インタビュー調査とは?種類や手順、注意点を解説

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インタビュー調査とは?方法や種類、注意点を解説


ドラッカーが企業の目的を「顧客の創造」と定義したように、現代においてビジネスに成功するためには、いかに顧客の行動実態や意識、価値観や考え方を把握し、その心をとらえる製品やサービスを提供するかが極めて重要です。
そのためのツールのひとつとして、定性的なデータの収集手法であるインタビュー調査があります。インタビュー調査とはどのようなものか?方法や種類、注意点などについて解説します。

【目次】

    1. インタビュー調査とは

    インタビュー調査とは、定量調査のデータだけでは読み取れない顧客の生の声やニーズを把握するための定性調査です。事業や製品、サービスの新規開発や改良、マーケティング戦略などの重要な手がかりとして広く活用されています。

     『インタビュー調査、評価グリッド法とは【連載記事紹介】』はこちらから

    (1)インタビュー調査とはどのような調査法?目的は?

    インタビュー調査とは、インタビュアーが対象者(インタビュイー)から話を聞くことで情報を集める調査手法で、定性調査の一種です。対象者の製品・サービス購買や利用などの行動の実態やその際の意識、基となる価値観や考え方を把握するために行います。
    アンケート調査など定量調査では大人数を対象に調査を行い、実態や意識を数値で捉えます。それに対してインタビュー調査では限られた人数を対象に、言葉のコミュニケーションによって実態や意識を掘り下げ、深い理解を得ることを目指します。
    インタビュー調査では言語情報に加えて、対象者の表情やしぐさ、声のトーンなどの非言語情報も観察できます。これによって製品・サービスのターゲット像をより詳細にイメージすることができ、また製品やデザイン図などを実際に見てもらった際の反応を見ることで、ユーザーの製品に対する言葉になりにくい印象を把握することもできます。
    インタビュー調査の実施方法としては、従来の対面インタビューや電話インタビューのほか、近年ではオンラインインタビューも広く行われています。

    ◆関連解説記事:インタビュー調査時のラポール形成とは

     

    (2)インタビュー調査の種類

    インタビュー調査には大きく分けて、1対1で行うデプスインタビューと複数の対象者を集めて行うグループインタビューがあります。

    デプスインタビュー
    対象者個人に1対1で直接質問することで、対象者の実態やその背景にある意識・心理を深く探ります。対象者への質問や対象者の回答に合わせた再質問を、話の流れに合わせて臨機応変に変更しやすいので、聞きたい情報を得やすいインタビュー方法です。実施時間は60~90分程度が一般的です。

    グループインタビュー
    少人数の対象者グループに座談会形式でインタビューを行って意見を集め、製品・サービスのターゲット層の実態や製品・サービスへの反応を探ります。グループインタビューでは、モデレーター(司会者)のコーディネートにより、参加者間の会話・議論の内容を整理しながら進めることが重要となります。実施時間は90~120分程度が一般的です。
     ◆関連解説記事:グループインタビューとは
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    アンケート調査
    インタビュー調査の内容を補完するために、インタビューの前または後に予め用意した項目のアンケート調査を行うことがあります。肯定形式、否定形式、多肢選択式などの形式で質問します。

      デプスインタビュー グループインタビュー
    インタビュー人数 1名 一般的には4~8名程度
    実施目的 対象者の実態や背景にある
    意識・心理を深く探る
    ターゲット層の実態や製品
    ・サービスへの反応を探る
    実施方法 1対1の対話形式 座談会形式
    実施時間 一般的には60~90分程度 一般的には90~120分程度

    【表1】インタビュー調査の種類

    ◆関連解説記事:インタビュー調査、評価グリッド法とは(その1)

    2. インタビュー調査のメリットとは

    インタビュー調査のメリットとは、定量調査のデータからは読み取れないユーザーの生の声を聞けること、およびユーザーが日頃企業に伝えにくい製品・サービスの不満点や改善要望を聞けることです。インタビュー調査を行うことにより、顧客・ユーザー分析の解像度を上げることができます。

    (1)ユーザーの関心やニーズの把握

    インタビュー調査の質問により、対象者である顧客・ユーザーの意識、消費行動、関心、ニーズなどを客観的に把握できます。この情報を製品・サービスの開発やマーケティング・プロモーションなどに活用することで、より対象顧客・ユーザーに合致した企業活動を展開することができます。

