今回は、オンライン会議での「顔出し」についておはなしします。対話への安心感が芽生え、心理的安全性がより高まります。
1. コミュニケーション、心理的安全性:オンライン会議での、カメラON、OFF
ある会社での出来事です。社長や幹部のオンライン会議に参加させて頂いたのですが、その会議の前に社長さんが
- 「○○さんの、顔が小さいなぁ~」
- 「○○さんは、顔が暗く映ってるよぉ~」
- 「○○さんは、頭頂部しか映ってないけど?」
分割された参加者の「それぞれの顔の映り方」について、細かく声がけをしていました。社長さん曰く「相手に対する礼儀もあるし、オンライン会議に対する姿勢が顔の写し方で解るんです。だから、私は、オンライン会議前に”顔の映り方”について、気配りするよう皆に伝えるんです。」と話されていました。
この時、私は「コミュニケーションについて学ばれている社長なんだろうなぁ~」と思いました。
ところが、オンライン会議が終わった時、メンバーは、口を揃えて「ウチの社長、細かいでしょう?ほんと、”顔の映り方”で何が変わるんでしょうね。会議内容は、シッカリ把握しているのに・・・・。」この時私は「あっ、これって、社長の真意が伝わっていない。社長、ちゃんと伝えなきゃ~」と感じたのでした。
2. コミュニケーション、心理的安全性:オンライン会議は顔出しで
私達がコミュニケーションを成立させる場合、2つの側面を配慮すると良いことが解っています。それは、言語と非言語です。
言語とは、会議の中で交わされる「ことば」です。言葉は、特定の音や記号の組み合わせで、意味を作り上げるものです。そして言葉には、トーンやリズムが含まれていたり、コンテクスト(context:文脈)によって作り上げる意味が変わってきます。例えば、メチャクチャ明るいトーンやリズムで「は、ハラ(お腹)痛い」と言ったとき。
これは、おかしくてお腹を抱えて、痛くなるくらい笑っているのでしょう。逆に、顔色が冴えず、冷や汗をかきながら、苦痛の表情で「は、ハラ(お腹)痛い」と言った時には、痛みに苦しんでいることが伝わってきます。
このように言葉は、音だけでなくコンテクストや相手の表情なども含め、取り交わされるのです。つまり、音と音以外の様々な情報がかみ合って、言葉の意味は形成されます。この音のことを、バーバル(言語)と言います。そして、バーバル以外の情報をノンバーバル(非言語)と言います。
オンライン会議など、顔を映さないまま進めていると、ノンバーバルが欠落し、情報交換の質が低下してしまいます。これは、潜在的に不安感へとつながり、活発な対話や発案に影響してしまいます。また、顔を映すことで、脳は実在感を感じ取ります。実在感があると、人の認知機能に良い影響が及びます。実在感は、客観的に現実を正しく把握したり、理解する能力を高めることができます。
逆に、実在感がないと、想像や妄想でものごとを捉えるようになるため、取り交わされる対話に対して、信頼感が下がってしまいます。この信頼感の低下も、心理的安全性を弱化させる原因になります。また、私達の脳は「視覚・聴覚・情動覚」の3つが同時に刺激されると、集中力が高まります。ところが、音声だけで対話をしていると、聴覚しか刺激を受けないため、集中力が高まりません。
これらの理由からも、オンライン会議での顔出しは、会議自体の質に影響することが解っています。きっと、この社長は、これらについて感覚的に解ってはいるけど、具体的に説明出来ないがために、部下達に不信感を与えているのだろうな~と思いました。もちろん、会議後に「顔出しの大切さ」について、みなさんにお話したところ、全員が、シッカリ・ハッキリした”顔出し”をするようになったそうです。
3. コミュニケーション、心理的安全性:顔出しで配慮しなければならないこと
顔出しにも配慮しなければならないことがあります。顔出しに否定的な人の意見を聴いてみると、次の様な答えが多く帰ってきます。
- 「あまり、知られたくないんですよね。自分のことを。」(秘匿性欲求)
- 「プライバシーが損ねられる気が...
これらの欲求を満たすことで、エンゲージメントを感じる人もいるのです。オンライン会議の顔出しには、様々な価値観があるのです。あなたのチームでも、どのような雰囲気で会議を進めたいかについて、簡単な議論をしながら「顔出し有り!無し!」を決められてはいかがでしょうか? 私は、どちらかというと、顔出し派です。オンライン会議をファシリテートするために、どのようにすべきか、話し合ってみましょう。