前回のJIS G4053 機械構造用合金鋼鋼材 SNCM:金属材料基礎講座(その110)に続けて、解説します。
1. JIS G4053 機械構造用合金鋼鋼材 SACM
機械構造用合金鋼鋼材のアルミニウムクロムモリブデン鋼の化学成分を下表に示します。
アルミニウムクロムモリブデン鋼はSACM645の1種類だけが規定されています。アルミニウムクロムモリブデン鋼は窒化処理用の鋼材として使用されます。
窒化処理において、鋼材の表面に窒化物の層が形成されます。アルミニウムが添加されていると、この窒化層が硬くなります。そして耐摩耗性や耐食性に優れます。シリンダーや歯車などに使用されます。
2. JIS G4404 合金工具鋼鋼材 切削工具鋼
炭素工具鋼にクロムなどの合金元素を添加した鋼材です。主に切削工具鋼用、耐衝撃工具鋼用、冷間金型用、熱間金型用の4種類があります。
合金工具鋼鋼材はキルド鋼から製造されます。合金工具鋼鋼材の記号は主にSKS〇、SKD〇、SKT〇です。SKSはSteel Kogu Special(特殊)、SKDはSteel Kogu Dice(金型)、SKTはSteel Kogu Tanzo(鍛造)です。炭素工具鋼に比べて焼入れ性や耐摩耗性が向上しています。
切削工具鋼8種類の化学成分を下表に示します。C量は高めで1%程度です。Crが添加されており焼入れ性を高めています。さらに、W、Vを添加しています。そのため、耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗に優れます。SKS2はタップやカッターなど、SKS7はハクソー、のこ刃など、SKS8はやすりなどに使用されます。また、Niを添加したSKS5はCが低めで靭性があるので、丸のこ、帯のこなどに使用されます。
次回に続きます。