【この連載の前回:クリーン化について(その94)クリーン資材へのリンク】
今回は、クリーン資材の選定や、不具合事例を紹介します。
1.クリーン資材の選定について
クリーン資材の選定、導入はカタログだけを見て購入したり、営業マンの話だけで決めてしまうことは避けましょう。まず、サンプルをもらう。また高額のもの(防塵衣など)で、もらうことができないものは、借用することです。そして、実際に自分たちで評価し、納得して採用しましょう。営業マンの話も、参考になることが多いので、判断の参考にしたり、知識が増えるので良く聞いてみましょう。
【不具合事例】
例①:クリーンマットの不具合事例
・安価なものを購入したところ、逆にコストが上昇した。(見えないコスト発生)
生産管理や経理部門が、安価なクリーンマットを見つけました。それを現場に購入するよう指示したのですが、購入費用が逆に上がってしまったのです。クリーンマットはビニールに粘着物が塗布されています。この問題の製品は、ビニールを極限まで薄くし、コスト低減を図ったものでした。
剥ぐ時、ビニールが薄すぎてなかなか剥げない。手袋を脱いで、手で直に剥そうとしても、金属ピンセットを使ってみても剥せなかった。最後にはカッターナイフを隙間に入れ少しずつ剥そうとした。ところが、ビニールが薄すぎて、途中で千切れてしまう。
その様なことをしているうち、2枚一度に剥いでしまうなど、余計に剥いで捨ててしまっていた。また、作業者にしてみると、作業の合間に短時間にできればよいのに、かなりの時間がとられてしまい、作業、生産に影響が出てしまう。このように見えないところでコストが上昇していたのです。
机上の計算だけで採用すると、このようなことになるかも知れません。自分たちで使って、評価して、納得してから購入するということはこういうことです。
・ 強粘度品を購入したところ、マットを踏まなくなった。
クリーンマットの粘度は、強粘度と弱粘度、または強粘度、中粘度、弱粘度と言う風に、2種類か3種類がある。強粘度はすべてのゴミを取ってくれるだろうと思い、購入したところがあった。その外注さんにクリーン化の診断に行った時、クリーンマットが非常に奇麗だったので色々聞いてみた。結果的には、粘着力が強すぎて、足を取られる、靴を取られる、そして転びそうになる。
また、エアシャワー前では、転倒しそうになり、エアシャワーのドアに激突した例もあったとのこと。また、その上を台車が通った時、車輪に巻き付いて取れなくなった。荷物を下ろし、台車をひっくり返して、何人かでやっと取り除いたということもあった。その様な嫌な思いをしたので、クリーンマットを割けて通るようになったというのです。何のためのクリーンマットか、と言うことになってしまいます。
・ マットの粘着物が、靴底に付着、靴底、床を汚した。
クリーンマットに塗布してある粘着物が、靴底に付着する。それで歩くと床の汚れが靴底に付着し真っ黒に汚れる。さらに床も汚れるという例があった。この原因は、粘着物が均一に塗られていなかった。その厚い部分が靴底に付いてきたのです。クリーンマットは、東南アジアでも作っているところは多い。しかし評価されていないものもあり、それを輸入している場合もある。
新型コロナウイルスが日本に入って来た時、マスクが極端に不足した。私も仕方なく、海外のものを箱入りで購入した。マスクの形はそっくりだったが、実際に使おうとしたら、紐が本体にきちんと圧着されていなかった。その箱のものはほとんど未使用のまま捨てることになってしまった経験がある。これは事前に評価ができないので、その1箱で済んだが、同じような経験のある方もいるのではないだろうか。
・ マットが破れ、剥がせない。床が剥がれる。
穴あきではない床(ビニールタイル)に直に貼っているところがあった。そこでは、クリーン化活動を始めたばかりだった。クリーンマットは、15枚~60枚くらい重ねてある。これを積層と言う。その現場では、15枚よりも60枚の方が交換の手間が少なくて済むと思い、60枚積層のものを購入した。クリーン化活動を始めた頃は、午前、午後各1回ずつ剥していた。段々奇麗になってきて、1日1回、そして3日に1回剥せばよいという風になった。最後の1枚は、ビニールの両面に粘着物が付いている。その上を歩く人の数は変わらないが、剥す回数が伸びたので、その上を歩く人の数は増えるわけだ。そして最後の1枚を剥す時、密着しすぎて剥せなくなった。それを強引に剥したところ、ビニールタイルも一緒に剝れ、セメントの粉のようなものまで剝れて来たというのです。
例② :営業マンの推奨品失敗例(クリーンワイパー)
クリーン化担当になって、初めて営業の方と話をすることになった時のことです。営業の方の話では、当社のワイパーは、品質、価格とも他社より優れていると色々な説明がありました。当時は、それを鵜呑みにして大量に購入してしまったのです。
ところがそのワイパーは、品質評価がされていないものでした。しかも他社の2~3倍の価格だったのです。後でわかったことですが、その会社は東南アジアから調達し、それをそのまま売りさばいていたというのです。
この事例ですが、品質はどのように良いのか。どのような評価があるのか、そしてそれらの具体的なデータを見せてもらうなどの要求をすべき...
購入の決定は、時間をかけて、サンプルを使用してみたり、品質、価格を確認してから採用することです。
例③ :クリーンワイパーの価格
あるメーカーにワイパーを注文しました。
そのメーカーは、メーカーから直送なので安価と判断したのです。ところが、同じ製品を代理店経由で購入したら、直接購入するよりも安価でした。その理由は、自分たちのところで使う量は少ない。従って大量に購入しない。僅かな量を製造元に注文しても、発想のための手配に手間がかかりすぎて、安価にはできない。でも、代理店ではたくさん購入して、それを注文が来たA社、B社へと振り分ける。つまり薄利多売ができるので、購入側も安価に手に入れることができるのです。
このように購入ルートも確認して、購入費用の節約に繋げましょう。それは、最終的には、自社製品の価格や利益にも影響してくるので、僅かなことでも配慮が必要です。SDGsと言う観点でも、色々な着眼点が出てきます。
次回に続きます。