【この連載の前回:「改善ファシリテーターの極意とは」はこちら】
◆学習法を知るだけで学習効果が30%UP!
大人のあなたはどのような学習方法をとっていますか?学習意識をちょっと変えるだけで、脳の能力を最大限に引き出し、学習効果をさらに高めることができるのです。すべてのビジネスパーソンに役に立つ大人の学習法 ! VUCA(注1)の時代に必要な知識と技能も身につきます。
(注1)VUCA(ブーカ):「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」
1.大人の学習法 ①学習時は目的を限定しないでください
あなたは学習をするとき目的を限定していませんか?
たとえば
- 定期試験や資格試験に合格することで、『周囲から秀でていることを認められたい。』
- 第三者からの低い評価を避けたい。
- 試験に落ちたくない。
これらは、あらかじめ問題を特定し、これらを回避することで学習モチベーションの高まるタイプです。また、逆に知識や技能を習得し、それを活かしたいというパターンもあります。これは、新しい知識や技能を将来活かしたいという意識が潜在的に隠れている状態です。
前者を目的意識、後者を習得意識と呼び、私たちは、常にこの2つのどちらかを選択しているといわれています。さらには、その意識の選択によって学習の結果が変わることもわかっています。
学びは、社会人でも学生でも日々行っている脳の活動です。何かの特定の知識や技能を高く意識して会得することを『学習』といいます。
実は、習得意識を持つ方が、目的意識を持つ方よりも、30%学習効果があがると言われています。学習の際の意識の持ち方によって、モチベーションの方向にも変化が現れるのです。
2.大人の学習法 ② 脳の能力を最大限に引き出す
ところで、全脳思考(ホールブレイン)という言葉をお聴きになったことはありませんか?これは、マインドマップの生みの親であるトニーブザン氏が提唱した理想的な学習時の『脳のコンディション』のことで、『脳の能力を最大限に引き出す。』という意味です。
私たちの脳は、右脳と左脳に別れており、その部位によって司る機能が異なることが分かっています。
何かの知識や技術を習得したり、知識を修得するには、左右の脳機能をより多く有機的に使いこなすことで、高い学習効果を得ることができます。さらには、何かの知識や技術を修得に失敗しても、自ら修正して立ち直ることができる力、レジリエンス(回復力、打たれ強さ)さえも高めることができます。
このことからも、何かを学ぼうとする場合は「修得・習得」目的を持ち、それらを得ることで『何をしたいのか?』『どうなりたいのか?』と自分自身でイメージしながら学習意識を高めることが大切です。
逆に、周囲からの評価を高める目的意識を持つと、全脳思考どころか左脳へ偏り、脳の機能を満足に発揮することができなくなります。この状態では、固定された自らの能力を『高く見せるだけ』の学習が続き、学習の結果も高まるはずありません。
例えば、電気工学では、ベクトルを学習しますが...
また、ベクトルはNLP(神経言語プログラミング)にも利用できます。『モチベーションとは、高い低いでなく、方向性で決まる。』といった説明がありますが、数学や物理の知識を使ってイメージすることで効率的に理解することができます。このように、日頃から習得意識を持って学習をすることで、高いパフォーマンスを得ることができるのです。
3.組織の学習法『改善ファシリテーション研修』
社内で開催される研修でも、そのコンテンツを選ぶ時には『全脳思考』への配慮が重要です。
なぜなら、より複雑化する業務や問題/課題に対し、柔軟に対応できる人材育成が求められるからです。たとえば、マニュアル通りに業務や問題/課題解決に挑んだり、過去の経験と知識のみで対応していると、予測できない問題や課題に対処することができず、対処療法的な問題解決が職場に根付いてしまいます。
とはいえ、目的意識が全て悪いというわけでもありません。まずは、習得意識を持ってなりたい自分を描き、それに至るまでのステップについては目的意識で計画を立て、描き上げた姿と現状を比較しながら学習を進めます。このように、両方の意識を織り込んだ学習が理想的です。
1つ1つをつなげることで、より多くの知識を加速的に蓄積することができる『全脳思考』学習。問題解決を迫られたときは、限定的な知識よりも、それを超えた知識で挑んだ方が根本的原因を見つけ出しやすくなります。
失敗から立ち直り、新たな課題に気付くという意識も芽生えやすくなり、成長という副産物を生み出します。同じ失敗を繰り返さないことが、組織において生産性も効率性も高めるためには必要です。だから、組織全体に『全脳思考』を展開し、VUCAに備えた人材育てることが急務なのです。