初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

投稿日

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

 

◆ 初晶の多い包晶組織の量的計算

包晶状態図の初晶が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模式図ー1を示します。初晶の多いW合金(A-40%B合金)を考えます。はじめに全て液相Lの状態から液相線、固相線に従って初晶αの晶出が起こります。温度T1(包晶温度直上)における初晶αと液相Lの量は、てこの原理によりLはWS、初晶αはVW、分母はVSとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 

温度T2では包晶反応が起こります。包晶線のL、α、βそれぞれの位置より、L:TS/α:VTの時に100%βになります。図1の状態図では式(3)よりL:α=2:1の割合でβ相が晶出します。W合金の場合、Lに対してαが多いので、Lに対応するαだけが包晶βになり、残りのαは残ります。包晶βに使われるαの量(α2)は式(4)、(5)のように計算できます。そして残りのα(α1’)、包晶β(β2)は式(6)、(7)のようになります。

 

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

図1.包晶反応状態図の模式図ー1

 

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

図2.包晶反応状態図の模式図ー2

 

温度T3ではα、βどちらも溶解度線の減少に伴いαからはβ、βからはαの析出が起こります。βからαの析出ではTを起点としたてこの原理となります。分子はXT、分母はXU、これにβの量をかけて析出αを計算します。αからβの析出ではSを起点としたてこの原理となります。分子はSU、分母はXU、これにαの量をかけて析出βを計算します。これらの計算式を式(8)~(11)に示し、図2に包晶反応状態図の模式図ー2を示します。ます。αの総量は初晶α(α1’’)と析出α(α3)、βの総量は包晶β(β2’)と析出β(β3)です。これらの計算を式(12)、(13)に示します。検算として、T3におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(14)~(17)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

...

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

 

◆ 初晶の多い包晶組織の量的計算

包晶状態図の初晶が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模式図ー1を示します。初晶の多いW合金(A-40%B合金)を考えます。はじめに全て液相Lの状態から液相線、固相線に従って初晶αの晶出が起こります。温度T1(包晶温度直上)における初晶αと液相Lの量は、てこの原理によりLはWS、初晶αはVW、分母はVSとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 

温度T2では包晶反応が起こります。包晶線のL、α、βそれぞれの位置より、L:TS/α:VTの時に100%βになります。図1の状態図では式(3)よりL:α=2:1の割合でβ相が晶出します。W合金の場合、Lに対してαが多いので、Lに対応するαだけが包晶βになり、残りのαは残ります。包晶βに使われるαの量(α2)は式(4)、(5)のように計算できます。そして残りのα(α1’)、包晶β(β2)は式(6)、(7)のようになります。

 

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

図1.包晶反応状態図の模式図ー1

 

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

図2.包晶反応状態図の模式図ー2

 

温度T3ではα、βどちらも溶解度線の減少に伴いαからはβ、βからはαの析出が起こります。βからαの析出ではTを起点としたてこの原理となります。分子はXT、分母はXU、これにβの量をかけて析出αを計算します。αからβの析出ではSを起点としたてこの原理となります。分子はSU、分母はXU、これにαの量をかけて析出βを計算します。これらの計算式を式(8)~(11)に示し、図2に包晶反応状態図の模式図ー2を示します。ます。αの総量は初晶α(α1’’)と析出α(α3)、βの総量は包晶β(β2’)と析出β(β3)です。これらの計算を式(12)、(13)に示します。検算として、T3におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(14)~(17)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

初晶の多い包晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その170) わかりやすく解説

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

 

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
インヒビターとは:金属材料基礎講座(その84)

  ◆ インヒビターの用途と種類 水溶液などに添加して腐食を防止する効果を発揮する物質を腐食抑制剤、インヒビター、防錆(ぼうせい)剤などと呼...

  ◆ インヒビターの用途と種類 水溶液などに添加して腐食を防止する効果を発揮する物質を腐食抑制剤、インヒビター、防錆(ぼうせい)剤などと呼...


液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

  ◆ 液相のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...

  ◆ 液相のある偏晶組織の量的計算 偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模...


鋳造の分類 金属材料基礎講座(その26)

◆ 鋳造の分類  金属を溶解して型に流し込みこれを凝固させて製品を得る工法を鋳造と言います。そしてこの時出来た製品を鋳物と言います。鋳造の最も単純なモデ...

◆ 鋳造の分類  金属を溶解して型に流し込みこれを凝固させて製品を得る工法を鋳造と言います。そしてこの時出来た製品を鋳物と言います。鋳造の最も単純なモデ...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...