【あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる 連載目次】
1. 30秒で仲間の関係を創るとは
前回のお話では、エンジニアは「内容の説明→Yes.」だと思い込んでいますが、現実は「Yes.→内容の理解」の順序であることを紹介しました。例えば、職場で親しい人は「ちょっと困ったこと」の相談にのってくれまずが(「内容の説明→Yes.」)、親しくない人は「私に言われても…」と「No.」から始まります。また、日ごろの付き合いで時間をかけて人間関係を築かなくても、初対面でもラポールを使えば30秒で仲間の関係を創り出せることを紹介しました。
30秒で仲間の関係を創り出せるメリットは、「初めまして」の相手と商談するときや、「今日は〇〇の講演をします」というときがあります。講義や講演の時に聴講生全員と仲間の関係で開始できることは、私自身、本当に助かっています。スピーチに応用している人もいて、社員やプレスの反応がいいので助かるのだそうです。今回は30秒で仲間の関係を築くラポールの具体的な創り方と練習の仕方をご紹介します。
ラポールは会話の初級ですが、これだけで仕事や日常に目立った変化を起こせる強力な手法です。
2. ラポールを創り出すために使う言葉
ラポールは特定の言葉だけでも創り出すことができます。今回ご紹介するのは、最もシンプルなのに最もパワフルなフレーズです。会話の最初に「なるほど!〇〇なんですね!」「さすが!〇〇なんですね!」という承認の言葉を入れるのです。同意や承認があると人は「仲間」を感じるのです。
例えば、「南極は南だから暖かい!」と主張する相手にどう返せばいいでしょうか?
承認を与えるためと言っても、「なるほど!南極は南だから暖かいですよね!」だと嘘をつくことになってしまいます。NGです。一方、「なるほど!南極は南だから暖かいんですね!」と「相手の言っていることを承認する」だけなら、嘘をつかずに承認を与えことができます。
「なるほど!〇〇なんですね!」
日本人は難しい理論に価値を感じる傾向があって、簡単な理論に魅力を感じにくい傾向があります。そこの判断は「哲学的に日々を送りたいのか」「リアルな世界を解決したいのか」を意識して選べばいいと思います。でも・・・簡単なのに「話し方で悩む」なんてもったいなくないですか?
さて、内容は単純なのですが、いざ実践してみると「いや、それは違う」と言う言葉が反射的に出てしまう人が100人中50人くらいます。頭で考えて簡単なことと「現実にできる」ということは、想像以上に大きなギャップがあります。例えば、テニスのラケットの持ち方、体重移動など、球の打ち方を本で読んで「どうすればいいか知っている。でも、上手く打てない!」と言っているのと同じです。
どうすればできるようになるか?
繰り返し練習することです。習得に魔法のような近道はありません。3日程度で習得できますから頑張って身に着けてしまいましょう!
3. 日常のラポール
実は皆さんも日常で「経験的に」ラポールを利用しています。例えば、新人さんが職場に来た時、いきなり「仕事に期待することは何ですか?!」と言った価値観に関連する質問はしません。もし、そういう質問をすると「変な職場に来てしまった・・・」になると思います。
一方、「出身はどこですか?」など差しさわりのない内容を聞き「私も同じですよ!」と「同じ」を発見すると一気に距離が縮まります。この時、ラポールを知らない人は相手と自分の出身地が異なると「大阪ですか?私は姫路です」のような「事実を話して終わり」にしてしまいます。しかし、同意でラポールを築き仲間意識をつくる、という目的が明確であれば言葉は変わってきます。県が違っても、「私も同じ関西です!」「親戚がそこの出身です」のような「同じ」を口に出せるのです。何の話でも「同じですね。〇〇・・・」言えますか?のゲームだと思えば面白いかもしれません。
4. 街でラポール
さて、ここまで練習ができたら街へ出ましょう!
コンビニの店員さん(レジ係の方)を満面の笑みにできれば合格です。相手は見知らぬ人で、時間は30秒くらいしかありません。思い切ってGoです。一番簡単な海外から来られている店員さんの例です。
「どちらから?」「〇〇からですか!凄いですね!」ここで微笑まれますので、「笑顔ステキですね!」「頑張って下さい!」で満面の笑みになったら完了です。
このとき、「相手が反応してくれなかったらどうしよう」「恥ずかしい」など「自分のこと(自分の保身)」を考えているとうまく行かないのです。「遠くから来られている行動力のある店員を少しでも励ましてあげよう!」などの「相手のため」だけ考えて下さい。「相手のため」の視点の持ち方はラポールの基本姿勢です。
以上の内容は、練習会では、学び始めから「街でラポール」が完了するまで約1時間です。内容は全然難しくありません。皆さんが「今までの経験を横に置いておいて」どこまで練習に没入する行動をとれるかに依っているのです。自分で行動するのが苦手な人は、友人と練習する、練習会に行く、などの「環境を整える」行動をするのもいい方法...