    (2)ターゲットの理解とインサイト(購買行動の根拠や動機)の発掘

    インタビュー調査結果の活用により、企業はターゲットの理解を深めることができます。得られた情報を整理してターゲットが持つ価値観・文化を明らかにしたうえで、それらに基づいてユーザーが製品・サービスにどのような期待・感想を持って購買・使用しているかというインサイトを発掘し、事業戦略や製品・サービス開発の方向性に反映していきます。例えば新製品のリリース前にユーザーインタビューを実施すれば、ユーザーの新製品に対する印象や期待などを把握して販売戦略立案に活かすことができます。
    また、得られたターゲットの理解に基づいた質問文の設定見直しにより、次回以降のインタビュー調査をブラッシュアップしていくことも重要です。

    (3)ブランドイメージの向上

    インタビュー調査はブランドイメージの向上にも役立ちます。インタビュー調査結果を分析してインサイトを発掘することでターゲットのニーズや関心を把握し、ユーザーにとって製品・サービスのどこが魅力的でどこが訴求不足かを検討することで、ブランドイメージを高めていくことができます。
    そのためには、インタビュー調査の際にユーザーが真に求めているニーズに関わる意見や体験談を聞き出し、そこで得られたデータを正しく読み取ったうえで、ブランドイメージ向上の最適手段を導き出すことが重要です。

    3. インタビュー調査の種類ごとのメリット

    (1)デプスインタビューのメリット

    1対1でじっくりインタビューを行うため、対象者の実態や思考・感情を深く掘り下げて聞くことができます。また他の参加者の影響を受けないので本音を引き出しやすく、個人的なテーマについても扱いやすいというメリットもあります。

    (2)グループインタビューのメリット

    他の参加者とのコミュニケーションで刺激を受けることで、新しいアイデアや幅広い意見が生まれることが期待できます。この効果を「グループ・ダイナミクス」といいます。また効率的に複数の対象者の情報を収集できるのもメリットです。

    4. インタビュー調査の種類ごとのデメリット

    (1)デプスインタビューのデメリット

    一般的に60~90分程度の時間を1人の対象者に対して使うため、時間・コスト面での効率が良くありません。また対象者の発言や反応に対応して臨機応変な質問をする必要があり、インタビュアーのスキルが高くないと有効な調査結果が得られないのもデメリットです。

    (2)グループインタビューのデメリット

    参加者が他の参加者の発言や態度に影響されることで、結果にバイアスがかかることがあります。また他の参加者の目が気になって本音を話しにくいこともあります。

    5. インタビュー調査の手順とは

    インタビュー調査は、顧客の深い理解を得るための非常に有効な手法です。次に、インタビュー調査の手順を8つのステップに分けて解説します。これらのステップを踏むことで、インタビュー調査を効果的に実施し、顧客の生の声をしっかりと把握することができます。

    (1)目的の明確化

    インタビュー調査を行う目的を明確にします。何を知りたいのか、どのような情報が必要なのかを具体的に定めることが重要です。

    (2)対象者の選定

    調査の目的に基づいて、インタビューを行う対象者を選びます。ターゲットとなる顧客層や特定のニーズを持つ人々を選ぶと良いでしょう。

    (3)インタビューガイドの作成

    インタビューの進行をスムーズにするために、質問リストやテーマを含むインタビューガイドを作成します。オープンエンドの質問を中心にすることで、より自由な回答を引き出せます。

    (4)インタビューの実施

    対象者に対してインタビューを行います。リラックスした雰囲気を作り、相手が自由に話せるように心掛けましょう。録音やメモを取ることも忘れずに。

    (5)データの整理

    インタビュー後、収集したデータを整理します。録音した内容を文字起こししたり、重要なポイントをまとめたりします。

    (6)分析

    整理したデータを分析します。共通するテーマやパターンを見つけ出し、顧客のニーズや感情を深く理解するための洞察を得ます。

    (7)結果の報告

    分析結果を報告書としてまとめます。顧客の声やニーズを具体的に示し、関係者に共有します。

    (8)アクションプランの策定

    調査結果を基に、具体的なアクションプランを策定します。顧客のニーズに応じた改善策や新しいサービスの提案などを考えます。

     

