1. 品質保証体質醸成に向けての3つの質問
“ヒューマンエラーの削減” 及び “再発不良の防止” が実現された品質良好な体質を培っていくうえで、次の3つを自らの組織の現場に問うて欲しい。
(1) 方針・目標が働くひとの脳裏とハートに刻まれているか?
「組織の要員が,自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し,品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識していますか?」。これは、ISO9001要求事項に関連して、筆者が最も重要視したく考えている質問であり、いつも、この質問の視点で、現場及び、そこで働くひとの様子を観察する。結果、これが実現されている組織は、必ずしも多くのないのが実態と感じている。
- ①目標の背景となる事情を承知し、目標を理解しているか?
- ②目標値に対する過去/現状の実績値を把握しているか?
- ③目標達成のために、各位が、今すべき事項を認識し、実行しているか?
- ④日々、また1日の時間の中で、いつも意識し、行動しているか?
「あなたの職場では、各位が、方針・目標を理解し、日々行動をしていますか?」
(2) 作業や管理の仕組みが整備されているか?
仕組みの中で、作業の標準化は、最もベースとなるものである。これを推進させようと働きかけると、「各自やり易い方法を決めて、作業するのが好ましい」とのもっともらしい返答が返ってくる。また、整理整頓で、置き方・表示を明確にと推進させようとするも、「自分たちは、この環境で十分状況がわかり、作業ができるのでこのままで問題はない」との応答が返ってくることも多い。この様な属人的な世界では、マネジメントはままならず、組織として品質を保証する体制には、程遠いことは明白である。
「あなたの職場では、作業の標準化や5Sをはじめとした作業や管理の仕組みは、どの程度整備されていますか?」
(3) “隠さない”、“止める”企業文化は培われているか?
たとえ仕組みがあろうと、その通りに運用されないことは通例である。これまで長年にわたり染みついた習性・企業文化が、仕組みに準じた行動を阻害する。特に、“隠す”、“素通りする”の事象は多くの組織で根深い問題である。「現場で発生している不良は、こんな程度の数ではないはずだが、上には、あがって来ない。どうしたら、正直ベースで、問題をあげられるようになるだろうか」「まずは、無理やり最低1件づつはあげさせよう」。
一方、現場側では「問題をあげて、余計な手続きを踏むのは面倒くさい」「つるしあげはごめんこうむる」と声なき声が潜んでいる。また「問題は、たまたま目に入り知っていたが、自分の責任の範疇ではないので、黙っていた」「ここで止めたら、納期に間に合わない。なんとかなると思った」「これは図面規格が厳しすぎる。実際の使用には問題はないはずだ」「前からこれぐらいの傷なら出荷していた」。こんな言葉は、日常茶飯事である。
「あなたの職場では、“隠さない”、“止める”企業文化は、根付いていますか?」
2. トヨタ方式から学ぶ管理・改善を通じて、仕組みづくりと企業文化づくりを
先に挙げた3つの質問に対して、下図を参考にして、これら活動を通じ、徐々に、①方針・目標を浸透させる ②仕組みを整備する ③企業文化をつくる をスパイラルアップさせ成熟させていきたいものである。また、活動の設計...
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