ばねは主要な機械要素のひとつで、さまざまな装置や構造物に広く使われています。このばねの性質を示す法則が「フックの法則」です。ばねの性質とフックの法則については、かつては小学校高学年で、現在では中学校で学びますが、ここでもう一度おさらいしてみましょう。
フックの法則とはどういうものか
フックの法則とは「ばねの伸びは弾性限度以下では加えた荷重に正比例する」という法則で、弾性の法則とも呼ばれます。フックの法則が成り立つ物質を線形弾性体(またはフック弾性体)と呼びます。
フックの法則は以下の式で表されます。
F = kx
F:荷重[N]
x:ばねの伸び(変形量)[mm]
k:ばね定数[N/mm]
【図2】ばね定数と荷重、ばねの伸びの関係
例えば、1Nの重りを吊るしたときの伸びが20mmのばねに、その2倍の2Nの重りを吊るすと伸びも2倍の40mmになります。このばねのばね定数kは0.05N/mmです。また、1Nの重りを吊るしたときの伸びが10mmのばねに、その2倍の2Nの重りを吊るすと伸びも2倍の20mmになります。このばねのばね定数kは0.1N/mmです。このようにばね定数kが大きいほど、ばねを伸ばすには大きな力が必要になります。
フックの法則は、ばねだけでなく金属・プラスチックなどの材料においても成り立ちます。ただし金属材料では荷重を加えていって弾性限度を超えると、力と変形量が比例しなくなります。つまり、フックの法則が成立するのは弾性限度までということになります。
このように弾性限度内で材料に荷重を加えていく場合には、以下の式が成り立ちます。
σ=Eε
σ:応力[N/mm2]
ε:ひずみ(単位なし)
E:ヤング率(または縦弾性係数...
この式もフックの法則と呼ばれます。
【応力についての解説はこちら】
【ひずみについての解説はこちら】
【ヤング率についての解説はこちら】
フックの法則を発見したロバート・フック
フックの法則を発見したロバート・フック(1635~1703)は、17世紀のイギリスの自然哲学者(現在で言う科学者)です。フックは1660年にフックの法則を発見し、当初はアナグラム(文の中の文字を入れ替えて一種の暗号にしたもの)として発表していましたが、1678年にカトラー講義「復元力について」でその内容を公表しました。さらにこの弾性に関する研究の成果としてぜんまいばねを開発し、それを用いた懐中時計を発明しました。
彼は若い頃には、一定温度下での気体の体積と圧力の関係を示した「ボイルの法則」に名を残したロバート・ボイルの助手を務めており、その後は王立協会の実験監督、グレシャム大学の幾何学教授として研究を行いました。フックの法則の他にも、昆虫や植物などの自然物から人工物までさまざまな物を顕微鏡によって詳細にスケッチした「顕微鏡図譜」の出版、生体の最小単位の「cell(細胞)」の命名、1666年のロンドン大火後の都市計画・建築への関与、さらには天文学や医学への貢献など、幅広い学術分野で業績を残しています。
まとめ
フックの法則とは「ばねの伸びは弾性限度以下では加えた荷重に正比例する」という法則で、F = kx の式で表されます。フックの法則が成り立つ物質を線形弾性体と呼びます。フックの法則は、ばねだけでなく金属・プラスチックなどの材料においても成り立ちます。
フックの法則を発見したロバート・フックは17世紀のイギリスの自然哲学者(現在で言う科学者)で、その他にも幅広い学術分野で業績を残した人物です。