技術系ビジネスリーダーの養成 (その3)

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【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

グローバル・フィールドにおける厳しい「対話」を通じてTBLは養成される

 プログラムの中にもあるが、このTBL養成で重要なのは、必要なビジネス知識を学んでつくった戦略仮説を検証するためにフィールドにでて潜在顧客やパートナー候補とのヒアリングを行うステップである。ヒアリングといっても、一方向的に話しを聞くのではなく、検討している戦略内容を検証・バリューアップするための厳しい「対話」である。この「対話」は技術者養成において非常に効果がある。

社内の「ぬるま湯」と違い、第一線の厳しいビジネス環境で日々仕事をしている相手との交流は緊張感がある。戦略仮説が正しく顧客から高い評価をもらうこともあれば、戦略仮説が間違いであり全否定されることもある。しかし、そこでの成功や失敗はすべて自身を成長させるよい経験となる。顧客との対話の中で、創発的に新しい製品・事業アイデアに気づくこともある。対話を通じて、信頼関係も醸成され、貴重な人脈となり、将来ビジネスが立ち上がったときに協力してくれるアライアンスパートナーにもなるかもしれない。そして顧客や他社の技術者との交流は、自身の技術者としての哲学や信念を相対的に眺めるきっかけにもなり、より深い思慮のもと、より普遍性のある哲学や信念をもつきっかけになるかもしれない。それによって日々の思考・行動もがらりとかわるはずである。これをグローバルまで範囲を広げて行った場合、その多様性による創発的な期待値を考慮すると、コストよりも得られる成果は大きくないだろうか。

しかし、大手製造業にコンサルティングでお邪魔すると未だに社内に閉じこもっている技術者が多いのが現状である。技術者のいる場所は研究所や工場というように顧客のいる場所から離れているケースが多いことも原因としてもちろんある。顧客のところに赴くことを奨励・サポートする仕組みがある企業はまだまだ少ない。技術者にしてみると顧客に会うのはクレームをもらったときくらい、その他顧客の声は営業のレポートで来るくらい。レポートで活字になっているので、微妙なニュアンスがよく分からないといった具合である。その他、そもそも顧客とのアポイントのとりかたもわからないし、顧客との対話といってもやり方がわからない。恥をかきたくない、下手に顧客先で発言したら営業に怒られるのではないか、という心理も働く。それによってますます外にいかなくなる。

社外にいくことは怖いことではない。自身の技術について仮説をもった上で、外にいってみよう。技術開発を何のために行っているのか、という自らの哲学を改めて問えば、それは決して自身の自己満足のためだけにはならないだろう。誰かのための技術のはずである。顧客のため社会のため環境のため、といった自分以外の誰かのためになるはずである。技術者は自分の開発テーマがあるのであれば、その内容を検証し、よりよいものにするために顧客との対話を行うべきである。開発で忙しいというのは理由にならない。顧客との対話は重要であり、そのための時間を全体の1割でも創り出すべきである。

技術者は『試作までつくらないと顧客とは会えないのでは?』と心配するかもしれないが、必ずしもそうではない。顧客は意外と会ってくれるものである。国内顧客も海外顧客も自社の事業に有益な情報を欲しがっている。試作ができておらず、コンセプト段階のものでも、将来、優れた製品が開発されるというのであれば喜んで議論や情報交換したいビジョナリーな企業も世界には多く...

【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

グローバル・フィールドにおける厳しい「対話」を通じてTBLは養成される

 プログラムの中にもあるが、このTBL養成で重要なのは、必要なビジネス知識を学んでつくった戦略仮説を検証するためにフィールドにでて潜在顧客やパートナー候補とのヒアリングを行うステップである。ヒアリングといっても、一方向的に話しを聞くのではなく、検討している戦略内容を検証・バリューアップするための厳しい「対話」である。この「対話」は技術者養成において非常に効果がある。

社内の「ぬるま湯」と違い、第一線の厳しいビジネス環境で日々仕事をしている相手との交流は緊張感がある。戦略仮説が正しく顧客から高い評価をもらうこともあれば、戦略仮説が間違いであり全否定されることもある。しかし、そこでの成功や失敗はすべて自身を成長させるよい経験となる。顧客との対話の中で、創発的に新しい製品・事業アイデアに気づくこともある。対話を通じて、信頼関係も醸成され、貴重な人脈となり、将来ビジネスが立ち上がったときに協力してくれるアライアンスパートナーにもなるかもしれない。そして顧客や他社の技術者との交流は、自身の技術者としての哲学や信念を相対的に眺めるきっかけにもなり、より深い思慮のもと、より普遍性のある哲学や信念をもつきっかけになるかもしれない。それによって日々の思考・行動もがらりとかわるはずである。これをグローバルまで範囲を広げて行った場合、その多様性による創発的な期待値を考慮すると、コストよりも得られる成果は大きくないだろうか。

しかし、大手製造業にコンサルティングでお邪魔すると未だに社内に閉じこもっている技術者が多いのが現状である。技術者のいる場所は研究所や工場というように顧客のいる場所から離れているケースが多いことも原因としてもちろんある。顧客のところに赴くことを奨励・サポートする仕組みがある企業はまだまだ少ない。技術者にしてみると顧客に会うのはクレームをもらったときくらい、その他顧客の声は営業のレポートで来るくらい。レポートで活字になっているので、微妙なニュアンスがよく分からないといった具合である。その他、そもそも顧客とのアポイントのとりかたもわからないし、顧客との対話といってもやり方がわからない。恥をかきたくない、下手に顧客先で発言したら営業に怒られるのではないか、という心理も働く。それによってますます外にいかなくなる。

社外にいくことは怖いことではない。自身の技術について仮説をもった上で、外にいってみよう。技術開発を何のために行っているのか、という自らの哲学を改めて問えば、それは決して自身の自己満足のためだけにはならないだろう。誰かのための技術のはずである。顧客のため社会のため環境のため、といった自分以外の誰かのためになるはずである。技術者は自分の開発テーマがあるのであれば、その内容を検証し、よりよいものにするために顧客との対話を行うべきである。開発で忙しいというのは理由にならない。顧客との対話は重要であり、そのための時間を全体の1割でも創り出すべきである。

技術者は『試作までつくらないと顧客とは会えないのでは?』と心配するかもしれないが、必ずしもそうではない。顧客は意外と会ってくれるものである。国内顧客も海外顧客も自社の事業に有益な情報を欲しがっている。試作ができておらず、コンセプト段階のものでも、将来、優れた製品が開発されるというのであれば喜んで議論や情報交換したいビジョナリーな企業も世界には多くあるのである。顧客に響く提案であれば、開発途中でも二度、三度と交流していくこともでき、将来、製品が量産されたときに真っ先に買ってくれるユーザーにもなるかもしれない。

このようフィールドでの対話を技術者が行うためには会社としてのサポート体制も必要である。出張費、調査費の支給、ヒアリング先のアポイントメント取りサポート、データベース化した過去のヒアリング先情報の提供、公開してはいけない技術・ノウハウの知財部によるチェックサポートなどである。

 日本製造業は競争力があるといわれた「すりあわせ型」製品までシェアを競合にとられ始めている。しかし、そのような製品の開発・生産を支えた『生産技術』などの強みはまだ残っている。その強みがあるうちに海外事業を立ち上げ、そこで収益をあげて、日本にその収益を貫流し、次の技術イノベーションを行うスキーム構築を目指していきたいものである。

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この記事の著者

福島 彰一郎

10年以上に渡る実績をベースに、アジア展開を含め、技術戦略のあらゆる相談に責任を持ってお応えします!

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