全274ページにわたる「ものづくり白書:2022年度版」の各章を5分の内容に要約して解説します。
本連載では、次のような悩みを解決できます。
- 「ものづくり白書を読みたいけど、膨大過ぎて時間がない」
- 「国内産業の状況や技術の動向を知りたい」
- 「カーボンニュートラル、人権尊重、DX等に関する事例を知りたい」
本連載は、このような悩みを解決できるように、「ものづくり白書:2022年度版」をまとめたものです。
1.ものづくり白書とは
ものづくり白書は、政府が作成する国内産業の状況や技術の動向をまとめた資料です。2022年度版は、2022年5月に経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で、取りまとめた資料です。ページ数は、274ページになります。この連載では、各章ごとに重要なポイントを抜粋して、5分で読める内容で解説します。今回は、第1部第3章です。
2.「第3章 資金調達」の内容
第3章の「資金調達」では、企業の資金繰りの動向や用途について説明しています。今回はその中でも重要な資金繰りと用途についご説明いたします。
3.企業の資金繰りの動向について
資金繰り判断DI(資金繰りの判断の、「楽である」の割合-「悪くなる」の割合の値)の推移について説明いたします。
【ポイント】
- 資金繰りの改善の傾向が続いていたが、2022年第1四半期は7四半期ぶりに悪化した
- 設備投資額は、2020年前半に大きく落ち込んだ後、足下では回復傾向にある
- 今後3年間の国内外の設備投資も、増加する見込み
設備投資は、回復傾向が見られるものの、2018年、2019年の水準には届いていないという結果でした。(図300-1、図5、6)
4.主に中小企業を対象とした資金調達動向について
主に中小企業を対象とした資金調達動向に関する調査によれば、次のような傾向が見られました。
【ポイント】
- 5割以上の企業が直近1年間で資金調達をしている
- 設備資金の用途は「土地・建物・機械・ 備品・車両の購入」や「修繕資金」の割合が大きい
- 運転資金の用途は「手元資金の確保」や「材料や商品仕入れ」 の割合が大きい
設備資金の用途は「土地・建物・機械・ 備品・車両の購入」が多く、運転資金としては、「手元資金の確保」の多かったです。また4社に1社が、「設備資金は調達していない」と回答しており、資金繰りの判断が、回復途上であることがうかがえます。(図300-4、5、6)
5.事業再構築補助金の活用事例
ものづくり白書には、多くの事例が記載されています。その中で今回は、「工業炉メーカーのコーティング受託加工への進出事例」をご紹介します。
【紹介事例】
本事例の工業炉メーカーは、各種工業炉の受託設計・製造を手掛けており、フルオーダーメイド型の確固たる地位を築いてきました。しなしながら、新型コロナウイルス感染症による感染拡大は業績に大きな影響を及ぼし、売上が5割以上も落ち込みました。特に自動車業界の大幅な減産の影響は大きく、今後のEVシフトによる部品点数の削減も、大きな経営課題となっていました。そのため同社は、産業構造の転換を見据えて半導体へのシフトが必要と考えました。
そのような背景の中、半導体製造装置メーカーから、装置部品への高品質の窒化チタンコーティングに関する相談を持ち掛けられました。同社はテス...
6.まとめ
2021年の設備投資については、増加傾向が見られます。また向こう3年間の投資額も、増加見通しの企業が増えています。背景としては社会情勢や産業構造の変化への対応などが考えられます。
【参考文献】
経済産業省「令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531002/20220531002.html
閲覧日:2022年6月5日