クリーンルームの中で気流を可視化して確認することを解説してきました。この気流によるゴミの流れはクリーンルームに限ったことではありません。小さなことにも気を付けてみると、身の回りでも同じようなことに気が付くでしょう。そのことで、ゴミの見方も変わってきます。一面ではなく多面的な見方、考え方ができるようになると思います。今回は、身の回りで起きている気流によるゴミの流れを解説します。
【扇風機の事例】
暑い時期、扇風機を使った方も多いでしょう。扇風機という塊を漠然と見るのではなく、そのファンの背面を観察してみましょう。空気が取り込まれる背面側のカバーに埃が付着しているのが確認できると思います。クリーンルーム内で大型の扇風機を使っているところも見かけますが、これも同じです。
背面カバーに紙を当ててみると、紙に埃が転写する場合もあります。また、ファンのカバーに衝撃を与えると、その埃がたくさん舞ってしまいます。扇風機の前面に吹き出すのです。パーティクルカウンターで測定してみると、たくさんカウントされます。
<参考>
このような話をすると、クリーンルーム外にパーティクルカウンターを持ち出す場合もあります。一般の部屋にパーティクルカウンターの持ち出しは避けましょう。普通の会議室などでは、1cf/m(1分間に、約28.3リットル:1辺が1フィートの立方体の体積の空気を吸い込みカウントする-米国連邦規格による測定方法)を0.3μm、あるいは0.5μmの粒径でカウントしてみると、30万個から50万個くらいはあります。このように、日ごろ会社で生活している雰囲気では埃は目に見えにくいですが、ゴミだらけということです。
裏返すと、“ゴミを嫌う製品は、クリーンルームという奇麗な環境で製品製造をしないと、まともな製品が作れない”わけです。このことは、クリーン化の見方、考え方、-なぜクリーン化が必要か-のところで説明したことに繋がります。
クリーンルームの壁についているダンパーも風の通り道です。クリーンルーム側に埃が付着しているのが目視で確認できます。クリーンルームと言えどもゴミがないわけではないので、クリーンルーム内の余剰空気がダンパーを通過、排出される時にダンパーに付着するのです。
清浄度が低いクリーンルーム(乱流方式)は、天井から清浄な空気が供給されますが、まれに天井に吸い込みも併設されている場合があります。その吸い込みを通過する時に埃が付着します。
クリーンルームは何らかの熱(人、照明、設備)があり、上昇気流が起きます。それにより天井付近には浮遊しやすい軽いゴミが滞留します。それが、吸い込みを通過する時に、周囲に付着するのです。そこに着眼した清掃等が行き届かないと、その付着量は多くなり、埃の塊ができます。
停電、長期連休などで空調が停止した時、ドンというような衝撃があれば、その塊が落ちてきます。地震、台風、その他のわずかな振動があっても落下してしまいます。その下に製品等があれば、被ってしまいます。従って、製品や部品などもカバーを付けて保管することが必要です。
現場を守る、製品を守るという観点では、固定観念を排除し、様々な見方、考え方で、先を考え事前に対応することが必要です。それでも予測できないことが起きてしまいますが、その発生量は減らすことができます。問題が起きてから対応するという、後手では被害が拡大するので、その火消しは大変です。そのままにしておいたらどうなるのかを推測し、予防することが大切です。
【ドアの隙間から気流が外部に排出される箇所がある場合】
クリーンルームや、クリーン廊下のドアを開けると、一般の廊下という場合もあります。クリーンルームに設備を搬入、搬出することを考え、設計に含まれているのです。そのドアは、完全に密閉できればよいのですが、わずかに隙間がある場合もあります。使用頻度が多ければ、蝶番の劣化により隙間が発生、拡大します。その隙間を通ってクリーンルームの空気が室外に漏れます。その個所を外側から懐中電灯を使い、斜光で見てみましょう。リークがあれば、びっしりと...
これはクリーンルームだけではなく、会議室などでもドアを通過する風によって同じようなことが起きます。気流の流れる方向を糸で確認し、埃の付き方を観察すると、この気流の場合はどちらに埃が付着するのかということがわかり、それが自分の小さなノウハウになります。
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このような小さな積み重ねが、クリーン化技術という大きな塊になります。一見、感性が優れている、ものの見方が違うと思われる人は、天性ではなく、人に見えないところで努力しています。そのノウハウが説得力に繋がるのです。こういうことを大切にしたいです。米作りにたとえたクリーン化のところの、水面下の部分です。
次回に続きます。