クリーン化について(その148)クリーン化の基礎(その10)

【目次】

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    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

     

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。クリーン化について(その147)クリーン化の基礎(その9の続きです。

     

    2. 目標があること

    ◆ 活動目標を明確にし、意思統一と情報を共有する

    活動には多くの人が関わります。また、直接関わらない人であっても、関係部署の方は、その内容を知っておくことが重要です。活動の状況によっては、支援もできます。「何でも良いから、とにかく現場を奇麗にしなさい」 では動きようがありません。ところがまれに、そのようなケースにも遭遇したことがあります。これが経営者や管理職からの指示でしたから、少々がっかりしました。具体的にとか、明確な内容でないものは目標にはならないですね。それを受けて行動する立場になって明確な目標にしないいと意思統一はできません。結局何もできない、しないのです。活動するには目標が必要...

    です。つまり、『何に向かってやるのか』を明確にすることです。それによって社員、従業員のベクトルも合い、成果も出やすくなります。

     

    【目標】

    例えば歩留まり向上や不良率減少、浮遊塵減少、落下塵減少、返品率の低減、返品数減少など具体的な目標を設定しましょう。

     

    【浮遊塵と落下塵について】

    浮遊塵とはクリーンルーム内に浮遊している微粒子(パーティクル)のことです。

    現場をパーティクルカウンターで測定し、継続的に推移を確認します。これまでのデータと比較できるよう、測定場所、高さ、測定周期などきちんと決めて実施します。現場の重要な管理項目であるため、客先監査(Audit)があるところでは、客先からデータの提示を要求されることがあります。経験された方もあるでしょう。パーティクルは広範囲に浮遊するため、その現場全体の清浄度が低下し、広範囲の製品品質に影響します。

     

    一方、落下塵は浮遊せず落下する微粒子のことです。こちらは、予め決めておいた場所でサンプルを捕集します。このサンプル捕集場所によってデータに差が出る場合があります。数値が大きい場合は、その付近に発生源があるだろうと考えられます。浮遊塵と落下塵は異なるものと考えられるが、境界の線引きはしにくい。

     

    環境改善としては、攻める方法が違います。半導体製造や水晶、表示体など高い清浄度管理が必要な分野では、浮遊塵と落下塵の2つの物差しで現場の環境を管理しているところが多いですね。落下塵の把握方法は様々ある。

     

    半導体製造の前工程では、綺麗なウエハーを24時間放置する方法(定点観測)を採用しているのが一般的です。そのウエハーを回収し、専用の測定機で、微粒子数や大きさの測定、分析をする。ウエハーの管理や費用が発生するので、後工程や清浄度があまり高くない現場では、ウエハーに代わるもの、例えばクリーンマット(粘着マット)などを活用するなど、様々な工夫をし、評価している企業があります。目標設定は優先順位をつけ、改善効果の大きいものから取り組み、成果も見えるようにします。

     

    【フィードバックの効果】

    クリーン化活動で得られた効果や成果は、現場にきちんとフィードバックすることが重要です。

    これは、それまでの活動のまとめ、お礼と感謝、次の目標へのスムーズな橋渡しの他、褒めることで士気を高め、継続させる機会でもあります。単にトップダウンの場ではないのです。成果を管理職だけで共有し、活動した現場や作業者にはフィードバックしていないと言う例もあります。そして次の目標を提示してしまった場合、現場側にしてみると、今年の目標、半期の目標、四半期ごとの目標と次から次へと降ってくるわけです。「今までやってきたことはどうなったの?成果があったの?」 という疑問が出てきます。そして士気が低下してしまうのです。

     

    「皆さんの活動の成果がこのように出ました。ありがとうございます。ついては次の目標はこのようにします」 とお願いすれば、成果を納得して、次のテーマにも快く取り組んでくれるでしょう。つまり、褒めることと同じです。そして感謝の気持ちを表すことです。そうすることで、次の目標に向かってベクトルも合ってきます。「そうか、今までやってきたことは良かったんだ」 などと思い、納得するでしょう。小さなこと、ちょっとしたことですが、情報共有が重要です。経営者や管理監督者は社員、部下に指示、命令することは得意ですが、褒めること、頭を下げることは苦手です。この小さなことの積み重ねが、相互の意思疎通の一歩だと考えます。会社と社員の血の通った・・・という表現がありますが、案外こんなことを指しているのかも知れません。

     

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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