クリーン化について(その117)続:日常生活に見つけるクリーン化着眼点

 

クリーン化について(その115)日常生活に見つけるクリーン化の着眼点の続きです。

 

私は、クリーンルームに限らず製造風景を廊下から見る機会も大切にしてきました。ただ漠然と見て流していくのではなく、良く観察しながら歩くと色々なことが見えてくるからです。設備の稼働状態、安全通路の状況(避難通路の確保、労働安全衛生法の観点も含め)、人の動作行動や設備、製品の扱い、そして服装など多面的に見ると、不具合も見えて来ます。また、在庫の様子も見えます。それによってこの会社、工場は健全な運営ができているのか、あるいは、この状況なら良いものづくりができるだろうという推測もできる場合があります。

 

設備では、配線、配管類にスレがないか。ダクトと設備のカバーの接触がないか、ロボットの動作によっては、配線とのスレはないか(最近はかなり改善されていますが)。クリーンスーツや、クリーンルームではなくても、作業着の着用に乱れがあれば、発塵粉の発生、吹き出しがあります。

 

テレビで微細な製品製造をしている現場が映ることがありますが、それらも瞬時ですが、不具合がないか見ています。例えば、最先端の工場でも、クリーンスーツの着用に異常を感じることがあります。何のために着用しているのかが理解できているのだろうかと気になるのです。

 

廊下を通過するだけでも、このような着眼の仕方をすれば良いですね。それができるようになれば、早足で歩きながらも、訓練すると、いろいろなところに気がつきます。早足で見るとどのくらいの早さまで不具合を発見できるのか、試行してみたこともありました。すると、企業訪問時応接室などへ入る時、ドアの劣化、発塵などは見つけ安くなります。もちろん、五感をフル活用するのです。これらもその場で話題にできます。

 

そして、このままにしておくとどうなるのか、先を考えることが大切です。常に一歩先を考え予想できる事故などは早めに改善していくことが大切です。これは、予防的な考え方です。

 

どうしてこのような事をしたかですが、昔、プロ野球の選手で、柳田選手だったか、巨人軍の選手がいました。打者としては、優秀だったと思います。この人は、都内の試合では電車で通っていたと言います。電車の一番前、あるいは一番後ろに乗り、電車が動き出した時から線路の砂利をみていたと言います。座席には座らないのです。そしてどのくらいのスピードまで石のひとつ一つが見えるのかと言う訓練です。かなり速いスピードでも、一つひとつの石が見えるようになったと言います。

 

従って、自分がバッターになった時、ボールのスピードが速くても、よく見えていたと言います。日常の中にも、訓練やその応用ができる機会はあるのです。それに気がつき、活用するかどうかですね。優秀な人は生まれ付きではなく、人の見えないところで努力をしているんですね。

 

以前、“ある工場長の行動”を記したことがありました。その工場長は、毎朝一番に現場に入っていたという例です。あとで現場に入ろうとすると、いろいろな会議や仕事が入ってきて、時間が取れないまま一日が終わってしまう。そして現場が遠くなってしまう、これを避けたいという理由です。どうしても朝一番に入れないときには、短時間でも廊下からリーンルームを覗いているというのです。日々入っているので、外からでも観察のポイントは持っているのです。窓から見える場所のクリーンマットの汚れはどうか、靴の足跡も向きはどうか、人の動作、行動はどうかと着眼点は沢山あるのです。

 

管理、監督者が現場へ足を運ぶことの大切さ、そのための工夫ですね。小さな努力かも知れませんが、積み重ねることで基盤強化に繋がります。またその時に現場の人と話をすると、沢山の情報が出てきます。つまり現場に沢山のアンテナが立ち、それらも着眼点に活用できる分けです。

 

現場と距離があると、狭い見方、少ない情報で判断しなくてはいけないのです。着眼点を如何に見つけ、活用していくかは、経営者の役目でもありますね。それを行動で示しているのです。

 

【参考文献】 
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
    同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
    同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

 

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