1. 忠誠心の育成
これまで説明してきたのは、仕事に必要な“能力”(「仕事に関する知識(B)」と「技能者・技能者(C)」)を、職場に生かして成果を出す上で重要な要素「グループ力」を高める上で必要な、“職場の良い雰囲気”と“リーダーシップ”の効果を大きく左右する精神的側面についてご説明します。その精神的側面で最も大きいのが社員の「ロイヤルティ」即ち「忠誠心」で、その対象は、先ず上司、次が職場、そして最後が会社と言う3つのレベルが存在しますので、それぞれに対する育成ステップを表90-1でご説明します。
ただ、この項目で注意しなければいけないのは「忠誠」(趣旨を理解し誠意をもって尽くす)と「従属」(強いものに付き従う)の混同です。両者の決定的な違いは「被育成者の主体性の存在」で、育成に当たっては、決して「従属」に導くようなことのないよう注意が必要です。
2.「ロイヤルティ(F)」の育成ステップ
「ロイヤルティ」(忠誠心)には対象が存在し、従業員の場合、表90-1の備考欄にある、上司、職場、会社が対象になり、育成に当たっては、この順番でステップアップを目指すことになります。育成ステップにおける詳細は注記に譲りますが、それぞれの対象に関する包括的なポイントを下記しますので、参考にして頂ければと思います。
1)上司に対するロイヤルティ
これなくしては、対職場、対会社のロイヤルティはあり得ない感じなのが現実で非常に重要ですが、人間関係の比重が高いだけにその難しさは格別です。特に厄介なのが“相性”で、一般的には修復不可能とされているのですが、実は、人はいろんな側面を持っていますので、職場に限ってであれば、相手に合わせた側面で接することにより修復は可能、即ち、育成可能と言うのがOJCCの考えです。
2)職場に対するロイヤルティ
対象となる要因は、漠然としていて、職場の雰囲気、会社における地位、取り扱っている商品など様々なんですが、本人がどこに一番惹かれているかを把握し、職場をそこに導くのがポイントになります。
3)会社に対するロイヤルティ
基本的に職場と同じなんですが、それに加えて、育成者の手が届かない、入社の動機や待遇、があるだけに難しさは一際なんですが、入社動機を把握して、会社に対する誤解のない理解に導くことは大切です。
表90-1 「ロイヤルティ(F)」の育成ステップ例
(注1)そのような態度をとる理由は千差万別ですが、この育成ステップを通じて相手を十分理解することがポイントです。
(注2)どんな時に気が向くのかの把握がポイントです。
(注3)本人が協力に際して何を我慢しているのかの把握がポイントです。
(注4) 指示の内容だけでなく、その背景にある趣旨の理解に思いを馳せる段階まで来ており、ロイヤルティに近づいています。
(注5)指示された内容における上司の立場も含めて理解しての協力で、指示内容に関してはロイヤルティありと言えます。
(注6)上司に対する理解が思いにまで至った状態での協力であり、上司に対するロイヤルティができたと言えます。
(注7)上司の、職場を超えた立場を理解した上での協力ですので、他職場に関する必要な情報を与えておくのがポイントです。
(注8)職場の範囲を超えた活動への意欲の誘導と自分の仕事の範囲内での在り方を教えるのがポイントです。
(注9)ここでは、課における係の立場を理解した上で、係内の自分の仕事以外での協力可能な仕事への誘導がポイントです。
(注10)上記の対象を、部または工場や支社と言った立場へ高めた姿勢に誘導し、係内での協力内容の説明がポイントです。
(注11)会社の立場を優先した場合、社員に不満が生じる場合の話で、納得できない要因の把握と対処がポイントです。
(注12)ここまで来ると会社に対するロイヤルティが芽生えたと言え、納得のレベルに対する評価を伝えるのがポイントです。
(注13)与えられた仕事を超えて会社に積極的に貢献しようという姿勢の適切な受け入れがポイントです。
(注14)会社に対する理解が、自分の仕事、職場の延長線上でしか把握できない状態からの脱皮への誘導がポイントです。
(注15)会社に対する忠誠心が頭での理解にとどまっている状態なので、それを気持ちへのつながりに導くのがポイントです。
(注16)会社の業績を自分の仕事の成果の延長線上で理解でき、業績に感情移入するように導くのがポイントです。
(注17)上記ステップで伝えた会社の良さを対外的に自慢できる形で伝え、それが仕事の励みなるよう導くのがポイントです。
(注18)以上をベースに、今度は会社や職場の欠点に気付かせ、それらを自分で改善しようとするよう導くのがポイントです。
(注19)このような状態に導くことを念頭に育成するのがこの一連の育成ステップのポイントになります。
3. 育成者自身も学び成長する
このロイヤルティが、いかに被育成者にとって大切かを説明してきましたが、実は、この育成ステップを忠実に進めることにより、育成者自身も大いに学び成長するとともに、その育成過程で、育成者が把握した職場や会社の欠点の改善を進めることにより、職場も会社も改善されることも合わせて期待しているのがOJCCですので、この項目の育成に当たってはこの点も念頭に置いて頂ければと思います。
次回に続きます。
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