◆品質保証度(QAL)評価法の効用について
次弾以降、QAL評価法の詳細をご説明しますが、採用するお気持ちの無い方には不要な情報になりますので、その判断をして頂くために、QAL評価法の効用を下記致しますので、本法採用の参考にして頂ければと思います。
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その30)へのリンク】
1.目標に即したQA活動対象の絞り込みの実現
この項目は、QAL評価法開発の動機になったもので、すでにご説明済みですが、経営資源の限られた中小企業にとって、QA活動目標「クレームゼロ」に取り組む際の最大のネックは、活動対象の多さと言えます。
その点、品質保証度の数値化が可能なQAL評価法で把握できる「これをクリアしないとクレームになる可能性がある保証度“k”」に未達の保証項目に絞り込むことにより、限られたマンパワーを効率よく目標達成に生かすことができます。
2.仮説検証型QA活動の実現
QA活動の目指すところは、不具合やクレームの「再発防止」ではなく「初発防止」でなければならない、と言われて久しいのですが、「初発防止」のための具体的な手段を見つけることなしに今日を迎えています。
このことを、QA活動の在り方という観点から見ますと「トライアンドエラー(試行錯誤)型」から「仮説検証型」への転換を意味すると思うのですが、QA活動の現状を見ますと、以前に比べて、レベルも緻密さも格段に上がり、成果もそれなりに上がってはいるのですが、基本的な考え方は、旧態依然としたトライアンドエラー型活動の延長線上にあると言えるのではないでしょうか。
その理由は、仮説検証型QA活動に欠かせない「保証項目に対する“品質保証度の数値化”」が、数値化の不可能な“人的要因”が絡むために実現していないからと言えます。
その点に関し、QAL評価法によって把握されている「システムの保証度に対し、これをクリアすればクレームにならないという保証度“k”」を全保証項目ついてクリアすると言う「新製品に対するQA計画」を立案することにより、仮説検証型QA活動が可能になり、念願とするクレームの「初発防止」に繋げることができるのです。
3.組織の“よさ加減”をベースにした“QALレベル”の向上
企業における一般的なQA活動の目標は、「クレームゼロ」からスタートし、それが達成されると「社内不良率低減」へと目標のレベルを上げていくことになるのですが、社内不良率低減の場合は、各職場の活動目標が散漫となり、クレームゼロの時の様な活動に対するモチベーションの維持が難しく、成果に繋がらないことが多いのが問題です。
その点、QAL評価法によれば、目標QAL値“k”のレベルを上げれば、活動対象項目が明確となり、クレームゼロを目標にした時のモチベーションを失うことなく、活動成果に繋げることができるのです。
特に、目標QAL値“k”のレベルを、職場の事情に合わせて職場ごとに設定することにより、バランスの取れた効率的なQA活動が可能となり、活動成果もQAL値のレベルアップと言う形で具体的に把握できますので、職場のモチベーションも上がり、より効果的なQA活動を期待することができます。
4.組織の“よさ加減”をベースにした“QALの質”の向上
この“QALの質”と言うのは、ある保証項目に対するQALのレベル(QAL値)が同じであっても、どのような因子に頼ってそのQAL値を手に入れているのかという問題です。
要するに、同じQAL値でも、“QALの質”には次のような三段階のレベルがあると言う考え方です。
- レベル1:“不具合を発生させないための因子(製造設備、作業方法、製品設計)”でけりが付いている
- レベル2:“発生した不具合を検出して修正または取り除くための因子(検査設備、製品設計)に頼っている
- レベル3:人による検査方法に頼っている
後述しますが、QAL値算出表を見れば、どの因子に頼ったQAL値なのかが一目瞭然で分かりますので、QAレベル向上計画立案もやり易く、特に効果的なのは、新製品のQA計画にたいする“QALの質”と言う考えの導入です。
5.“QAチェーン”の総合力を生かしたQA活動の実現
我々が手にするいかなる製品も、一企業内でその品質を保証できるものはなく、製品品質は多くの企業の連携活動の結果といえ、関係する企業の一つにでもQA活動上の齟齬があるとその製品の品質を維持できないわけで、各企業は製品品質を受け持つ「QAチェーン」の一つのリングと言えます。
この「QAチェーン」という考えを、QA活動に導入することができれば、高効率QAが可能なのですが、最大の難関が、各企業の思惑の違いや責任問題に起因する企業間の壁です。
その点、関係する企業がQAL評価法を導入することにより、QAチェーンのどこで保証するのが最も効果的で信頼性が高いかが、明確になりますので、企業間の壁を取り払った協力体制を敷くことができるのです。
6.対顧客(大企業)に対する説得力ある自主性を保ったQA活動の実現
大手顧客の監査で指摘を受けた数項目が、確かに懸念点はあるものの、実情を知り尽くしていた筆者にとっては緊急度が低いことが明らかだったので、その点を説明しようとしたところ、「俺の言うことが聞けないのか」となり、期限を切られた指摘事項に注力して対処していたところ、緊急度が高いと判断していた項目でクレームが発生したことが、この「QAL評価法」開発の動機だということはすでにご説明しました。
その後日談ですが、QAL評価法を完成させ、活用を始めていた時の監査で、再び同一人物から同じような指摘を受けたのです。
今度は、別室でQAL評価法を説明し、「今取り組んでいる、&l...
そこで、「それらがクリアできたら、ご指摘事項を優先して取り組みます」と言ったところ、「その必要はない。QAL評価法に則った活動をしてもらえばよい」との返事をもらい、それ以降、自主性を保ったQA活動が可能になったのです。
次回に続きます。
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