X線とブラッグの式:金属材料基礎講座(その130) X線と金属材料

投稿日

X線とブラッグの式:金属材料基礎講座(その130)

 

金属材料の分析においてX線は非常に重要です。X線の持つ様々な特性によって金属材料の成分分析や結晶構造解析に役立っています。

 

そしてX線の特性の中で特に重要なのは回折現象とブラッグの式です。X線の回折現象は1912年ドイツの物理学ラウエによって発見されました。これは電磁波であるX線の波長(0.1nm程度)と同等の間隔の結晶材料にX線を照射すると、回折現象を起こしてX線が散乱されるというものです。そして翌年1913年にブラッグ父子によって今日でも使用されるブラッグの式を発表しました。ブラッグの式を式(1)に示します。 

 

nλ=2d sinθ (1) 

  • n:自然数
  • λ:X線の波長
  • d:結晶面の間隔
  • θ:入射角度

 

実験的にはnを1とした式(2)が主に使用されます。 

λ=2d sinθ (2) 

ブラッグの式の模式図を下図に示します。

 

X線とブラッグの式:金属材料基礎講座(その130)

図.ブラッグの法則

 

X線が入射角θで格子定数dの結晶体に照射されると、反射角θで放出されます。X線の入射角、反射角と光の反射で扱う入射角と反射角は位置が違うことに注意します。

 

ここで2つの入射X線AXA’、BYB’を考えた時に、両者の経路差はWYZとなります。ここで、WY=dsinθという関係が成り立ちます。WY=YZのため、WYZ=2dsinθとなります。この経路差WYZがX線の波長の整数倍の時にX線は強め合い回折ピークを示します。反対にそれ以外の入射角ではX線は打ち消し合います。波長の分かっているX線を結晶に回折させ、そのパターンから結晶面間隔を求め、物質を評価することをディフラクトメーターといいます。一方、結晶面間隔の分かっている結晶に波長の分からないX線を回折させてX線の波長を評価することをX線分光といいます。特性X線を波長として扱うWDSや電子線回折を扱うEBSD(電子線後方散乱回折法)でも、ブラッグの式が利用されています。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気...

X線とブラッグの式:金属材料基礎講座(その130)

 

金属材料の分析においてX線は非常に重要です。X線の持つ様々な特性によって金属材料の成分分析や結晶構造解析に役立っています。

 

そしてX線の特性の中で特に重要なのは回折現象とブラッグの式です。X線の回折現象は1912年ドイツの物理学ラウエによって発見されました。これは電磁波であるX線の波長(0.1nm程度)と同等の間隔の結晶材料にX線を照射すると、回折現象を起こしてX線が散乱されるというものです。そして翌年1913年にブラッグ父子によって今日でも使用されるブラッグの式を発表しました。ブラッグの式を式(1)に示します。 

 

nλ=2d sinθ (1) 

  • n:自然数
  • λ:X線の波長
  • d:結晶面の間隔
  • θ:入射角度

 

実験的にはnを1とした式(2)が主に使用されます。 

λ=2d sinθ (2) 

ブラッグの式の模式図を下図に示します。

 

X線とブラッグの式:金属材料基礎講座(その130)

図.ブラッグの法則

 

X線が入射角θで格子定数dの結晶体に照射されると、反射角θで放出されます。X線の入射角、反射角と光の反射で扱う入射角と反射角は位置が違うことに注意します。

 

ここで2つの入射X線AXA’、BYB’を考えた時に、両者の経路差はWYZとなります。ここで、WY=dsinθという関係が成り立ちます。WY=YZのため、WYZ=2dsinθとなります。この経路差WYZがX線の波長の整数倍の時にX線は強め合い回折ピークを示します。反対にそれ以外の入射角ではX線は打ち消し合います。波長の分かっているX線を結晶に回折させ、そのパターンから結晶面間隔を求め、物質を評価することをディフラクトメーターといいます。一方、結晶面間隔の分かっている結晶に波長の分からないX線を回折させてX線の波長を評価することをX線分光といいます。特性X線を波長として扱うWDSや電子線回折を扱うEBSD(電子線後方散乱回折法)でも、ブラッグの式が利用されています。

 

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
化成処理とは:金属材料基礎講座(その80)

  ◆ 化成処理:めっきの密着性や耐食性を向上  化成処理もめっき(メッキ)や塗装のように皮膜防食の一種です。化成処理とは、基材金属をリ...

  ◆ 化成処理:めっきの密着性や耐食性を向上  化成処理もめっき(メッキ)や塗装のように皮膜防食の一種です。化成処理とは、基材金属をリ...


構造 金属材料基礎講座(その1)

  1.金属結合  金属を構成する物質の最小単位は原子です。例えば鉄原子やアルミニウム原子などです。原子の結合には主に金属結合、イオン結合、...

  1.金属結合  金属を構成する物質の最小単位は原子です。例えば鉄原子やアルミニウム原子などです。原子の結合には主に金属結合、イオン結合、...


金属組織観察:金属材料基礎講座(その112)結晶粒径、ひずみなどの観察

       前回のJIS G4053 & 合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材...

       前回のJIS G4053 & 合金工具鋼鋼材 耐衝撃工具鋼と冷間金型と熱間金型:金属材...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...