1. NM法との出会い
筆者が、NM法の凄さを知ったのは、20代後半の時、中山正和氏のお弟子さんたちと一緒のプロジェクトで仕事をした時です。彼らのアイデア出しの引き出しが豊富なことに興味をもったのがきっかけでした。それ以来、TRIZを知るまで、新製品開発の主な技法はNM法を活用していました。NM法を推奨してきた理由は、シンプルであることと次の中山正和氏の言葉があったからです。「問題があるときにはじめからNM法で解くのは間違い。理詰めで考えて、いいアイデアが得られないとき、または理詰めでは一応解けたが、まだ、他にアイデアがほしいときに利用する」、「基本型が、飲み込めたら、NM法という名称は消え去るはず」池澤七郎氏から、NM法のレジュメの著作権フリーの許可を得ていますので、ここで要点をまとめました。
2. NM法とは
NM法は、元ITC株式会社の中山正和氏が考案した技法で、その頭文字をとって名づけられたものです。シネクティクスがヒントになっていると言われています。類比技法の代表的なもので、ステップが単純で分かりやすく、類比技法としては日本で一番普及しています。用途にあわせて、H型(hardware)、T型(開発者の高橋浩氏の頭文字)、A型(Area)、S型(Serial)、D型(Discover)のバリエーションもあります。中山氏が他界し、その一番弟子の池澤七郎氏が伝道師となり、普及を推進していました。知人の現ITC株式会社の社長によれば、残念ながら、後継者は不在だそうです。
3. NM法とTRIZの共通点
いままで、NM法とTRIZを新製品開発に主活用した経験を基に、表1にNM法のステップ別にTRIZとの共通あるいは類似部分を整理してみました。これを見れば、似ているところが多いことが分かると思います。思考の大きな違いを敢えて特筆すれば、原因・結果分析(なぜなぜ展開)、技術的矛盾の設定法、進化トレンド、ARIZではないでしょうか。つまり、TRIZを使えば、NM法の主な部分は活用していることにもなると思います。創造性開発手法の中で、TRIZが最強と言われる所以でもあります。
表1 TRIZと NM法の共通点
4. NM法の適用事例
4.0 課題の明確化
例えば図1のように「超高層ビル火災時の脱出装置を考えよ」という課題が与えられたとします。事前準備として、まず、自分たちのテーマとして、次のように自分たちの言葉に置き換え、ステップに沿ってアイデア出ししていきます。
① 火災時に空に浮く装置
② 火災時に隣のビルに移る装置
③ 火災時に下に下りる装置
図1 課題の明確化
4.1 KW (Key Word)
本質を抽象化(一般化)し、動詞または形容詞で表す(名詞の場合もある)。
⇒ おりる、さがる、くだる、すべる
4.2 QA (Question Analogy)
例えば、××のように、KWとの関連で見つける(図解する)。
⇒ 自然界、家庭、職場、学校など
⇒ みの虫、むささび、たんぽぽ
⇒ 木の葉が散る、霜が降る、川が流れる、タカが舞い降りる
⇒ 滑り台、温度計、スカイダイビング、ハンググライダー、エレベーター
4.3 QB (Question Background)
そこで何が起きているのか、または、どうなっているのか。QAについてQAの関係を頭に入れ、数多く観察する。
⇒ 羽(手、足)を広げている
⇒ ギャオギャオと大声で鳴く
⇒ 黒褐色になっている
⇒ 爪が鋭い
⇒ 尻尾がある
⇒ 夜活動する
⇒ 毛が生えている
⇒ 木から木へ移る
4.4 QC (Question Conception)
① それが(QB)テーマの解決に何か役立たないか、ま...
② QBでいろいろ出てきたそれぞれをテーマにぶつけて気づいたことを全部書く。
③ QBで調べた(観察した)ことを、全てテーマの解決にムリヤリ使え(生かせ、育てろ、こじつけろ)。
⇒ くだらないものでも全て出す
4.5 組合せ(アイデア化)
① QC(ヒント集:150以上)として出てきたヒントを机の上に並べる。
② QCのヒント集から光るカードあ(独創カード)を見つける。
③ 組合せ・結合を図る。
5.参考文献
1. 中山正和、NM法のすべて 増補版、産業能率大学出版部
2. 池澤七郎、実践:創造性開発 講演レジュメ