企業内のデータサイエンス組織の1つの役割として、データサイエンス技術を、より良い商品の開発やより良いCX(カスタマー・エクスペリエンス)の実現のために用い、ビジネスそのものを成長させる、というものがあります。CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは、商品やサービスそのものではなく、購入するまでの過程や使用する過程、購入後のフォローなどの過程における「顧客経験」です。要は、データを活用し、商品そのものと顧客体験をより良いものにする、ということです。今回は「プロダクト(商品開発系)データサイエンス」の「2つのDS適用プロセス(ビジネスサイド視点)」についてお話しします。
【記事要約】
商品そのものと顧客体験をより良いものにするとき、データサイエンス技術でサポートする、2つのDS適用プロセス(ビジネスサイド視点)があります。戦略と計画プロセス、振り返りプロセスの2点です。小難しいデータサイエンス技術を使うことなく、単なる集計で十分なこともあり、一見すると簡単そうに見ることがあります。しかし、多くの場合それほど簡単ではなく頭をフル回転する必要があります。
1. 2つのDS適用プロセス(ビジネスサイド視点)
ビジネス活動はPDCAサイクルの中で動いていることが多いのですが、その中でデータサイエンスがよく活用されるのが、P(Plan、計画)とC(Check、評価)です。PDCAサイクルの最初にくるのがP(Plan、計画)で、このP(Plan、計画)の前に来るのが「戦略」です。計画に基づいて実施したことに対し、評価をする必要があります。C(Check、評価)です。別名、「振り返り」です。DS適用プロセス(ビジネスサイド視点)とは、以下の2つです。
- 戦略と計画プロセス
- 振り返りプロセス
それぞれについて説明します。
2. 戦略と計画
戦略や計画の立案時に、データサイエンス技術を使い、様々な情報(インテリジェンス)を提供しサポートします。例えば、仮説生成、機会評価です。どちらも、実施している企業は昔からあります。
(1)仮説生成
仮説生成とは、市場データや顧客データなどから、戦略の方向性や商品の改善案などの仮説を作ることです。新たなデータで評価したり、市場にテスト的に商品などをリリースし評価したりし確かめながら、新たな仮説を生成しつづけます。市場の声と市場の未来をもとに、商品の戦略と方向性、そして商品そのものをデータで常にアップデートし続ける、ということです。ただ、データだけに頼らずに、直感というノイズを組み込み続けることも重要です。要は、感覚とデータの融合です。
多くの場合、探索的データ分析(EDA)と定性的分析を織り交ぜることになります。そのため、機械的に分析するというよりも、頭を酷使しながら試行錯誤しながら分析する、という感じです。
(2)機会評価
ヒト・モノ・カネなどのリソースには限りがあります。そのため、総花的に何かをやるのではなく、優先順位を付ける必要があります。例えば、仮説生成で見出したビジネスチャンス(機会)を、データの視点で評価し、市場規模はどのくらいになりそうで、どのくらいシェアを取れそうで、そのくらいのリソースが必要そうか、などを評価します。評価軸としては、収益軸と容易性軸、受容性軸、競争優位性軸など色々なものが考えられます。未来の話しをするため、需要予測などの予測的データ分析が求められます。
3. 振り返り
PDCAサイクルで表現すると、C(Check、評価)に該当します。計画に基づいて実施したことに対し、評価をする必要があります。別名、振り返りです。振り返りには、予実(計画通りかどうか)と測定評価(異常検知や要因探索など)があります。
(1)予実(計画通りかどうか)
予実(計画通りかどうか)は、予定(計画)と実際を比較し、想定通りに物事が進んでいるかを振り返る、ということです。データ集計で十分なことが多いため、比較的取り組みやすいデータ活用かと思います。よく「見える化」という表現をすることがあります。ただ、このレベルのデータ活用もできていない組織は少なくありません。簡単なBIツールなどを利用し、ダッシュボードを作ることから始めてもいいかもしれません。このとき問題になるのが、何を見える化するのか、ということです。マネジメント層が見るKGIやKPIなどの整理から始め、現場が見るKPIや現場アクションに直結する指標の整理...
昔からあるものとして、バランススコアカードなどがあります。
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(2)測定評価(異常検知や要因探索など)
測定(モニタリングと要因探索)は、単に売上などの指標を集計するわけではなく、もう少し突っ込んだものです。例えば、モニタリングしているKPIなどの異常検知、検知した異常の要因探索、モニタリングしているKPIなどの先行指標探索、実施した広告や販促活動などの効果見積もり、CXのボトルネックファインディングなどです。異常検知モデルや、因果探索モデルなどの数理モデルを活用することが多いようです。
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