電子機器の多くには、マイコンが用いられていますが、マイコンは、それらの機器の内部で部品として何をしているのでしょうか。
マイコンはそれらの機器の動作の要となる、ハードウェアへの命令・制御を行っています。ボタンやキーからの入力を受け取り、設定・設計されたプログラムにもとづいて周辺回路を制御しています。
マイコンはCPUとメモリ、周辺機能などで構成されていますので、人間に例えると、CPUが思考、メモリが記憶、周辺機能が視覚などの感覚と手足を動かす神経と言えるのではないでしょうか。マイコンは単一のLSIを示す名称ですが、1980年ころにはそのLSIをMPU:Micro Processing Unitと呼びマイコンとは呼びませんでした。
しかし、マイコンという用語は存在していました。マイクロプロセッサを利用した個人用PCを指してマイクロコンピュータ:マイコンと呼んでいました。
やがて各家庭に、マイクロコンピュータが普及し始めると個人用小型コンピュータはパソコンと呼ばれるようになり、パソコンのことをマイコンと言うことはなくなりました。
今回は、このような背景を踏まえて、MPUの概要を解説します。
1. MPUとは
コンピュータの基本的な演算処理を実行する半導体チップのことが、マイクロプロセッサですが、コンピュータの心臓部分にあたりMPUと略されます。またマイクロプロセッサは、CPU(中央演算処理装置)のほぼ同義語として扱われています。CPUはコンピュータ上で中心的なプロセッサ、マイクロプロセッサはマイクロチップに実装されたプロセッサを指します。
マイクロプロセッサは、インテルによって開発され、その後、マイクロプロセッサの性能は著しく向上し...
2. MPUの仕組み
MPUはLSIとしてどんな構造になっているかですが、組み込みシステム等で使われるMPUの構造は複雑で多数の配線があり、各機能が密接に関係しています。最近のMPUは信じられないほどたくさんの機能が入っていますし、プロセッサが複数実装されているものも増えています。詳しくは、IT用語辞典を用意して、MPUメーカーのハードウェア・マニュアルをダウンロードするとよいでしょう。そこで使われている用語は各メーカーでまちまちです。メーカー独自の用語も出てきますので注意が必要です。
3. MPUとMCUの違い
MPUとMCU、どちらもCPU(Central Processing Unit)を搭載した演算処理を行う半導体デバイスです。厳密に定義されているわけではありません。
MCU(Micro Controller Unit)は汎用向けで、高機能・高性能向なものがMPU(Micro Processor Unit)です。
MPUは32ビット以上が一般的ですが、MCUは、演算サイズが4ビット、8ビット、16ビット、32ビット幅です。演算速度は数百メガヘルツくらいまでがMCU、それよりも上はMPUです。
RAMやフラッシュメモリを内蔵して、メモリ管理が容易なものがMCUで、外付けメモリを必要として、仮想メモリやキャッシュを使って、メモリ管理を行うものがMPUです。
高速処理が求められるアプリケーションにはMPUが使われますが、一般的なアプリケーションにはMCUが使われます。
4. MPUと自動車の関係とは
自動車業界の革新とはクルマの制御=コンピューティング・アーキテクチャの刷新です。車に用いられている制御は、機能分散型です。ブレーキ制御、エンジン制御等の制御機能ごとにそれぞれ最適化されたECU(電子制御ユニット)が配置されるアーキテクチャです。
ドメインと呼ぶアプリケーションごとにECUを束ね、ECU間の通信や協調制御などを行うドメイン・コントローラを配置するアーキテクチャです。一つのセントラル・ゲートウェイにさまざまなECUが接続した従来のアーキテクチャに代わり、次世代ではECUはアプリ別のドメイン・コントローラに接続・集約されます。これによりドメイン内共通の制御機構はドメイン・コントローラ側に持ち、ECUの機能をよりシンプルにすることで拡張/スケーリングも容易に行えるようになります。これは例えば自動車メーカーにおいて、容易な車種展開が図れるメリットをもたらします。これが市場に登場すれば、ユーザー側にも多くのメリットがあるアーキテクチャです。
自動運転などの実現に向けてはドメインを越えた通信が必要になり、データトラフィック増大による車内ネットワーク帯域幅が不足することが予想され、ドメイン・コントローラは接続された各ECUやセンサから上がってくる情報を処理・集約し、上位のドメイン・コントローラやセントラル・ゲートウェイへ必要最小限のデータのみを伝送することでトラフィックの最適化を図る役割も負う事になります。
高度にハードウェアが共通化され、ソフトウェア互換性を保ちながら性能をスケーラブルに提供するMCU・MPUといったデバイスの存在がますます重要になります。動作周波数1GHzを超えるような高速処理が求められるMPUは、最先端の半導体製造プロセス・テクノロジーを適用しなければなりません。一方、アナログ回路やフラッシュメモリを混載する必要があるMCUは、MPUのように最先端プロセスを用いることができません。今後、MPU、MCUは、16nmプロセスと40nmプロセスと2種類のプロセス・テクノロジーを最適な機能に対応するよう使い分けて製品群をそろえていく必要があり、異なるプロセス・テクノロジーでハードウェア・アーキテクチャを共通化できるのかが課題です。