    6. インタビュー調査の活用例

    • ①市場調査・・・消費者のニーズや嗜好を理解するために、ターゲット市場の人々にインタビューを行う。
    • ②製品開発・・・新製品やサービスのアイデアを得るために、潜在的なユーザーからのフィードバックを収集する。
    • ③ユーザー体験の向上・・・既存の製品やサービスに対するユーザーの意見を聞き、改善点を特定する。
    • ④社会問題の研究・・・特定の社会問題に対する人々の意見や経験を深く掘り下げるためにインタビューを実施する。
    • ⑤教育研究・・・学生や教師の視点を通じて教育方法やカリキュラムの効果を評価する。
    • ⑥人材採用・・・候補者のスキルや文化的フィットを評価するために、面接を通じて詳細な情報を得る。
    • ⑦医療研究・・・患者の体験や治療に対する意見を収集し、医療サービスの質を向上させる。
    • ⑧政策評価・・・政策の影響を受ける人々の意見を聞き、政策の効果を評価する。

    これらの活用例は、インタビュー調査が多様な分野で重要な役割を果たすことを示しています。

    ◆関連解説記事:グループインタビューの応用

     

    7. インタビュー調査を行う際の注意点

    インタビュー調査には、事前の準備から終了後の処理までいくつかの注意点があります。その中から、特に重要と思われる4つのポイントを説明します。

    (1)調査目的を具体的にする

    インタビュー調査を実施することを決めたら最初に、インタビュー調査で「何を明らかにするのか」「結果を何にどう活用するのか」という具体的な目的を明確に定め、言語化して関係者間で共有します。これが曖昧なまま調査を進めてしまうと、その後のステップである調査実施形態及び対象者の選定、質問項目や台本となるインタビューフロー(インタビューガイド)の作成などの調査設計の方向性がズレたり、調査後の分析や結果の活用がうまくできないなどの失敗の原因となります。

    (2)調べてすぐわかることを聞かない

    インタビュー調査を実施する前に、対象者や関連分野についてインターネットや書籍などでしっかりと調べておく必要があります。対象者に限られた時間の中で必要な質問をするためにも、また対象者に「こんなことも知らないのか」と不信感を持たれないためにも、事前調査は重要です。「調べてすぐわかることを聞いてしまう」のは、インタビュー調査でいちばんやってはいけないことです。

    (3)聞き手が回答を誘導しない

    インタビュー調査本番では客観性のある調査結果を得るために、インタビュアー・モデレーターが常にフラットな立場を意識し、対象者の回答を誘導しないようにする必要があります。例えば対象者が意見を言った時にインタビュアー・モデレーターが「そうですね」などと相槌を打ってしまうと、そう言ってほしいんだなという印象を与え、その後の会話が誘導されてしまいます。
    また質問する際には詰問調になって対象者を委縮させることがないよう、なるべく柔らかい言い方を考えるのも大切です。

     

    (4)インタビュー調査の前後の会話も記録する

    インタビューはいきなり始めていきなり終わるわけではなく、大抵はその前後に何らかの雑談があります。実はこの雑談も貴重な情報源です。インタビュー前の雑談は自己紹介やお天気、ニュース、会場周辺の様子など、インタビュー後の雑談はインタビュー内容の振り返りや補足質問、インタビュー中に話しきれなかったことなどです。
    特にインタビュー後の雑談はお互いの関係性がそれなりにできているので、率直な感想や要望、思わぬ裏話やこぼれ話などを聞ける可能性があります。忘れないうちにメモしておいて、インタビュー本体の結果とともに分析材料にしましょう。

    8. まとめ

    インタビュー調査とは、インタビュアーが対象者から話を聞くことで情報を集める定性調査です。対象者の製品・サービス購買や利用などの行動の実態やその際の意識、基となる価値観や考え方を把握するために行います。
    インタビュー調査には大きく分けて、1対1で行うデプスインタビューと複数の対象者を集めて行うグループインタビューがあり、それぞれの長短を考慮して目的に応じて使い分けます。インタビュー調査の実施に当たっては、調査目的を具体的に決めて共有すること、対象者や関連分野について事前に調べておくこと、聞き手が回答を誘導しないことなどの注意点があります。

     

     


    この記事の著者

    嶋村 良太

    商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

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