ガラス器具の洗浄と超純水、試料溶液の希釈:金属材料基礎講座(その145)

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  ガラス器具の洗浄と超純水、試料溶液の希釈:金属材料基礎講座(その145)
【目次】

    1. ガラス器具の洗浄と超純水

    ICP-AESに限らず化学分析ではppmやppbレベルの分析を行います。そのため、試料中のわずかな不純物も検出します。そして、これは同時に試料に誤って付着したゴミや汚れも不純物元素として検出されることを表します。これは目に見えるゴミや汚れだけでなく、洗浄などに使用する水の不純物も含まれます。そのため、化学分析に使用するガラス器具、道具、水については注意を払う必要があります。

     

    ガラス器具は基本的に分析専用とし、その他の一般的な作業(酸処理やエッチングなど)では使用しません。初めて使用するときはガラス器具を1~3%程度の硝酸溶液に一晩浸すと、表面に付着していた見えない汚れなどは洗浄できます。また目に見える汚れがある時は硝酸の濃度を10%程度まで高くして洗浄します。そして、使用したガラス器具は中性洗剤で洗浄後は純水や超純水で洗剤や水道水を洗い落とします。水道水には様々な元素が含まれているので、水道水で洗浄したまま放置すると水アカが付着するので注意します。

     

    ICP-AESでは水はガラス器具などの洗浄に限らずブランク試料としても重要です。ガラス器具の洗浄であれば純水でもできますが、ブランクに使用する場合は超純水がよいです。水道水から不純物を除去した水が純水です。蒸留水、イオン交換水、精製水などが純水になります。そして純水をさらに高めたのが超純水です。超純水は化学分析以外にも半導体産業などでも使用されます。

     

    2. 試料溶液の希釈

    ICP用の混合標準液では様々な元素が用意されています。標準溶液では各元素の濃度を1000mg/L、100mg/L、10mg/L、1mg/Lなどの単位で販売されています。測定する試料中の元素の量もmg/L単位に換算します。例としてSCM420を0.5g分析する時の計算をします。なお計算では金属系の元素のみとし、炭素、リン、硫黄は除外します。

     

    用意する標準試料の濃度に対応していれば、試料溶液の希釈には一つだけの答え、何倍希釈でなければならない、というのはありません。仮に標準試料の濃度を0から100mg/Lで用意するときは下表の例では100倍希釈で標準試料の濃度範囲におさまります。しかし、標準試料の濃度を0から20mg/Lで用意するときはMnとCrが範囲を外れてしまうので、この2元素だけ1000倍希釈をする。という作業が発生します。

     

    表.SCM420を分析する時の希釈倍率計算例

    ガラス器具の洗浄と超純水、試料溶液の希釈:金属材料基礎講座(その145)

     

    試料の希釈に正解はありませんが、元素ごとに希釈倍率が異なるとそれだけ作業の手間が増えるので、出来る限り一つ...

     
      ガラス器具の洗浄と超純水、試料溶液の希釈:金属材料基礎講座(その145)
    【目次】

      1. ガラス器具の洗浄と超純水

      ICP-AESに限らず化学分析ではppmやppbレベルの分析を行います。そのため、試料中のわずかな不純物も検出します。そして、これは同時に試料に誤って付着したゴミや汚れも不純物元素として検出されることを表します。これは目に見えるゴミや汚れだけでなく、洗浄などに使用する水の不純物も含まれます。そのため、化学分析に使用するガラス器具、道具、水については注意を払う必要があります。

       

      ガラス器具は基本的に分析専用とし、その他の一般的な作業(酸処理やエッチングなど)では使用しません。初めて使用するときはガラス器具を1~3%程度の硝酸溶液に一晩浸すと、表面に付着していた見えない汚れなどは洗浄できます。また目に見える汚れがある時は硝酸の濃度を10%程度まで高くして洗浄します。そして、使用したガラス器具は中性洗剤で洗浄後は純水や超純水で洗剤や水道水を洗い落とします。水道水には様々な元素が含まれているので、水道水で洗浄したまま放置すると水アカが付着するので注意します。

       

      ICP-AESでは水はガラス器具などの洗浄に限らずブランク試料としても重要です。ガラス器具の洗浄であれば純水でもできますが、ブランクに使用する場合は超純水がよいです。水道水から不純物を除去した水が純水です。蒸留水、イオン交換水、精製水などが純水になります。そして純水をさらに高めたのが超純水です。超純水は化学分析以外にも半導体産業などでも使用されます。

       

      2. 試料溶液の希釈

      ICP用の混合標準液では様々な元素が用意されています。標準溶液では各元素の濃度を1000mg/L、100mg/L、10mg/L、1mg/Lなどの単位で販売されています。測定する試料中の元素の量もmg/L単位に換算します。例としてSCM420を0.5g分析する時の計算をします。なお計算では金属系の元素のみとし、炭素、リン、硫黄は除外します。

       

      用意する標準試料の濃度に対応していれば、試料溶液の希釈には一つだけの答え、何倍希釈でなければならない、というのはありません。仮に標準試料の濃度を0から100mg/Lで用意するときは下表の例では100倍希釈で標準試料の濃度範囲におさまります。しかし、標準試料の濃度を0から20mg/Lで用意するときはMnとCrが範囲を外れてしまうので、この2元素だけ1000倍希釈をする。という作業が発生します。

       

      表.SCM420を分析する時の希釈倍率計算例

      ガラス器具の洗浄と超純水、試料溶液の希釈:金属材料基礎講座(その145)

       

      試料の希釈に正解はありませんが、元素ごとに希釈倍率が異なるとそれだけ作業の手間が増えるので、出来る限り一つの希釈倍率で標準試料の濃度におさまるようにするとよいです。

       

      次回に続きます。

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      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


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