試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

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試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

【目次】

    1. 試料導入部

    ICP-AESではプラズマ中に試料溶液を霧状に噴霧するために、試料導入部はネブライザーとスプレーチャンバーから成り立っています。試料導入部の模式図を下図に示します。

     

    試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

    図.試料導入部の構成

     

    ネブライザーやスプレーチャンバーにもいくつか種類があります。図のタイプは同軸型ネブライザー、サイクロン型スプレーチャンバーとなります。試料溶液は最初にネブライザー(水色)に導入されます。ここでキャリアガス(Arガス)によって霧吹きのように試料溶液を霧状の小さいサイズにして噴射します。

     

    ネブライザーから噴射された霧状の溶液試料はスプレーチャンバー(緑)によって粒の大きな溶液と小さい溶液に分けられます。そして小さな粒の溶液がその次のプラズマトーチに導入されます。

     

    一方、大きな粒の溶液はドレインとして排出されます。この時、噴霧された試料溶液の1~8%がプラズマトーチに導入され、分析されます。チャンバー内では噴霧された小さな溶液がチャンバーの壁などにぶつかり、小さな粒と大きな粒に選別されます。

     

    2. プラズマトーチ

    スプレーチャンバーから出た試料溶液とキャリアガスはプラズマトーチ内に導入されます。プラズマトーチの模式図を下図に示します。

     

    試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

    図.プラズマトーチの構成

     

    プラズマトーチは3重管の構造となり、さらに先端に誘導コイルがあります。中心の管(チューブ)には試料溶液とキャリアガスが導入されます。その外側の管には補助ガス、一番外側の管にはプラズマガスがそれぞれ挿入されます。3重管はいずれも石英製のトーチが使用されます。そしてトーチ先端に高周波が印加されてプラズマが点灯します。

     

    ICPのプラズマの特徴として、ドーナツ状のプラズマが発生して、その中に試料溶液が挿入されます。そこで試料溶液の各元素が励起され発光します。また、プラズマトーチが3重管となっている理由も、プラズマをドーナツ状に維持するためです。一番内側のキャリアガスによってドーナツ形状が形成されます。その外側の補助ガスはプラズマをトーチより高い位置に維持して、トーチの損傷を防ぎます。一番外側のプラズマガスはプラズマを維持するのに十分なアルゴンを供給すること、プラズマ中心部を大気から遮断し空気の混入を防ぐこと、トーチとプラズマの接触を防ぐことなどの役割があります。

     

    プラズマトーチは分析をすると溶液試料の酸成分などによって徐々に汚れや酸化していきます。汚れたトーチは王水洗浄や電気炉(300~400℃)...

    試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

    【目次】

      1. 試料導入部

      ICP-AESではプラズマ中に試料溶液を霧状に噴霧するために、試料導入部はネブライザーとスプレーチャンバーから成り立っています。試料導入部の模式図を下図に示します。

       

      試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

      図.試料導入部の構成

       

      ネブライザーやスプレーチャンバーにもいくつか種類があります。図のタイプは同軸型ネブライザー、サイクロン型スプレーチャンバーとなります。試料溶液は最初にネブライザー(水色)に導入されます。ここでキャリアガス(Arガス)によって霧吹きのように試料溶液を霧状の小さいサイズにして噴射します。

       

      ネブライザーから噴射された霧状の溶液試料はスプレーチャンバー(緑)によって粒の大きな溶液と小さい溶液に分けられます。そして小さな粒の溶液がその次のプラズマトーチに導入されます。

       

      一方、大きな粒の溶液はドレインとして排出されます。この時、噴霧された試料溶液の1~8%がプラズマトーチに導入され、分析されます。チャンバー内では噴霧された小さな溶液がチャンバーの壁などにぶつかり、小さな粒と大きな粒に選別されます。

       

      2. プラズマトーチ

      スプレーチャンバーから出た試料溶液とキャリアガスはプラズマトーチ内に導入されます。プラズマトーチの模式図を下図に示します。

       

      試料導入部とプラズマトーチ:金属材料基礎講座(その146)

      図.プラズマトーチの構成

       

      プラズマトーチは3重管の構造となり、さらに先端に誘導コイルがあります。中心の管(チューブ)には試料溶液とキャリアガスが導入されます。その外側の管には補助ガス、一番外側の管にはプラズマガスがそれぞれ挿入されます。3重管はいずれも石英製のトーチが使用されます。そしてトーチ先端に高周波が印加されてプラズマが点灯します。

       

      ICPのプラズマの特徴として、ドーナツ状のプラズマが発生して、その中に試料溶液が挿入されます。そこで試料溶液の各元素が励起され発光します。また、プラズマトーチが3重管となっている理由も、プラズマをドーナツ状に維持するためです。一番内側のキャリアガスによってドーナツ形状が形成されます。その外側の補助ガスはプラズマをトーチより高い位置に維持して、トーチの損傷を防ぎます。一番外側のプラズマガスはプラズマを維持するのに十分なアルゴンを供給すること、プラズマ中心部を大気から遮断し空気の混入を防ぐこと、トーチとプラズマの接触を防ぐことなどの役割があります。

       

      プラズマトーチは分析をすると溶液試料の酸成分などによって徐々に汚れや酸化していきます。汚れたトーチは王水洗浄や電気炉(300~400℃)などで加熱洗浄することできれいになります。

       

      次回に続きます。

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      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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