加工現場がある業界のDX( Digital transformation;デジタルトランスフォーメーション)、デジタル・データ化は効率化につながることが重要な着眼点で、それらは組み合わせが容易で、アイデア次第で画期的な生産性向上にもつながります。
デジタル化は、プラントや製造現場そのものの3Dデータ化と活用、製造時の各種情報のデジタル収集と活用の2面で、保全や製造品質先読み制御などの未来的なプラント管理・製造システムなどが期待されます。今回は、このような背景を踏まえて、TSN(Time-sensitive Networking)の概要を解説します。
ネットワーク技術のTSN(Time-sensitive Networking)が産業用ネットワークとITのためにスマートマニュファクチャリングに変革を起こすのでしょうか。
Industry 4.0の時代において競争力を維持するためには、マニュファクチャが単にデジタルテクノロジーを採用し、孤立したオートメーションを展開するだけでは機能しません。このデジタル化の新しい波の原動力を理解し、今後の産業オートメーションがどのように変化するかを理解し、将来の可能性を受け入れることにかかっています。
TSNにより、イーサネットネットワーク内のデータストリームの優先順位付けと制御が可能になります。システムのリアルタイム機能を保証するため、時間同期、低遅延、帯域保証など、アプリケーションの個別の要件を考慮し、ネットワーク内のデータトラフィックが増加しても、アプリケーションが他のアプリケーションの通信を干渉せず、他のアプリケーションによって干渉されることもありません。
1. TSNとは
Time-Sensitive Networkingとは、イーサネットネットワークのリアルタイム特性を向上させるための一連の規格です。IEEE 802.1標準化組織のTSNタスクグループで定義されている複数の個別規格で構成されています。TSNはスタンドアロンの通信プロトコルではありませんので、さまざまなプロトコルで使用できる機能を定義しています。
TSNは、標準Ethernet技術では不可能であったIEEE Ethernetベースのデータ通信に、時間の同期性を保証したリアルタイム性を担保できるネットワーク規格です。IoT化が進んだ産業用のネットワークとして標準化が進められており、遅延が許容される情報系ネットワークと遅延に対しての制約が厳しい産業用ネットワークの相互運用が可能となります。このことで異種ネットワークを同一配線で混在させることが可能となり、生産現場のFAシステムの階層を意識することなく、シームレスに連携し、さまざまなアプリケーションの活用拡大が可能となります。
2. TSNの特徴
データ集中型アプリケーションとリアルタイム性が重要なアプリケーションのデータ通信は、相互干渉を防ぐために個別ネットワークに実装されています。しかし、ITとOTの統合を強化することが必要で、そのためこれまで個別だったシステムを統合する必要があり、TSNは、作業プロセスの柔軟化とデジタル化に貢献します。リアルタイム性が重要なデータとデータ集中型アプリケーション(ビデオストリームなど)を、互いに干渉することなく、共有イーサネットケーブル経由で実現することができるのです。
3. TSNとネットワーク
TSNは、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格の為、さまざまな規格が乱立する産業用ネットワークを1つにまとめられます。
TSNは、標準的なイーサネットネットワークを介してデータ伝送を可能にするための一連の規格を定義しています。この追加された機能層は、イーサネットテクノロジーを将来にわたって保証し、膨大な数の新しいアプリケーションでの使用を拡張します。単一の産業環境で重要なアプリケーションデータと重要でないアプリケーションデータを同時に処理できる統合され相互運用可能なネットワークを実現するのです。
TSNの概念は、ツールボックスに似ています。どのツールがアプリケーションに適しているかを決定するには、各ソリューションにより利用可能なツールと各ツールの仕組みを理解する必要があります。
アプリケーション要件により、ツールを様々に組み合わせて、特定の目的に合わせてインフラストラクチャを構築できます。例えば、TSN プロファイルの1つは、ツールボックスから選択される規格と、それらが産業オートメーションのアプリでどのように使用できるかに関するガイドラインを提供することを目的としています。
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TSNは規格そのものがまだ固まっているわけでありません。TSNで注意が必要なことは国際標準化の中でもまだ規格化が進んでいる最中ということです。
TSNは国際標準化で、一定レベルの規定があるものの、最終定義がされているわけではないということです。現状の規格は、自由度のある項目が設定されていて、通信推進団体・企業などが優先度などを決められる幅があり、同じTSN対応でも中身が異なるということがまだあり得ます。プロトコルを複数、安全に使うためにはこれらのすり合わせなどが必要となります。TSNを採用することを考えた場合は、規格の動向には注意して下さい。
TSNはイーサネット上で機械システム全体のデバイスを同期する唯一実行可能な経路としてどのデバイスでも1ミリ秒以下の精度で正確に動作できるようになりました。国際標準化で最終定義がされることで、駆動制御、視覚システム、ロボット制御などの制御を要するアプリケーションに、そして産業のインターネット化に貢献するでしょう。