内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その12)

 

「6つのルールと18の書き方」に関し、「6つのルール」および「18の書き方」の概要について解説しています。「6つのルールと18の書き方」を以下に示します。

【この連載の前回:内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その11)へのリンク】 

 

 

1.書き方の使い方

「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その10)」と「同(その11)」で、「6つのルールと18の書き方」の概要を解説しました。今回は、「6つのルールと18の書き方」の具体的な使い方の一例を解説します。

 

1.1 ルール1(冒頭に書く)・「書き方1:要点を冒頭に書く」

1.1.1 書き方1について会話で考える

書き方1とは、内容に関する要点(以後、内容の要点)を冒頭に書き、この要点に関する説明(以後、要点の説明)をその後に書くことです。まず、会話を使って書き方1の考え方を解説します。会話を使って解説すると書き方1の考え方が理解しやすくなるからです。

 

面接試験で、2人の受験生(A君とB君)が面接官から次のような質問を受けたとします。〇〇について、△△という考え方があります。あなたは、この考え方に賛成ですか、反対ですか。

 

〈A君の回答〉
〜であり、〜なので、〜ということを考えると、私は、△△という考え方に賛成です。

〈B君の回答〉
私は、△△という考え方に反対です。根拠は、〜、〜です。

 

面接官に、A君の回答は明確に伝わりません。回答の要点(△△という考え方に対して賛成か反対かということ)を回答の最後に話しているからです。これに対して、B君の回答は明確に伝わります。回答の要点(賛成か反対かということ)を回答の冒頭に話しているからです。また、B君の回答は、まず、「反対です」と自分の考え(回答の要点)を言った後にその根拠(要点の説明)を話しています。このことから、自分の考え(回答)が面接官に明確に伝わります。

 

書き方1は、このような考え方に基づく書き方です。

 

1.1.2 書き方1について技術文書で考える

以下のパターンⅠとパターンⅡの書き方を比べてください。

 

【パターンⅠ】
1.〇〇交差点の改良計画の目的
〇〇交差点では、歩行者や自転車と左折車との接触事故が毎年数件発生している。過去には歩行者の死亡事故も発生している。来年3月末.には、〇〇交差点付近に大型ショッピングセンターができることから、〇〇交差点を利用する歩行者や自転車が増えると予想できる。そのため、歩行者や自転車の安全確保のため、〇〇交差点をスクランブル交差点に改良することが今回の〇〇交差点の改良計画の目的である。

【パターンⅡ】
1.〇〇交差点の改良計画の目的
〇〇交差点をスクランブル交差点に改良することが今回の〇〇交差点の改良計画の目的である。〇〇交差点では、歩行者や自転車と左折車との接触事故が毎年数件発生している。過去には歩行者の死亡事故も発生している。来年3月末には、〇〇交差点付近に大型ショッピングセンターができることから、〇〇交差点を利用する歩行者や自転車が増えると予想できる。そのため、歩行者や自転車の安全確保のため〇〇交差点を改良する。

 

パターンⅠとパターンⅡを比べると、パターンⅡの方が内容が明確に伝わります。これは「1.1.1 書き方1...

について会話で考える」で解説した理由と同じです。改良計画の目的が明確に伝わるのは、〇〇交差点の改良計画の目的の要点(アンダーラインの箇所)を、「1.〇〇交差点の改良計画の目的」という項目の冒頭に書き、改良計画の目的の要点の説明をその後に書いているからです。

 

「結論を冒頭に書く」という書き方があります。この書き方も書き方1と同じ考え方です。

次回に続きます。

【参考文献】

森谷仁著、「マンガでわかる技術文書の書き方」、オーム社、令和4年3月25日

 

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