曲げ試験とは?原理や目的、試験方法の種類を解説

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曲げ試験とは?原理や目的、試験方法の種類を解説


機械や構造物、各種の製品などに使用される金属やプラスチック、セラミックなどの材料に、曲げ方向の力が加わった際の挙動や特性を調べるための試験が曲げ試験です。
この記事では、曲げ試験の概要や目的、試験条件とその規格、具体的な試験方法などについて解説します。

 

 

1.曲げ試験とは?

曲げ試験とは、材料の曲げに関する挙動や特性を測定する試験です。

材料力学において計算・評価する5種類の荷重(引張荷重、圧縮荷重、せん断荷重、曲げ荷重、ねじり荷重)のうち曲げ荷重は、材料を曲げるように作用する荷重です。曲げ荷重が加わった際の材料の挙動を曲げ特性といい、これを測定する実験方法が曲げ試験です。材料に特定の方法で荷重を加え、その際の変形や破損の有無、変形量などを測定します。金属・プラスチック・セラミック、木材、紙などさまざまな材料が曲げ試験の対象となります。

2.曲げ試験の条件

曲げ試験を正確に実施するためには、温度、湿度、試験速度、試料の形状やサイズ、そして支点の位置や数などの条件が重要です。これらの条件を統一・管理することで実験の再現性を保証し、また試料間の試験結果の比較を可能にします。

そのため、金属、プラスチック、セラミックなど試料の種類に応じた試験規格が制定され、それぞれの試験条件が定められています。金属ではJIS Z 2248/ISO7438、プラスチックではJIS K 7171/ISO 178やASTM D790、セラミックではJIS R 1601/ISO 14704が代表的な試験規格です。また近年応用範囲が広がっているCFRPの試験規格としてはJIS K7074があります。

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曲げ試験とは?原理や目的、試験方法の種類を解説


機械や構造物、各種の製品などに使用される金属やプラスチック、セラミックなどの材料に、曲げ方向の力が加わった際の挙動や特性を調べるための試験が曲げ試験です。
この記事では、曲げ試験の概要や目的、試験条件とその規格、具体的な試験方法などについて解説します。

 

 

1.曲げ試験とは?

曲げ試験とは、材料の曲げに関する挙動や特性を測定する試験です。

材料力学において計算・評価する5種類の荷重(引張荷重、圧縮荷重、せん断荷重、曲げ荷重、ねじり荷重)のうち曲げ荷重は、材料を曲げるように作用する荷重です。曲げ荷重が加わった際の材料の挙動を曲げ特性といい、これを測定する実験方法が曲げ試験です。材料に特定の方法で荷重を加え、その際の変形や破損の有無、変形量などを測定します。金属・プラスチック・セラミック、木材、紙などさまざまな材料が曲げ試験の対象となります。

2.曲げ試験の条件

曲げ試験を正確に実施するためには、温度、湿度、試験速度、試料の形状やサイズ、そして支点の位置や数などの条件が重要です。これらの条件を統一・管理することで実験の再現性を保証し、また試料間の試験結果の比較を可能にします。

そのため、金属、プラスチック、セラミックなど試料の種類に応じた試験規格が制定され、それぞれの試験条件が定められています。金属ではJIS Z 2248/ISO7438、プラスチックではJIS K 7171/ISO 178やASTM D790、セラミックではJIS R 1601/ISO 14704が代表的な試験規格です。また近年応用範囲が広がっているCFRPの試験規格としてはJIS K7074があります。

一例として、プラスチック・複合材料の規格別の主な試験条件の比較を示します。

  硬質及び半硬質プラスチック CFRP FRP
規格番号 JIS K7171/ISO178 ASTM D790 JIS K7074 JIS K7017/ISO14125
代表的試験片寸法 80×10×h4mm 127×13×h3.1mm 100×15×h2mm 60×15×h2mm
試験速度 2mm/min 1.3mm/min 5mm/min 1mm/min
支点間距離L L=16×h (64mm) L=16×h (50mm) L=40×h (80mm) 40mm
圧子半径R1 R1=5mm R1=5mm R1=5mm R1=5mm
支持台半径R2

R2=5mm
(h>3mm)

R2=2mm (h≦3mm)

R2=5mm R2=5mm

R2=5mm
(h>3mm)

R2=2mm (h≦3mm)

曲げ弾性率算出方法 割線法 接線法 接線法 割線法


表1. プラスチック・複合材料の規格別の試験条件

3.曲げ試験を行う目的

曲げ試験の目的は、材料の安全性や耐久性、使用上の制限や条件など設計に必要なデータを明確にし、機械や構造物が変形や破損・破壊により所期の機能を発揮できなくなるのを防ぐことです。
その目的を達成するために以下に述べるような測定を行い、材料の曲げ荷重・たわみ量・曲げ強さ・曲げ弾性率・破断伸び・耐屈曲回数などの特性を明らかにします。

4.曲げ試験で何が測定できるのか?

曲げ試験では、以下のような物性値や特性を測定できます。

曲げ強度
曲げ応力とひずみの計算
曲げ弾性率
曲げ剛性
曲げ抵抗
3.5%伸び時の応力
降伏点及び試験片破断時の応力と伸び

5.曲げ試験の方法

曲げ試験は試料の支持と荷重の加え方により、2点曲げ試験、3点曲げ試験、4点曲げ試験の方法があり、また曲げの方法や程度により、抗折(こうせつ)試験、屈曲試験、反復屈曲試験、巻付・巻解試験などの方法があります。これらは試験の目的に応じて使い分けられ、それぞれの試験を実施するために多種の試験機が供給されています。

① 2点曲げ試験

試料の一端を固定し、その反対側に荷重を加える方法です。紙やフィルムなどの材料の曲げ剛性や曲げ抵抗を測定するのに適した試験方法です。

2点曲げ試験
図1. 2点曲げ試験

② 3点曲げ試験

試料を両端の2点間で支持し、その中央に荷重を加えます。
比較的容易に試験を行なえるため、材料の曲げ加工のしやすさを調べるなどの目的でよく使われます。しかし試験片に加わる曲げ応力が均一ではないため、材料の曲げに対する基本的性質の測定には向きません。

3点曲げ試験
図2. 3点曲げ試験

③ 4点曲げ試験

試料を両端の2点間で支持し、その間に2点で均等な荷重を加えます。この方法では2点間の荷重部分に均一な応力を生じさせることができるためデータがばらつきにくく、材料の曲げに対する基本的性質の測定に対応した試験方法です。

4点曲げ試験図3. 4点曲げ試験

6.まとめ

曲げ試験は、材料の曲げに関する挙動や特性を測定する試験方法で、試料の支持と荷重の加え方により、2点曲げ試験、3点曲げ試験、4点曲げ試験の方法があります。

試料の種類と試験目的に応じた適切な条件と方法で実施し、材料の曲げ荷重・たわみ量・曲げ強さ・曲げ弾性率・破断伸び・耐屈曲回数などの特性を明らかにすることで、材料の安全性や耐久性、使用上の制限や条件を明確にし、実際の設計や製造に役立てることができます。

関連解説記事『【曲げ弾性率・ヤング率】プラスチックの強度設計とは?』
関連解説記事『金属材料基礎講座 【連載記事紹介】』

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この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

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