成長できる技術者の報告書の書き方、技術的評価だけでなく、必ず経済的評価を記述する

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1. 技術者が成長するためには

 技術者の成長を後押しできるのが技術論文や技術報告書です。例えば、コンサルタントは、クライアントをいかに納得させ報酬を得るかを考えます。企業の技術者は、いかに上司の評価を獲得できるかを考えていると思います。売上高や利益を算出できるテーマは、実際の現場では、予想より非常に少ないものです。最終的には、クライアントや上司へのプレゼンや報告によって評価されてしまいます。

 日常の業務報告が特定の利害関係者だけを対象にするのに対して、今回は不特定多数の読者を対象とした、技術者の論文や報告書の書き方を紹介します。図1に示した報告書の構成は、企業の技術者育成経験、技術士を指導していく過程などで蓄積した報告書作成ノウハウを基に、筆者独自の注力ポイントを付加したものです。企業内論文冊子、学会誌、技術系雑誌、新聞の投稿などで、積極的に試してみてください。そのような機会がない技術者でも、大きなテーマが終了したときに、自身の業務をまとめる癖をつけることです。それによって、成長の動機づけや成果の可視化などに効果的です。また、不本意なキャリアチェンジやジョブチェンジなどを迫られた時などのリスク対応にもなります。

技術力を高める報告書の書き方 

図1 技術力を高める報告書の構成

 

2. 技術力を高める報告書とは

 まず目的については、あまり漠然としていると叶えようがありません。どういう課題を、どのくらい、どうしたいのかできるだけ定量化しましょう。また、その技術の位置づけはどうなっているのか。「トレンド」、「既存技術とのシナジー」、「複合化の可能性」、「システム性」、「否定技術との対比」、「標準技術への発展性」の6つの技術開発判断基準を活用すると説得力を増します。

 概要と成果については、報告者の役割や立場を入れて、お客様のメリットや効果金額以外の特許出願などの成果も記述します。

 次の「手法、制約・要求仕様・技術水準」についてはその言葉通りで、特に説明の必要もないと思われます。実施上の問題点については、箇条書きにするのがよいでしょう。

 目的に次いで、報告書で第二のポイントとなるのが、解決策の記述です。ここでは、いかに報告者自身が工夫をして解決したのか、独創性を発揮したのか、アピールする必要があります。ここでそのテーマの価値の...

1. 技術者が成長するためには

 技術者の成長を後押しできるのが技術論文や技術報告書です。例えば、コンサルタントは、クライアントをいかに納得させ報酬を得るかを考えます。企業の技術者は、いかに上司の評価を獲得できるかを考えていると思います。売上高や利益を算出できるテーマは、実際の現場では、予想より非常に少ないものです。最終的には、クライアントや上司へのプレゼンや報告によって評価されてしまいます。

 日常の業務報告が特定の利害関係者だけを対象にするのに対して、今回は不特定多数の読者を対象とした、技術者の論文や報告書の書き方を紹介します。図1に示した報告書の構成は、企業の技術者育成経験、技術士を指導していく過程などで蓄積した報告書作成ノウハウを基に、筆者独自の注力ポイントを付加したものです。企業内論文冊子、学会誌、技術系雑誌、新聞の投稿などで、積極的に試してみてください。そのような機会がない技術者でも、大きなテーマが終了したときに、自身の業務をまとめる癖をつけることです。それによって、成長の動機づけや成果の可視化などに効果的です。また、不本意なキャリアチェンジやジョブチェンジなどを迫られた時などのリスク対応にもなります。

技術力を高める報告書の書き方 

図1 技術力を高める報告書の構成

 

2. 技術力を高める報告書とは

 まず目的については、あまり漠然としていると叶えようがありません。どういう課題を、どのくらい、どうしたいのかできるだけ定量化しましょう。また、その技術の位置づけはどうなっているのか。「トレンド」、「既存技術とのシナジー」、「複合化の可能性」、「システム性」、「否定技術との対比」、「標準技術への発展性」の6つの技術開発判断基準を活用すると説得力を増します。

 概要と成果については、報告者の役割や立場を入れて、お客様のメリットや効果金額以外の特許出願などの成果も記述します。

 次の「手法、制約・要求仕様・技術水準」についてはその言葉通りで、特に説明の必要もないと思われます。実施上の問題点については、箇条書きにするのがよいでしょう。

 目的に次いで、報告書で第二のポイントとなるのが、解決策の記述です。ここでは、いかに報告者自身が工夫をして解決したのか、独創性を発揮したのか、アピールする必要があります。ここでそのテーマの価値のほとんどが決まってしまいます。

 現時点での評価については、技術的評価だけでなく、必ず経済的評価を記述する癖をつけましょう。もし、競合他社や類似技術がある場合には、ベンチマーク(目標基準)による相対評価を加えると効果的です。

 最後に、将来展望については、報告者の技術トレンドの予測や代替技術がどのレベルまで到達可能かの予測も加えるとよいでしょう。ここをうまくまとめるためには、報告者自身の業務に対するビジョンも問われているのです。

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この記事の著者

粕谷 茂

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