ブロー成形は、容器形状を一工程で成形できるユニークな加工法です。この特徴を生かし、飲料水やシャンプーボトルといった日常品から、燃料タンクやドラム缶など広範囲に容器として利用されています。
ロット数が数百個以上で、総生産数も金型投資が可能な量を確保できるのであれば、大量生産に適した成形法を採用することになります。大量生産する場合のプラスチックの成形法は、製品の形状によってある程度決まります。
同一断面・長尺の製品は押出成形、中空製品はブロー成形、それ以外は射出成形となります。成形加工メーカーは3つの成形法のうち、どれか一つに特化していることが多いようです。製品形状をある程度決めてからでないと、成形パートナーを選ぶことは難しいでしょう。
プラスチック製品を立ち上げる際、成形加工メーカー選びは極めて重要です。よい成形パートナーに巡り合えれば、想定以上によい製品に仕上ります。一方、合わない成形パートナーにしか出会えなければ、要求事項を満足できないだけではなく、トラブルが続出することになるのです。
成形加工メーカーは国内だけでも1万社以上存在し、プラスチックに馴染みのない技術者や商品企画者にとっては、どうやって選べばよいか悩むケースもあると思います。
今回は、このような背景を踏まえて、ブロー成形に的を絞って解説します。
1. ブロー成形とは
ブロー成形は、吹きガラスの原理を応用したプラスチック加工です。ペレット状のプラスチック原料を溶かしてパリソンと呼ばれるチューブ状に押し出し、これを金型で挟み、中空内に空気を吹き込んで膨らませて成形します。中空の製品を作るのに用いられ、自動車部品のほか、化粧品の容器などの分野に利用されています。
プラスチック材料の発展に伴い、ブロー成形技術は急速に進歩し、量産に適する生産技術や成形品に付加価値を与える技術が開発されてきました。
2. ブロー成形の種類と特徴
ブロー成形は熱可塑性樹脂に対して適用され、延伸ブロー法とダイレクトブロー法に分類され、ダイレクトブロー法には、パリソンを冷却しないうちに中空成形する直接法と、既成のチューブを再び加熱・軟化させ金型内で中空成形する間接法があります。
(1) 延伸ブロー法:射出ブロー成形
延伸ブロー法は、射出成形でパリソンを成形した後、ブロー用金型に移して空気を吹き込むことでボトル状に成形する方法です。ダイレクトブロー法に比べ、寸法精度が高く品質や量産性に優れた成形方法です。ダイレクトブロー法では、パリソンを挟んだ時に生じた不要な部分はバリ(ロス材)として除去しますが延伸ブロー法はそれが不要です。
(2) ダイレクトブロー法:押出ブロー成形
押出ブロー成形とは、可塑化材料を押出したパリソンが冷却しないうちに直接空気を吹き込むホットパリソン方式で、ダイレクトブロー法と言われます。押出機で加熱し柔らかく温調された樹脂を金型上部から底の有る試験管のようなチューブ形状に押し出します。柔らかい状態のパリソンを金型で挟んで内部に空気を吹き込み冷却後、金型を開いて成形品を取り出します。
3. ブロー成形のメリット、デメリット
【メリット】
ブロー成形のメリットは、金型製作費用が射出成型と比べると安価であること、製品が軽量であること、そしてハイスピードで生産が可能なことです。
【デメリット】
ブロー成形のデメリットは、小ロット生産には不向きで、大量生産型の加工方法で設備が大掛かりとなること。薄肉の成型が可能だが、肉厚の精度が出にくいこと。形状が複雑に出来ないことです。
4. ブロー成形のこれから
自動車の車内を見回すと多くのプラスチックが使われています。内装・外装部品の他に各種の機能部品にも活用されております。それでも自動車へのプラスチックの本格採用はまだ30-40年ほどの歴史です。プラスチックの成形加工法にも多くの方法が採用されています。プラスチックは加工が容易で軽いという特徴がある一方で、耐熱性が低く環境劣化も懸念されるなど、適切な使用法も求められます。この分野でブロー成形の技術革新でこれから自動車用途に道が開けるでしょうか。
又、容器に対する海外と日本企業における品質基準の差異については、海外では、環境配慮型の材料であるかといった価値が評価される一方、国内ではたとえ同材料の製品であっても不採用となるなど、まだ日本品質が求められてしまう傾向があるため、SDGsを視野に入れた評価基準がこれから実現すれば、ブロー成型のこれからは明るい未来があるでしょう。