金属組織観察で行われるエッチングは腐食の一種です。一方で、赤さびなどの腐食はコロージョンと呼ばれます。どちらも金属表面が溶解したり反応しますが、それぞれエッチングとコロージョンと呼び区別しています。エッチングの基礎である腐食反応は式(1)、(2)の反応が研磨した試料表面で起きます。
- アノード(酸化)反応:Fe → Fe2+ + 2e- (1)
- カソード(還元)反応:2H+ + 2e- → H2 (2)
アノード反応とカソード反応は対になって起きます。アノード反応とカソード反応が絶えず場所を変えながら反応が起きると、全体的に腐食する全面腐食が起きます。しかし、エッチングでは結晶粒界や特定の相が優先的に腐食するように行われています。
腐食されやすい場所はアノード反応を起こして溶解し、腐食されにくい場所はカソードとなり、研磨仕上げの光沢を保ちます。このようにしてエッチングによる凹凸が形成されます。エッチング時間が短ければ、アノード反応の凹凸が小さく、金属組織が薄くわかりづらいものになります。
しかし、エッチング時間を長くしすぎると、必要以上に腐食してしまい、全体的に黒くなってしまいます。エッチング時間は金属組織を確認しながら、ちょうど良いコントラストとなる時間を決めることが重要です。
また、直接金属組織を写真撮影する顕微鏡のモニターとデータをまとめるPCモニターでも見え方が異なることがあります。顕微鏡組織も報告書資料となることが多いので、その時に組織が良く見えるコントラストとなるようにエッチングを行います。
エッチング後はエッチング液をよく洗浄し、乾燥させます。エッチング液が試料と樹脂のすき間などに残っていると、そこから腐食してしまいます。エッチング後の試料は空気や湿度に触れないようにデシケーターなどに保管するとよいです。
エッチング液の多くは硝酸や塩酸などの酸のほか、フッ酸、エタノール、過酸化水素など腐食性、引火性のある薬品を多く扱います。そのため、保護具や換気などの安全面、環境面に十分注意して作業を行うことが重要です。
次回に続きます。