。何度も何度もやっているうちに、解決策が自分の力で見つけられるようになります。それはその人、その職場、その工場の独自の解決策になります。
イメージ図は、雲の中から晴れ渡った空を何度も雲の中から探していくうちに、青空(解決策)を見出すようなものです。まずやってみる、そして諦めないで何度も繰り返しているうちに、自分たちの独自の手段や方程式が創造できるようになり、ライバル会社にはない本当の強みが出せるようになります。
次回に続きます。
【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載