初晶のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その173) わかりやすく解説

 

◆ 初晶のある偏晶組織の量的計算

偏晶状態図の初晶が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。偏晶組成はW合金(A-16%B合金)です。はじめに全て液相L1の状態から液相線、固相線に従って初晶αの晶出が起こります。温度T1(偏晶温度直上)における初晶α(α1)と液相L1の量は、てこの原理によりL1はWS、初晶αはTW、分母はTSとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 

温度T2ではL1から偏晶αとL2の偏晶反応が起きます。偏晶反応における偏晶α(α2)とL2の量は、てこの原理により偏晶αはXT、L2はTS、分母はXSとなります。これにL1の量をそれぞれかけて計算します。これらを計算すると式(3)、(4)のようになります。

 

偏晶反応の後は溶解度の減少もないので、そのまま温度が低下します。そして温度T3になるとL2から共晶αと共晶βの共晶反応が起こります。てこの原理により共晶α(α3)はVX、共晶β(β3)はXS、分母はVSとなります。ここにL2の量をかけることで共晶α、共晶βが求められます。これらの計算式を式(5)、(6)に示します。

 

温度がT3からT4に低下すると溶解度の減少に伴う析出が起こります。αからβの析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSA、分母はBA、これにαの量をかけて析出βを計算します。βからαの析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はBV、分母はBA、これにβの量をかけて析出αを計算します。αは初晶α(α1)と偏晶α(α2)と共晶α(α3)からそれぞれβの析出が起こります。βは共晶β(β3)からαの析出が起こります。これらを計算すると式(7)~(14)のようになります。

 

 

αの総量は初晶α(α1’)と偏晶α(α2’)と共晶α(α3’)と共晶βからの析出α(α6)です。βの総量は共晶β(β3’)と初晶αからの析出β(β4)と偏晶αからの析出β(β5)と共晶αからの析出β(β6)です。これらの計算を式(15)、(16)に示します。検算として、温度T4におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(17)~(20)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

次回に続きます。

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