金属の破損・不具合の原因として腐食があります。腐食は大気中の酸素や水分、また各種化学物質などによって電気化学的に発生し、腐食によって金属は薄肉化や割れなどの問題を引き起こします。腐食反応は材料や環境によって様々に変化します。
腐食の様子は見た目で分かる時と分かりにくい時があります。そして腐食は少しずつ進行していき、やがて大きな部分損傷が発生します。また腐食を防ぐめっきや塗装などの防食技術も大きな役割を果たしています。
金属腐食は身近な問題ですが、材料と環境、設計などの要因が複雑に関連しているため、腐食原因を調べ、適切な対策をとることは容易ではありません。
金属製品が時間の経過とともに腐食して元の安定な化合物に戻るのは全く自然な現象です。しかし、突発的な損傷を避けて高い信頼性を発揮させるためには、設計、製造およびメンテナンスにおいて、腐食予防策を確立しなければなりません。
今回は、このような背景を踏まえて、鉄錆の概要を解説します。
1.鉄錆とは
鉄錆と言ってまず思い浮かぶのが赤さびですが、これを考えるには、イオンの存在が重要になってきます。鉄原子が手を取り合って並んでいるところに水がやってきて、鉄原子のもっている電子が水に奪われてしまうのです。こうして鉄原子が電子を失うと鉄イオン(プラスイオン)になります。
鉄から電子を奪った水も変化します。水は鉄から電子を奪ったせいで、マイナスを持つ水酸化物イオンができます。この後さらに鉄は電子を失い、Fe(OH)₃となり、最終的にここから...