部品メーカーにとって大きな機会と脅威が共存する時代となったのは、経営環境が今のように過渡期で大きく変わりつつあるからです。グローバル市場とインターネットの広がりは戦場の広がりにつながり、サプライチェーンの下流にある完成品メーカーを顧客として、顧客満足度を上げることが同業部品メーカーとの戦いにつながっています。自由市場の資本主義のもとでは、優勝劣敗が徹底され、勝者はますます強くなり敗者は生き残りが難しくなるということが、戦場が広がるという意味です。
IBM、アップル、そしてNECなどの大手パソコンの完成品メーカーの市場競争から、ソフトを含む部品メーカーであるマイクロソフトやインテルが実質的に業界をコントロールして収益を上げている事実は、パソコン業界が過去10数年に経験して来た、完成品メーカーの従来ビジネスモデルでの収益性低下を示しています。
「部品メーカー」であるマイクロソフトがもっとも高い収益力で業界を支配し、サプライチェーンマネジメントのモデルであるデル・コンピュータが一時注目され、IBM、コンパック、NEC、そしてソニーが収益性を落として舞台から去りました。現代のロックフェラーといわれているのはビル・ゲイツで、世界一の資産家です。図1のように家電業界・コンピュータ業界の企業の盛衰でも同様で、パソコンやソフトの分野にかぎったことではありません。
全世界の自動車業界で進行しつつあるモジュール化の動きが、最近注目されています。単一部品の提供から、組立作業上の周辺部品をサブアセンブルして提供することを、部品サプライヤが完成車メーカーに対しておこなうようになりました。部品共通化などでコスト削減に大きなインパクトを与えており、仕掛在庫が少なくなりリードタイムも短縮され、完成車メーカーの組立作業工程数(供給連鎖数)が大幅に削減されます。部品メーカーにとって優勝劣敗の機会と脅威の両面が、このサプライチェーンの破壊と再編成にあることはいうまでもありません。
本田系列の燃料フィルタメーカーである東洋濾過製造が衝撃を受けたのは、トヨタ系列のデンソーが燃料ポンプ・ポンプフィルタ・燃料計・燃料フィルタを一体化した燃料ポンプモジュールを開発して本田技研に提案したことでした。そこで部品メーカーのケーヒン(燃料ポンプ・プレッシャレギュレータ)、日本精機、八千代工業から供給を受け、モジュールとしての品質保証をして本田に納入する体制を整えて、窮地にたった東洋濾過製造は生き残ったのです。
自社のコア・コンピタンスの再定義による生き残りを...