液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

投稿日

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

 

◆ 液相のある偏晶組織の量的計算

偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。偏晶組成はW合金(A-50%B合金)です。はじめに全て液相Lの状態からL1+L2の領域になるため、一つの液相Lから2つの液相L1とL2に分離します。温度T1(偏晶温度直上)における液相L1とL2の量は、てこの原理によりL1はXW、L2はWT、分母はXTとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 

温度T2ではL1から偏晶αとL2の偏晶反応が起きます。偏晶反応における偏晶α(α1)とL2(L2’)の量は、てこの原理により偏晶αはXT、L2はTS、分母はXSとなります。これにL1の量をそれぞれかけて計算します。これらを計算すると式(3)、(4)のようになります。そして、L2の総量(L2t)は式(2)の量と偏晶反応(4)の合計となります。これを式(5)に示します。

 

偏晶反応の後は溶解度の減少もないので、そのまま温度が低下します。そして温度T3になるとL2から共晶αと共晶βの共晶反応が起こります。てこの原理により共晶α(α2)はVX、共晶β(β2)はXS、分母はVSとなります。ここにL2tの量をかけることで共晶α、共晶βが求められます。これらの計算式を式(6)、(7)に示します。

 

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

図1.偏晶反応状態図の模式図-1と式

 

温度がT3からT4に低下すると溶解度の減少に伴う析出が起こります。αからβの析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSA、分母はBA、これにαの量をかけて析出βを計算します。βからα析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はBV、分母はBA、これにβの量をかけて析出αを計算します。αは偏晶α(α1)と共晶α(α2)からそれぞれβの析出が起こります。βは共晶β(β2)からαの析出が起こります。これらを計算すると式(8)~(13)のようになります。

 

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

図2.偏晶反応状態図の模式図-2と式

 

αの総量は偏晶α(α1’)と共晶α(α2’)と共晶βからの析出α(α4)です。βの総量は共晶β(β2’)と偏晶αからの析出β(β3)と共晶αからの析出β(β4)です。これらの計算を式(14)、(15)に示します。検算として、温度T4におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(16)~(19)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

...

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

 

◆ 液相のある偏晶組織の量的計算

偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。偏晶組成はW合金(A-50%B合金)です。はじめに全て液相Lの状態からL1+L2の領域になるため、一つの液相Lから2つの液相L1とL2に分離します。温度T1(偏晶温度直上)における液相L1とL2の量は、てこの原理によりL1はXW、L2はWT、分母はXTとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 

温度T2ではL1から偏晶αとL2の偏晶反応が起きます。偏晶反応における偏晶α(α1)とL2(L2’)の量は、てこの原理により偏晶αはXT、L2はTS、分母はXSとなります。これにL1の量をそれぞれかけて計算します。これらを計算すると式(3)、(4)のようになります。そして、L2の総量(L2t)は式(2)の量と偏晶反応(4)の合計となります。これを式(5)に示します。

 

偏晶反応の後は溶解度の減少もないので、そのまま温度が低下します。そして温度T3になるとL2から共晶αと共晶βの共晶反応が起こります。てこの原理により共晶α(α2)はVX、共晶β(β2)はXS、分母はVSとなります。ここにL2tの量をかけることで共晶α、共晶βが求められます。これらの計算式を式(6)、(7)に示します。

 

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

図1.偏晶反応状態図の模式図-1と式

 

温度がT3からT4に低下すると溶解度の減少に伴う析出が起こります。αからβの析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSA、分母はBA、これにαの量をかけて析出βを計算します。βからα析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はBV、分母はBA、これにβの量をかけて析出αを計算します。αは偏晶α(α1)と共晶α(α2)からそれぞれβの析出が起こります。βは共晶β(β2)からαの析出が起こります。これらを計算すると式(8)~(13)のようになります。

 

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

図2.偏晶反応状態図の模式図-2と式

 

αの総量は偏晶α(α1’)と共晶α(α2’)と共晶βからの析出α(α4)です。βの総量は共晶β(β2’)と偏晶αからの析出β(β3)と共晶αからの析出β(β4)です。これらの計算を式(14)、(15)に示します。検算として、温度T4におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(16)~(19)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

液相のある偏晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その174) わかりやすく解説

次回に続きます。

関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
三元系状態図と二元系状態図の表示:金属材料基礎講座(その179) 

◆ 三元系状態図と二元系状態図の表示 三元状態図の表示には色々なタイプがありますが、三角形の辺に二元系状態図を表示するタイプもあります。この状態図の...

◆ 三元系状態図と二元系状態図の表示 三元状態図の表示には色々なタイプがありますが、三角形の辺に二元系状態図を表示するタイプもあります。この状態図の...


転位とすべり運動 金属材料基礎講座(その6)

  ◆ 転位とすべり運動 金属材料の塑性変形はすべり面上をその上の金属原子面がすべり方向に動くことによって起こります。 しかし、現実的にあ...

  ◆ 転位とすべり運動 金属材料の塑性変形はすべり面上をその上の金属原子面がすべり方向に動くことによって起こります。 しかし、現実的にあ...


圧延とは

  厚みを薄くする圧延ですが、圧延材に発生する欠陥などを中心に、今回は圧延の概要を解説します。   1.  冷間圧...

  厚みを薄くする圧延ですが、圧延材に発生する欠陥などを中心に、今回は圧延の概要を解説します。   1.  冷間圧...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...


金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...