IT/ソフトウェア技術者の仕事の進め方変革のための40の発明原理

 筆者は、主に技術者を対象として、キャリアカウンセリングを実施しています。この中で、多くのSEたちから悲痛な想いを打ち明けられています。現実を理解していただくために、複数あった類似の事例を1件紹介します。20代後半の女性SEからの切実な相談でした。「納期が過ぎて、慢性的な高残業が続き、疲れがとれない。これではうつ病になってしまう。このままだと、結婚もできない。何とかできないなら、別の職種に変わりたい。」いままで携わってきた専門のソフトウェア開発スキルを捨てることについてのこだわりもなく、職種転換の決意も固いようです。このような状況で、企業もSEを集めるのに苦労しています。筆者の教え子で、就活している学生たちも、そのような世相を敏感に感じ取り、そのような職種を敬遠し始めたようです。 

 その打開策には2つあると考えられます。SEの慢性的高残業を打破するため、ある企業では、残業の上限を決めました。違反した場合、その管理者を懲戒処分にしたのです。これは効果的でした。しかし、多くの企業では、夢のまた夢です。もう1つは、筆者自身の体験です。仕事を依頼していたソフトウェア開発会社で、事件は起こりました。納期が大幅に遅れたある日、技術者が過労で倒れてしまいました。根本原因を探るため、何故を5回繰り返してみました。その根本原因は、高残業と休日出勤の連続で、ミスを繰り返していたことでした。さらに、パッチワーク的な仕事の進め方と試行錯誤的な仕事の進め方で、さらにミスを加速させていたようです。3日間の休養後、仕事の全体像、お客様ニーズなどを説明し直しました。そして、そのソフトウェア開発会社の関係者を集めて、開発方法改善策のアイデア出しを行いました。アイデア出しのツールとして40の発明原理と9画面法を使ってみました。そのことで、その企業の仕事の進め方が一変したのです。結果として、それ以降納期遅れは激減し、「急がば回れ」の諺通りに進みました。 

 上記のような課題に少しでも役立てられるように、ソフトウェア事例を加味した図1図2のような40の発明原理事例集を作成し、IT/ソフトウェア技術者に活用されるようにしました。40の発明原理は、経験的に、TRIZのツールの中で、シンプルで成果が出しやすく、一番多く活用されているツールです。このツールの使い方は、本来、抽象化を行いながら活用するもので、他分野の事例からでもヒントを得られるはずです。しかし、技術者の多くは抽象化が苦手で、その分野の事例がないと、不満が多いようです。特に、IT/ソフトウェア分野は技術的に新しい分野であるため、40の発明原理の事例が少ないのです。そこで、この分野向けに40の発明原理事例集を用意しました。これは、最初は、「SEのスピード発想術」という本に掲載していました。出版契約満了のため、2014年8月から、図解版40の発明原理事例集を筆者のHPに公開しました。例えば、「7.入れ子原理」(図3)は、ウェブリンクの階層の例です。「19.周期的作用原理」(図4)は、アジャイル開発の事例です。各発明原理の名称、図の意味、適用事例などから発想しやすくなっています。発明原理の名称がよく分か...

らない場合には、括弧の中に分かりやすい表現も書き添えてあります。

 

           










  図1  IT/SW向け40の発明原理事例集A        2  IT/SW向け40の発明原理事例集B

   

     











      図3 7入れ子原理                       図4 19周期的作用原理

 なお、全ての事例を見たい場合は、筆者のHPで確認してください。事例集リストも掲載しています。各事例は、スマホサイズで見やすく、ハードウェア事例やビジネス・日常生活事例も掲載しています。IT/ソフトウェア以外の分野の技術者にも有効だと思います。

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